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銀の月  作者: 紅花翁草


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18/30

光の襲来 4

 ミリアは竜に跨り、オルトリアスの西南の空を一人飛んでいた。

 竜騎士の正装である赤い重装備の鎧で、その者が少女だと認識するには、顔と声を知らなければならなかった。

「お兄ちゃん、いったいどこにいるのよ。」

 ミリアは、まだ捜索していない風の都市『ルノトーレ』に向かっていた。

 眼下に見える街道を2台の馬車が、オルトリアスに向かって走っているのが見える。

竜はゆっくりと街道に降り立ち、ミリアをおろす。

 馬車の方も、ゆっくりとミリアの前で止まった。

「すみません。少しお聞きしたい事があります。よろしいでしょうか?」

 馬車の騎手とその中にいる誰かに聞えるように、大きな声でミリアは喋った。


 前の馬車から緑の鎧を着た騎士が4名。後ろの馬車から淡い緑色のドレスを着た女性と、装飾が美しく入った綺麗な鎧を着た女性騎士が降りてきた。

 ミリアは後ろの女性騎士が知り合いだとすぐ気が付く。

「リッサさん!」

 手を軽く振って女性騎士が近づいて来るのを待っている。

「ミリアさん、お久しぶりですね。」

 巫女と並んで歩く、長身の女性騎士。緑色の長髪が風に揺らいでいる。

 馬車周辺で待機する、男の騎士達4人の間を抜けて、女性騎士と巫女は、ミリアの手の届く位置まで来た。

 ミリアの出した手をリッサが握り、久しぶりの再会を喜んだ。

「ミリアさん。こちらの方は、マイ・アンフィル様です。風の巫女の代表として、オルトリアスに向かう所です。」

 ミリアは騎士式の挨拶を、40代くらいに見えるマイさんにして、早速本題を話始める。

「私の兄が隊長をしている、竜騎士隊を見かけませんでしたか?」

「私の知る範囲では、見かけてないですね。皆さんにも聞いてみます。」

 リッサは4人の騎士達や騎手に話を聞きに行った。


 ミリアの疲れている表情を見たマイは事の経緯を尋ねた。

 ミリアはゆっくりと深呼吸をして話を始める。丁度、リッサも戻ってきたところだった。

「マルザード・エルオ司祭様からお呼び出しの手紙が来て、なんでも魔物討伐の相談だったらしく、兄の隊が3日前に光の塔に向かったのですが、次の朝、竜だけが戻ってきたのです。騎士隊全ての竜たちが…」

 リッサとマイは静かに話を聴いている。

「私はすぐに飛んで、光の塔のマルザード・エルオ司祭様に謁見したのですが…魔物捜索の依頼をして、それからの事は知らないと…」

 ミリアは空を見上げた。

「大地の都市『ロンファン』に行ってもルミナ様に尋ねても、まったく手がかりが無くて…」

 リッサは他の騎士達も見ていないことをミリアに伝えた。

「竜だけが戻るなんて事、仮に死んでいたとしても、ありえないし…」


 ミリアはぎゅっと、噛み締める。

「ありがとうございました。立ち止まらせてしまって、ご迷惑をお掛けしました。それでは、失礼します。良き旅になることを。」

 マイさんとリッサに、忙しく挨拶を済ませると、待機している竜の元に戻っていく。

 飛び立つ竜を見送って、リッサ達も馬車に戻り、オルトリアスに向かって進みだした。



 突如、大きな気配を感じたミリアは気配のする方向、王都『オルトリアス』に振り向いた。

 風の騎士達も気配を感じて、急停止する。

 馬車から降りたリッサ達は、オルトリアスの異変に目を疑った。


 まだ遠く、小さく見えるオルトリアスだったが、大きな闇の波動がそこから生まれているのが目に見えていた。

 リッサは風の騎士達が話し合っている所から、空に居るミリアの所に瞬時に飛んで来る。

「ミリアさん、私達は王都に飛びます。金と銀がいるから大丈夫だと思いますが、あなたの話と合わせると少し、気になりますから。」

 ミリアは力強く羽ばたく竜をなでてリッサに答えた。

「私も行きます。」

 王都に向かって竜は徐々に加速する。横には同じ速度で飛行する、風の騎士達がいた。

 風を纏い、風に乗る5人の騎士と巫女。

 一団は空を突き抜ける速さで飛行する。ミリア達は徐々に大きく見える王都『オルトリアス』の異変を理解した。

 オルトリアスの街中に魔界の門が見える。

 ミリアと風の騎士達は、魔界の門から南都に襲来している魔獣を倒しながら、一直線に門の前の広場にたどり着いた。

 ミリア達は、イガル団長率いる、銀の騎士達に合流する。

 ミリア、マイ、リッサの3人は、指示を出しながら戦闘している大柄の騎士の所に降りた。

 マイ・アンフィルがイガルに声をかける。

「イガルさん。現状をお聞かせください。」

「おお、マイ殿だったか。ルゲルのやつらがそこの門を開けて侵略してきたんだが、魔族と手を組んでるみたいでの、この有様だ。」


 魔界の門から溢れる魔族は、数で広場の騎士達を圧倒し、南都の町に流れていた。


「城にマイザードが来てるみたいだが、そっちは王妃と姫がいるから問題ないだろう。都民は各施設に避難して無事だが、いつまで耐えれるか…」

 攻撃の手を休めずに話を聞く3人は、魔界の門の異常さを見つめた。

「時間的に消えていてもおかしくないんだが、消えるどころか魔獣が増えている。」


「隊長ー!」

 一人の銀の騎士が大声で叫ぶのが聞えた。

 声を発した騎士は、イガル隊長の視線を確認すると魔界の門の入り口を指差した。

そこには、赤い鎧を着た5人の騎士が広場へゆっくりと入ってくるのが見えた。


 ミリアが気付く。

 周りの全ての者達も、その赤い騎士が『火の竜騎士』であることに。そして、魔人化していることに。

「お兄様…」

 ミリアは妹として、兄に駆け寄る事を諦めていた。

 イガルはミリアの肩に手を当てる。

「わしが、行こうか。」

 リッサとマイも、ミリアに声をかける。

 ミリアは強い意志で答えた。

「ありがとうございます。兄は私が。」

 イガル達は、ミリアが駆け出し、一人の竜騎士と対峙したのを確認すると、周りの竜騎士を、二人から引き離すように立ち回った。

 ミリアは虚ろな目の兄と剣を交えていた。

「お兄ちゃん。なんで? イヤだよ…」

 いつも笑顔で優しかったミリアの兄は、もう居なかった。

 容赦ない重い剣技が、涙を浮かべているミリアを襲う。


 ティオとハミルが、魔人と化した竜騎士達と交戦している広場に到着する。

 ティオはミリアが魔人と討ちあっているのを見て、援護に向かおうとしたが、薄緑のローブを着た女性が目の前に入り、ティオの足を止めた。

「彼女は今、兄と最後の時間を過ごしています。彼女の意思で手出ししない事に。」

 ティオは軽く会釈して答えた。

「はい。マイ・アンフェル様、貴方様も駆けつけてくれていたのですね。ありがとうございます。」

 緑の巫女は儀礼の祈りをして、再び戦場の支援に目を配らせた。

「目の前の闇を払い除けましょう。」

 マイが言葉を発し、ティオが合わせる。

 合わさった二人の魔法が広場全体に微風のように広がってく。


 ミリアの兄以外の魔人と化した竜騎士達はイガル達の活躍で、すべて広場に倒れていた。

「やっぱり、私じゃお兄ちゃんに敵うわけないじゃない。…ごめんね。」

 ミリアの剣をはじき落とし、その胸に剣を突き刺す瞬間、魔人と化したミリアの兄の動きが止まる。

「ミリア。約束しただろ、何があってもお前を守ると。」

 兄の目に光が戻った。小さく笑みをミリアに見せると、一歩下がり自分の剣を胸に突き刺した。

「ミリア、後は頼んだ。」

  一瞬の出来事にミリアは話す言葉も出ず、深い悲しみと兄の偉大さに、大声を上げることしか出来なった。

 魔人となった自分に剣を突き刺し、動かなくなった竜騎士を周りの者達は見ていた。

前例の無いその光景を、驚きと敬意を重ねて見ていた。


 ミリアは動けなかった。

 すべき事は、理解している。でも、出来なかった。

 強く、意識を込めて動こうとするけど、ミリアは動けなかった。

「私がしなくて、誰がするのよー!」

 泣きながら動かない自分に向かってミリアは叫ぶ。


 白銀の鎧を纏ったドレス姿の少女がミリアの隣に現れた。

実際は、空から矢のように飛んで来たのだが、広場の全ての者は突然、視界に現れたので、女神と勘違いする者もいた。


 ミリアは隣で兄を見ている銀髪の少女に意識を移した。

 リミナスは振り向かず、剣を刺したまま、意識が無くなった竜騎士を見つめながら言葉を発した。

「この騎士の奇跡を、あなたは無にするのですか?」

 ミリアは落とした自分の剣を拾う事で少女に答えた。

 剣を構え、ミリアは兄をしっかりと見つめる。


 ミリアの首下辺りから赤い光が漏れているのを、リミナスが気付く。

「ちょっと待ちなさい。その光は、」

 ミリアは鎧を戻して、光を放つ、石の付いたネックレスを胸元から取り出した。

 リミナスが自らの問いが正しかったと判り、「炎華石ですね。」と答える。

「その石は、あなたと、そこの騎士と関係のある物なんですね。」

「目の前の騎士は私の兄です。この石は兄から私に…」


 ティオと風の巫女のマイ、姫騎士のリッサがミリアと銀髪の少女の側に駆け寄ってきた。

 それとほぼ同時に、意識が無くなり人としての死を迎えていたミリアの兄が、魔物として動き出す。


 身構えた、ティオ達を遮り、リミナスが魔物となった騎士を魔法で束縛する。

「時間が無いから簡潔に聞きます。ミリアさん、お兄さんをあなたのゴーレムとして存在させますか? もちろん生前の記憶も意識も全てそのままです。」

 ミリアは言葉を失った。その場に居たティオ達も理解出来ない発言に戸惑いを見せている。

「最後です。あなたの命の半分を分け与え、あなたの命と同化させ、この世界にお兄さんを存在させますか?」

 「はい。」 ミリアは悩む事よりも、大切な気持ちを押し通して、力強く答えた。

 「では、炎華石を私に。」 ミリアはネックレスを引き千切り渡した。


 「ティオ。少し手伝ってください。」

 ティオは躊躇することなく、リミナスの言葉に素直に従った。

 ティオは騎士の心臓だけを消滅させて、全身を包む束縛魔法をかけている。


 リミナスはミリアの左手、薬指の先を剣先で傷を付けて炎華石を握らせた。傷口から出た血は垂れることなく、石に吸い込まれていく。

 「ミリアさん、石に魔力を最大で流してください。」

 ミリアは炎華石を強く握り、魔力を込める。

 「十分です。」 

 リミナスは炎華石をもう一度預かると振り返り、ティオが束縛している騎士の胸の傷から空洞になった心臓の場所に、炎華石をはめる様に移した。

 「ティオ。ありがとう。もう解除していいですよ。」


 リミナスは魔法紋章を描く。その場に居る誰も知ることのない古の法紋。戦いの最中、広場の騎士達は、舞い降りた少女の行動に意識を反らす事が出来なかった。


 ミリアの兄の体から赤色の水晶石みたいなのが溢れ出る。それは全身から溢れ、覆い尽くし、大きな紅水晶となる。

 リミナスはミリアを呼び、左手を水晶に触れさせた。一呼吸ほどの時が流れた時、水晶が霧のように細かく砕け、大気に消えていく。

 そこには、穏やかな笑みを浮かべた赤髪の竜騎士の姿があった。

 ミリアは涙を溢しながら、兄に抱きつく。

 いつもの出来事のように、兄は手を広げ、妹を抱きしめた。


 広場に居た者達、全てが、声に出さない歓喜を上げ、士気を上げ、目の前の魔物を倒していく。

 それでも、現状は改善される事は無く、門から湧き出る魔獣達の数は減らなかった。


ミリアは兄の腕の中で眠るように意識が消えていった。

 リミナスはその光景を確認し、周りに居たティオ達に一礼をすると、ミリアのゴーレムとして生まれ変わった騎士に言葉を与えた。

「話は、この戦いが終わってから。」

 ミリアを抱きかかえて、兄はミリアの竜が待機している広場の入り口に移動した。


 リミナス達はそれぞれ魔物退治に戻る。

 なおはリミナスさんの決断力や判断力に見入っていた。

(あの門が消えれば、終わるんだよね?)

 なおは意識の中で呟いた。

[そうなんですけど、普通ならもう、時間が切れて消えているはずですが。]

(リミナスさんでも、消すことはできないんですね。魔物みたいに魔法で攻撃すれば消える物じゃないんですね。)

[なお、わたしを呼ぶときはリナと呼んでくださいね。]

 リミナスはそう言ってもう一つの間違いを正してくれた。

[魔物や魔獣を魔法で倒しても消えることは無いのですよ。あれは、塵一つもこの世界に残さないように浄化までを施しているの。]

(剣で切った後でも?)

[そうよ。教えとしてみんなそうしているの。]

 なおは倒れている竜騎士達と次々に消えていく魔獣や魔物を見ながら納得した。

(そっか、魔物ってこの世界じゃ幽霊みたいに物質として存在していない物なのかと思ってた。)

[…存在しない]

 リミナスはその言葉で一つの仮定を思いついた。

 空を飛んでいる目視しやすい魔物を選ぶと、リミナスは銀の矢で体を貫いた。

 魔物はその場で塵のように消えていく。

[なお。ありがとう]

 なおは、今の会話で何か役に立ったと知り、少し嬉しくなった。


 広場全体に轟く大きな声でリミナスは叫んだ。

「魔物を浄化せずに倒しなさい!」

 その場で戦う全ての者達は驚き、そして疑う事なくその命令を聞いた。


 塵と消える魔物を見て、目の前の現状を理解した者たちは、重く圧し掛かる現実を理解する。

「召戦!」 それぞれが絶望の中で叫んでいた。

 

 ティオはリミナスのところに飛んでいく。

「リミナス様、助言ありがとうございます。私はお母様達にこの事を知らせに行かなくては…」

 悔しがるティオにリミナスは優しく微笑んだ。

「大丈夫ですよ。今ここには、なおもいますから。」

(えっ?!)

 リミナスは腰の、なおのファルトケースを指で突いて見せた。

 近づいてくる人に気付いたリミナスは、話を続けるのを止める。


 二人の側に銀の騎士団長イゲルとハミル、風の騎士リッサと風の巫女マイが集まってきた。

 イゲルがティオに尋ねた。

「そこの少女はティオの知り合いか?」

 ティオは困ってしまった。


 リミナスはこの場に集まった者達に一礼をして、自己紹介とこれからすべき事を語り始めた。

「私の名は、リナ。シェラの血族と、認識してください。それ以上は、話すことはありません。それでは、私から質問です。」

 リミナスはゆっくり口調を落として話を続けた。

「今、対抗できる召還師は居ますか?」

 ティオは力なく首を横に振った。

「居ません。」


 騎士団長のイゲルは魔界の門を見つめて、

「わしは、召還師を探して、直接倒しにいくとする。だが、この人数で攻め落とせるだろうか…」

 風の騎士と巫女も同様の想いを抱いていた。


 リミナスは魔界の門を睨み付けるように見つめている。

「ティオ、それに皆さん。私がファルト召還戦を行います。」

「君は召還師なのか?」

 イガルの問いにリミナスは「はい。」と一言だけ答える。

 イガル達はリナと名乗った少女が、常識で測れない人物だと理解する事は容易だった。


 イガルが、騎士団長の務めの言葉をリナに問いかけた。

「発動までの時間を我等が守ればいいんじゃな?」

 リミナスは頷く。

「ファルトだと欺く為に、雑魚ばかりで攻めてきていますが、こちらが召還準備に入ったとなれば、」

 イガルが門を今一度見る。

「そうじゃな。デカイのを出してくるだろう。」


 リミナスはティオに視線を戻す。

「ティオ、私の側で私を守ってください。」

「はい。」ティオは錫杖を強く握りなおして応える。


 リミナスとティオは広場から都市中心辺りの空に移動した。

「基盤は天空城で行きましょう。闇族も強化されてしまいますが、正面に領地を造るには空中しかありませんから。それに、相手の領地は3階級あたりだと思います。押し切れるでしょう。」

  ティオはリミナスの少し前に出て、門と対峙する。

「リナ様。お願いします。」

 リミナスは詠唱を唱える。

 魔法紋章は、リミナスを中心に、巨大な球体の表面をなぞるように描かれていく。

 

 南都で人々を襲っていた魔物達が、一斉に空の光に向かって移動する。

 応戦していた施設の兵士や巫女達は、離れる魔物達を追撃するが、その場から離れる事に躊躇い、祈るように空に浮かぶ光を見つめていた。


 ティオは魔物の大群が向かってくるのを確認すると、錫杖を鳴らし、詠唱を始めた。

 数え切れないほどの小さな光の玉がティオの周りにゆらゆらと浮かんでいる。

 ティオは大きく深呼吸をする。

 錫杖が淡く光ると光の玉はそれぞれ生きているかのような動きで向かってくる魔物たちに向かって飛んでいく。

 光の玉は魔物に当たると大きく弾け、閃光の中、魔物を倒していた。

 ティオは次々と光の玉を出し続けた。

「絶対に邪魔させないから。」


 イガルは魔界の門の最上部に動く影を見つけた。

「あれか!」

 イガルが門の上に向かって加速する。

 ハミルと、風の騎士と巫女が、イガルの後を追う。


 黒い巨大な手がイガルに襲いかかる。

 衝撃波のような振動と共に、門と変わらない大きさの魔人が広場に現れた。

 押し戻された形になったイガルは、追いついたハミル達と共に、巨大な魔人に挑む。


 魔人の後ろから、さっきの影の正体、魔族が現れた。

「気付いたようだな。まあ、少しは褒めてやろう。」

 巨大な魔人が、魔族を守るような形で身構えているため、イガル達は魔族を攻撃することが出来なかった。


「どうやって、魔族のお前が、この世界でファルト召還を? 教えてくれまいか?」

 イガルは時間稼ぎついでに、聞いてみる。

 魔族は圧倒的な優位な現状の中、イガルの問いに答えていた。

「お前達の言う、ルゲルの賢者。そいつらを使ってやっただけだ。欲深いやつらばかりで、洗脳し易かったわ。」

 魔族は笑い声を上げながら話を続ける。

「柱になって、今も働いてるわ。何もせずにだらだらと欲を満たしている屑も、最後ぐらいは人の役に立ててやったんだからな。感謝しろ。」

 風の巫女マイが声を出す。

「貴方達を人と認めるつもりはありません。」

「だろうな。俺も認めてもらうつもりは無い。そもそも俺はマルザードの願いを叶える為にやっているだけだ。あいつは良いぞ、世界を知ろうとしている。だから、屑共をあいつの礎に使ってやっただけだ。」

 魔族は2枚のカードを取り出した。

「こんな会話で時間稼ぎなど、足掻きにすらならないだろう。向こうで召還の儀をしているようだが、しかも護衛は一人。」

 魔族は、カードに向かって名を唱えた。

 黒く澱んだ巨大な女王蜂と従える10数体の蜂。

 4つの赤い目が光る、大きな黒い鷲。

「遊んでやるほど暇じゃないんだ。」

 魔族は一瞬で消えると、門の上にある玉座のような椅子に腰掛けていた。


 イガル達は巨大な3体の魔物から、ティオ達と人々を守る為、奮闘する。

 騎士達は魔力を込めた一撃を何度も打ち込む。巫女達は上位魔法を止めることなく使い続ける。

 魔物を広場に留めてはいるが、負傷する者、魔力が無くなった者が次々と戦線を離脱していく。


 イガルは召還の準備をしているティオ達を信じて目の前の魔人だけに集中していた。

 後方から沢山の光の矢がイガルの横を突き抜けて巨大な魔人の体に突き刺さった。

 魔人が怯むのを見ると、イガルは後ろに視界を移す。

  大勢の騎士や巫女が、ルミナ王妃を先頭にこっちに向かっているのが見える。

「これなら、まだ耐えれる。あとはティオ達が、」

 体勢を戻した魔人に向かってイガルは魔力を込めた剣技を打ち込んだ。


 黒い鷲は風の巫女達が、

 女王蜂はハミルと銀の騎士団が、

それぞれの希望の光を、背中に感じながら、戦っていた。


 魔界の門の奥から、激しい咆哮が聞えてきた。

 巨大な魔力を放ちながら黒い霧と共に広場に現れたのは、凶悪な赤い目と牙が示す、『闇の竜

オブロンディス』

 人間の希望を踏み潰すには、十分だった。


 広場に着いたルミナは、誰よりも早く、その竜と対峙していた。

 自身を魔力で包み青白いオーラを放ちながら、ルミナは剣を竜に向けた。

「娘達の邪魔はさせません。」


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