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銀の月  作者: 紅花翁草


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月乃宮 なお 2

 木の香りが心地よい湯船に、私はゆっくりと浸かっていた。


 目を閉じて、手を伸ばして深呼吸。体が疲れていたのがわかる。色んな事が頭に浮かんできた。

(もう、なにがなんだか…異世界…精獣…大きな蜘蛛…魔法…竜…おとぎ話の世界だよ。)

 私はふと、私の世界で広まっていたカードゲームの世界観が浮かんできた。

 よくある世界観だからカードゲームを思い出さなくてもいいのに、私がカードゲームをしているから? 昨日、お祖母ちゃんからカードをもらったから?

(そうだ。カードをおじさんに見せてみよう。)

 湯船から起き上がった私は、おばさんが用意してくれた柔らかいタオルで体を拭いて、あたらしい服に着替えて、おじさんたちがいる部屋へと向かった。


 私が部屋に入ると、楽しそうに話しているおじさんたちがいた。

 おばさんが私に気付いて席を立つ。


「さあ、お腹空いたでしょ。お昼ごはんできてるからみんなで食べましょう。」

 台所から出来上がった食事を運び始めたのを見て、私はテーブルに着いて気になった事を聞いた。

「クッキー食べたい…」

 私はまたみんなに笑われるのが判っていたけど、それ以上に今食べたいって気持ちが抑えられなかった。

「はい。ご飯前だけど、特別ね」

 おばさんが食事を配り終えて、最後に私のところにクッキーを持ってきてくれた。

「おいしい~」

 香ばしく、サクサクとしてまだ暖かいクッキーを私はあっという間に食べてしまった。

(あっ、さきに食べちゃった…)

「ちょっとまってて」

 空になった小皿を私は台所にすばやく片付けてテーブルに戻ってきて何事もなかったように席についた。


「お待たせ」

 私はそういって3人の顔をみた。やっぱり笑っていた。

 おじさんが食事前のお祈りを始めたので私も見よう見まねで合わしてみた。

「それではいただきましょう」

 おじさんの言葉でわたしは顔を上げて目の前にある料理を食べ始める。

 おばさんの料理はどれも美味しくて、どこかお祖母ちゃんの料理にも似てて…


(あっ…モカ!)

 忘れてた訳ではないけど、忘れてました…空腹に負けました…

 私は食事を止めて、おじさんに尋ねた。

「モカは?」

 ここに居なかったからまだ寝てると思うけど、おじさんが糸を取ってくれたとおもうけど、やっぱり心配になった。


 手を止めたおじさんは優しい笑顔で、

「大丈夫、糸もきれいに取れたよ。今はまだ寝てるけど傷もなかったし、心配ないからね。」

「そっか、よかった」

 早くモカに会いたくて、私は料理を慌ただしく食べた。

「ごちそうさま! モカ見てくるね。」

 おじさんたちに声をかけて私は食器を台所にささっと片付けてモカを見にいった。


 小さな木のバケットに毛布に包まれたモカが寝息をたてながら寝ていた。

(よかった。元気そうで。)

 私はさっきの声を思い出した。

(災いを持つものって…)


 私がモカを見つめていると、ミリアさんが部屋にはいってきた。

「さっきはほんとにありがとう。 私は何も出来なくて、おじさんも、モカも助けられなくて…」

 伝えてたい事がまとまらず、私は戸惑っていた。


「あなたの声が聞こえたから私は間に合ったのよ。だからちゃんと出来てたよ。」

 私は、ちょっと熱くなった胸を押さえながら彼女の目を見つめていた。

 彼女はモカを見ながら

「ねぇ、あなたって別の世界から来たの? おじ様がいってたから」

「はい、そうです。自分でも信じられないけど…」

 モカの柔らかい毛をなでながら私はそう答えた。

(あっ! 動いた。)

 モカが少し動いたと思ったら、目をパチっと開けて私を見た。

「なお~大丈夫?・・・僕たち助かったの?」

 隣にいるミリアさんを見つけてモカは起き上がった。

 モカを抱き上げて

「うん、彼女が助けてくれたの。」

 すこし寄りかかるような感じでモカは私の腕の中にいた。

「なお~、お腹すいたよ~」

 モカの言葉を聞いて、私達は顔を見合ったまま笑っていた。

 モカが彼女にお礼を言ったのを聞いて、私はモカを部屋から連れ出した。ミリアさんも一緒に。

「おばさん~クッキーまだある~?」

 私は台所で食事の片付けをしているおばさんに声をかけた。

「あらっ、まだ食べたいの? 今持ってくから待っててね。」

 まだ私が食べるのかと勘違いしているおばさんが台所からクッキーとお茶をもってきて、私の膝の上に座っているモカを見つけておばさんは、なぁんだって顔をしてモカに話しかけてた。

「お茶、熱いけど飲める?」

 モカはおばさんに軽く挨拶して

「はい、大丈夫だとおもいます。」

 クッキーをさっそくクチバシではさんで上手に食べていた。

「なお、これ、おいしいよ~」


 嬉しそうに食べているモカを見ながら私はおじさんとおばさん、ミリアさんに思っていることを話始める。

「おじさんとおばさんは私のお祖母ちゃんを知ってるんだよね? お祖母ちゃんってこっちの世界の人なの?」

 二人は「そうだよ。」って、言って頷いていた。

「じゃあ…お祖母ちゃんはどうして私一人だけこっちに送ったんだろ? なにか聞いてる?」

(朝は訳が判らないまま食事して、言われるままに散歩してたんだよね…)

「あぁ…」 おじさんが私を見つめながら会話を続けた。

「私達に、ちょっと孫が悩んでるから気分転換に旅行させるので、そっちで面倒みてくれって頼まれただけだよ。10日くらいしたら迎えに来るからって。」


(えっ? それだけ? まあ…悩んでたけど…おばあちゃん……)


 私はぼやくように喋った。

「気分転換って…こんな世界にいきなりきたら、転換しまくりの頭の中回りまくりだっての~」

 どっと疲れが出た私にミリアが訊ねてきた。

「あなたのお祖母さんって、どんな人なの? 異界の移動が出来るほどの人ってそうそう居ないはずだけど。」


 私はミリアの疑問に答えた。


「お祖母ちゃんはごく普通の、礼儀と躾にうるさいけど、やさしい人よ。そうですね、人と違うのって髪の色ぐらいよ。でも、イギリス生まれって言ってたから、…嘘だったのね。」

「ねぇ、どんな色してるの?」

 ミリアがなぜそんなこと聞くのか判らなかったけど、私はきれいな銀髪だと答えた。

 ミリアはおじさんとおばさんを見て、なにか考えていた。


(モカも異界に行く魔術が使える人は少ないっていってた…よね。お祖母ちゃんって…)


「あっ、そういえばおじさんもおばさんも銀髪だよね。だからお祖母ちゃんの知り合いって聞いて納得したんだよね。ん? もしかしておじさんたちって親戚になるの?」

 おばさんが私を見て、そうよ。って答えて

「私のお祖父さんと、あなたのお祖母様のお父さんが、兄弟だったの。だから、私の父とあなたのお祖母様がいとこになるのよ。

(ん~よくわからない…)


「じゃあ私はここでのんびりと、お祖母ちゃんまってればいいのかな。」

(迎えにきてくれるし…10日か~)

 安心感とちょっと残念な気分になっている私に今度はおじさんが答えてくれた。

「それなんだけど、なおちゃん。ちょっと行って来てほしいところがあるんだよ。」

 どこか悲しげな表情で続けた。

「行かなければならなくなったって言った方がいいかな。」

 おじさんは私の膝でクッキーを食べながらお茶を飲んでいるモカを見つめていた。

 おばさんもミリアさんもモカを見つめていた。

(そうだった。モカが襲われたんだった。私のことはもういいけど…モカが。)


 私はおじさん達に聞いてみた。

「モカ…また襲われるよね? 私じゃ守れないし、帰っちゃうし…どうしたらいい? 私になにかできる?」

 モカが自分のことの話になったのでクッキーを食べるのをやめて私の方を見ている。


 隣に座っているミリアが私とモカを見ながら聞いてきた。

「ねえ、その子って精獣だよね? おじ様からいろいろ聞いてたんだけど、あなたはその子と契約したの?」

 私はモカと出合ったときの事をみんなに話した。

「ううん。違うの。契約とかじゃなくて、友達として呼び合う名前がほしくて、私が勝手につけたの。モカもそれならいいって言ってたから。」

 モカが私の言葉に付け足すように聞いてきた。

「なお~。僕の名前、なんでモカってつけたの?」

「えっ?」

(泉に落ちたとき水が濁ってコーヒーみたいになったから…って言えないしな~)


 私はちょっと引き攣った笑顔を元に戻して、

「意味はないのよ。可愛い名前をつけてみたの。かわいいでしょ?」

 みんなに同意を求めるように私は答えた。

 ミリアさんは珍しそうに私達を見ながら、さらに聞いてきた。

「この世界の人じゃないあなたらしいわね。精獣ってのは、特別な存在で滅多なことがないかぎり、人と関わらないのよ。友達にしようなんて考えないし、それに、出来ないしね。…そうでしょ。モカちゃん。」

 面白いものでも見てるような目でモカに話しかけた。

「はい。出来ないです。」

 モカは謝るような声で言葉を続けた。

「でも、僕を僕として見てくれたから、友達っていってくれたのが嬉しくて…」

 私は萎縮しているモカをそっと抱き上げて誰となく聞いて見た。

「出来ないってなんで? 精獣だから? 人じゃないから?  物みたいに接するのが当たり前なの?」

 私はだんだん声が大きくなっていった。

「契約、契約って、モカはそのためだけに存在するの?」

 私はやり場のない感情で言葉と体に力が入っていた。

「ごめんなさい。」

 私は何も判っていないのに、自分勝手に怒ってしまってた過ちに反省して、少し深呼吸してミリアさんに頭を下げる。

「あなたの竜も契約とかなの? あなたの言葉は道具扱いには見えなかったけど…」

「私のほうこそ、ごめんなさいね、悪気はなかったのよ。」

 ミリアさんが謝りながら話を続けてくれた。

「そうね…私は火の神を守る一族で、神官になると神の使いとされる竜を従えて竜騎士って言うのになれるの。まわりからみればこれも契約のひとつといってもいいのかもね。でも私もあなたと同じ。」

 窓から見える竜を見ながらミリアは言葉を続けた。

「あの子は私の家族よ。とても大切な。だから、私はあなたがその子を友達として接しているのが嬉しくてね。その子もあなたの事を大切な友達と思っている事もね。」


「そうだったの…ごめんなさい。」 私はミリアさんにもう一度謝った。


「精獣ってね、竜とかと違って、数も少ないし、人が精獣と契約するって言うより精獣が人を選んで契約するって方が正しいかな……そうね、私から言わないほうがいいかな。」

 そう言ってミリアさんはモカを見つめていた。

 何かの合図だったのか、モカは私の腕の中から離れて、テーブル真ん中から私を見てきた。

「なお~。」

 寂しい声でモカは喋り始めた。

「僕達の契約って言うのは、詳しくいうと、契約した人間が生きてる間ずっと側にいて、色んな力を与えて、魔力を上げたり、肉体的に強靭にしたり、幸運を与えたりとか、それぞれ違うんだけど…

で、見返りに命が尽きた時、魂を貰うのです。その魂を取り込んだときに僕達は、聖獣になる事が出来るのです。より強い魂ほど、聖獣になったときの力が増すから、魂の力が強い人間…精神力の強い人間に僕達は姿を見せて契約するのです…」


 私はちょっと驚いたけど、それと友達になれないって意味がまだよくわからなかった。

「ふ~ん。でもそれって、友達になれないってのと関係あるの? モカが誰かと契約したら、もう会えないのは判ったけど…」


 手を伸ばしてモカの頭をやさしく撫でたおじさんが口を開く。

「それは私から説明しようかね。」 撫でた手を収めて話始めた。


「モカが言ったように精獣が契約したい人間に姿を見せて契約をする。そして人間は力の代償に命を差し出す。これがこの世界の常識って事は分かるよね?」

 私は素直にうなずいた。

「だから、この世界の人間は精獣をひとつの神として、また悪魔として、拝め恐れる存在なんだ。そうやって教えられた者たちが実際に精獣と対峙したとき、どんな態度をとるか…わかるかね?」


 私は想像してみた。神とか悪魔が私の前に現れたら…


「この感情がまず、人間側からみて、友達になれない理由になるね。」

 おじさんは私に微笑みながら会話を続けた。

「そして、精獣は契約したい人間の前にしか、姿を現さない。これは今までの歴史上絶対だった事なんだよ。契約するために人間と関わる。これが精獣側からの友達に出来ないって理由。」

 モカが黙っている。そのモカの頭をおじさんがまた撫でて、

「だけどね。この子は何らかの理由で、なおに見つかった。そしてなおはこの世界の常識に縛られなかったから、この子を普通に扱った。それが嬉しかったんだろうね。この子はまだ契約者を選べるほど育ってないみたいだし…」

 モカがうん、と頷いたのをおじさんは確認して話を続けた。

「精神力のない人間には見ることも、触れることもできないんだよ。」

「えっ…」 

 私ははおじさんに聞き返す。


「たとえモカがあの場所にいたとしても、なおに力がなかったら見えなかったって事だよ。」

(私の力…)


「さて、ここからが本題だよ。」

 おじさんは手を戻して厳しい顔つきになってテーブルについている私達を見渡した。

「結論から言うと。なおとこの子は契約が発生している。っといっていいだろうね。」


 私はびっくりしてモカを見たら、モカもびっくりしていた。二人でおじさんの顔を見る。

「えっ…名前っていっても呼び名ってことだったし…」 

 私が慌てながら喋る。

「僕も契約するとかじゃなくて…友達っていってくれたし…」 

 モカは不安そうな声でおじさんを見ている。


 おじさんは私とモカを見つめてさらに続けた。

「発生であって,まだ成立はしていないって事だよ。この子はまだ契約できるまで育ってないから契約の魔法陣が作れない。予約をしていると言った方が分かりやすいかな。」

 モカも私も言葉なく、おじさんの話を聞いていた。


「普通は精獣の方から契約を進めるものなのだが、未熟な精獣にはその権利みたいなものがないみたいだね。だから、なおが名前をつけて、この子が承諾した時点で、なおが契約の儀式をしたことになる。だけど、この子には契約の力がまだないので実際には、魂の癒合も獣力の結合も起きない。…ではいつ成立するのか。」

 おじさんは一呼吸置いてテーブルにあったお茶を飲んだ。そしてモカに目線をやると

「この子が成熟し、魔方陣をだした時、強制的に契約が成立すると思う。なおがその場に居なくてもね。」


 私は、事の大きさと過ち、モカの未来、人生を決めてしまったこと。色々な思いで何を考えればいいのか判らなくなっていた。

 モカを両手でやさしく持ち上げて、私は小さな声でモカに謝った。

「…どうしよう~」


 モカを膝の上に戻して私はみんなに聞こうと顔を上げた。

「ねぇ、おじ様。それって魔方陣を出さなければずっと保留ってことになるのよね?」

 ミリアさんが悩んでいた私の答えを見つけてくれた。

「あ、そうだよね。そうでしょ、おじさん。」 

 おじさんに詰め寄るかのように私は訊いた。

「ああ、そうだね。なおとの契約はそれで回避できるだろうけど、そうすると、この子はずっと聖獣になれないのだよ。」

(そうだった。…モカは、私以外と契約できないんだった。)

 膝の上にいたモカが私の方にくるっと向いた。

「僕は、大丈夫です。聖獣になるのがずっと先になるだけだから、なおとさよならするまでこのまま一緒にいたいです。」

「さよなら? そっか私はこの世界から消えるわけだから、無効ってことになるのか」

 私はこっちの世界をたくさん見てみたかったけれど、すぐに迎えが来るのを思いだして少し寂しくなった。

「なおちゃん。それはちょっと違うかな。 その子はもう納得したみたいだけど。」

 おじさんはモカに優しく語りかける。

「その子は私達と違って寿命っていうのがまだ無いのだよ。聖獣になって初めて寿命が出来るのだけど、それでも500年とか生きるからね。だから、その子が言っている、さよならは、なおが大人になっておばあちゃんになって体から魂が放れた時のことを言っているんだよ。どこに居ようと契約は切れないだろうね。」

(わたしが死ぬまでモカはこのまま…)

 モカはもう迷いがないのか私に笑顔を見せていたが、私はまだ前を向くことが出来なかった。

「モカ…いいの?」

「うん。 その代わり、僕をなおの世界に連れてってよ。」

 モカが嬉しそうに私にせがむ姿で私はやっと前に向くことが出来た。

「もちろん!お祖母ちゃんに頼んで一緒に行こうね。」

 私に笑顔が戻ったので、おばさんは台所に戻ってクッキーとお茶のおかわりを持って来てくれた。


「おじ様・おば様。私は用事の途中だったので先に失礼しますね。さっきの魔族の事も伝えときます。」

 ミリアさんが席を立って笑顔で私とモカを見た。

「じゃ後でまた会いましょう。モカちゃんもまた会おうね。」

 私は急いで席を立ち、ドアから出て行こうとするミリアさんを呼び止めた。

「えっと、ミリアさん、色々ありがとう。私達の事なのに心配してもらって。」

「いいの。気にしないで、あなたのこと気に入ったから、もしよかったら私の事ミリアって呼んでね。

じゃ、またね。」


 ミリアさんは扉を開けると同時に胸の辺りから光があふれて、出合ったときの鎧姿にもどっていた。

 私も後を追って、家の外に出るとミリアさんは竜の背中に跨るところだった。

「私の事もなおって呼んでね~。今度その子に乗せてください~」

 ミリアさんが竜の背から手を上げて、

「なお。その約束は難しいかも。今度挑戦させてあげるね~。」

 翼の羽ばたきと共に飛びだった竜に手を振りながら私はふと思い出した。

(あれ? 私が行かなければならないって場所の話ってどうなったんだろう?)


 家の中に戻った私は、モカとテーブルに座って暖かいお茶とクッキーに手を出した。

「おじさん、私どこいくの?」

 もう、モカとの問題はとりあえず解決した安堵感もあって、私とモカはクッキーを食べながら訊いていた。

「月の王宮。ルミナ様に手紙を渡して欲しいのだよ。モカと一緒に。」

 私とモカは『ルミナ様』っていう単語を聞いて顔を見合わした。

(王様に会うの? ・・・手紙?)

「私が直接渡すの?」

「手紙には二人の事を書いておいたから、直接会って話を聴くといいだろう。」

 ちょっと不安になったけど、私はモカと一緒に出かけることが嬉しくて、はい。と返事をした。

(モカもルミナ様って人の事知ってたし、大丈夫だね。)

 モカも嬉しそうにクッキーを食べていた。


 王宮のある町は、ここから4時間くらい歩いた場所のオルトリアスって言う町にあるらしく、賑やかで活気に溢れているらしい。

 私は太陽がすでに落ちて暗くなった外を寝室の窓からモカと二人で見ていた。モカは頭に乗っている。

 月明かりに照らされた水面がきらきらと輝いていた。

 夜なのに結構明るいのが気になって私は月を探してみた。

(満月なのかな? …うわ!)

「月、まぶしすぎ~」

 円に近い形の月は野球場の照明みたいに白く光っている。

「こっちの月って明るいのね。」

「なおの世界の月は光ってないのです?」


 私とモカはそれぞれの月の話をした。

 モカの話によると月の光も魔力の源になっていて、そして月の王宮の隣にある、銀礼の神殿と呼ばれる場所がなんか魔術的な施設になっているらしい。

「じゃあ。…太陽の方も同じような感じなの?」

 モカは「うん。」 と答えて太陽は同じオルトリアスの中にある光の塔が関係してるって教えてくれた。

 私は慣れない世界の常識というものを自分の常識として少しずつ吸収していく事がなにか楽しくなっていた。

「モカ。明日から一緒だね。」

 突然、異世界にきて、昨日までの悩みがとても小さな事なんだったんだなあ~。と感じた私は、明日からの想いに胸が一杯になっていた。

「ねぇ。モカって歳いくつなの?」

「人の時間で言うと8年くらいです。」

(あっ、そっか。こっちの世界って私の世界と時間の流れ方って違うのかな? こっちの10日って元の世界のどれくらいなんだろう…学校、休みになってるのかな……)

 授業の事やテストの事が頭を過ぎったけどモカを見て私は頭を左右に振って元に戻した。


「モカはどうしてあそこに落ちてきたの?」

 私はまだモカの事を何も知らなかった。

「僕達の住んでいる所は精霊界って言って、この世界と交わる別世界になるのです。ほかにも魔族がすむ魔界、神族が住む天界があって、それぞれこの人界を中心に繋がっているのです。」

 私は頭の中に天国や地獄みたいな世界を思い浮かべていた。

「…僕は、精霊界にいるのが嫌になって飛び出してきたのです。」

「えっ? それって家出?」

 モカは頭の上でもじもじしている

「はいです。でも僕達精霊族は、家族とか無くて自由に生きているので、別にいいのです。僕は次元の移動がまだ上手くできなかったので、たまたまあそこに落ちてしまいました。」

 私はモカを窓枠に下ろし、外の景色を一緒に見た。


 静寂の夜空に、月が銀色に輝いている。


「そっか。明日から一緒にがんばろうね。」

 私はモカも悩み事があるんだなって知って、二人で乗り越えられたいいなって思っていた。

 私は布団の中に入るとモカが私の枕の横にちょこんと座って目を閉じた。

(そこで寝るのね。ほんと可愛い~)

 寝つきの悪い私は、珍しく深い眠りに落ちていく。


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