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銀の月  作者: 紅花翁草


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光の襲来 3

 ティオは騎士団を独り離れて、シェラの場所に移動していた。

 シェラはローブの老人に話しかけていた。

「マルザード、こんなことで手に入れた王座を、誰が認める?」

 マルザードは抵抗を止めて、その場に座り込んだ。

「そんなことは判っている。だが、世代が変われば人は忘れる。サイローズが王になり、その息子、孫と、人は忘れ、受け入れるんじゃよ。」

 サイローズはずっと無抵抗で力なく佇んでいる。

「お祖父様、僕は、僕達は正義じゃなかったのですか?」

「マルザードよ。正義なんてものは、この世界には、無いんじゃよ。勝者が正義を語るんじゃ。」


 シェラは拘束魔法を解除し、悲しく、二人を見る。

「だからといって、魔族の力を借りるとは、情けない。それで、他の賢者はどうした?」

「知らん。己の保身と財産にしか興味ない連中。光の塔はもう、存在する意味。価値など無い。」


「わしは、この世界の真実を知った。わしらの存在も意味も価値も無いんじゃ。」

「シェラ。おまえは知っているんじゃろ。」

 シェラが深いため息をつく。

「知っているさ、だからなんだ。価値なんて必要ないだろ、生き物は生まれ、死んで逝く。ただそれだけの存在だ。だからこそ、人間は生きるための理由を探すんだよ。」

 シェラは隣で聞いていたティオの肩を撫で、うずくまっている黄金の騎士を見る。


「マルザード、罪を償え。今ならまだ間に合う。」

 空を見上るマルザードが魔界の門を指差す。

 魔界の門の周辺の空は大量の魔獣が縦横無尽に飛びまわっているのが見えた。

「悪いな。手遅れなんじゃ。」

 倒れて拘束されているルゲルの騎士達が、拘束具を引き千切り、立ち上がった。

 全身から黒い霧を吹きだしている。

 倒れた仲間の処置をしていた銀の騎士達が、剣を構えて囲む。

「この世界を終わらせる。そして新しく作るんじゃ。サイローズが新世紀の王として!」

 マルザードの叫びを、合図にしたかのように、黒く染まったルゲルの騎士達が魔人となって暴れ始める。

 サイローズの戦意はすでに無く、宝印石に武具を戻してうずくまっていた。

「サイローズや、全てが終われば、世界が変わる。まっておれ。」

 マルザードは何をするわけでもなく、その場に立って、ただ見ているだけだった

 

 シェラは、増大した力で銀の騎士達を倒していく魔人に、光の杭で動きを止める。

「攻撃は受け止めるな、かわすんだよ。」

 シェラは『銀の騎士団』に指示を出しながら、ティオに施設の援護に向かうように言った。

「ティオ。街の事は頼んだよ。」

「はい。お婆様。」 

 ティオはハミルを呼んでシェラに中庭を任せると、空の魔獣を倒しながら魔界の門に向かった。

「イガル伯父様達は大丈夫だよね。」

 自分に言い聞かせながら目の前の魔獣を倒していく。


 リミナスはルミナに連れられて、城の一室に入る。

 ルミナはモカを、ソファーの上にそっと寝かせた。

「後で私の自室で寝かせますね。」

(モカ。待っててね。)

 目の前には、純白のワンピースのようなドレスが立て掛けられていた。

 銀の繊維で織り込まれた刺繍と、袖と腰あたりに付いている小さな宝石が輝いている。

(すっごい、綺麗。もう、作ってくれてたんだ。)

「いいドレスね。なおが凄く喜んでいるわ。」

 嬉しく微笑んでいるルミナさんが着替えを手伝ってくれた。

 着替え終わると、ルミナは戸棚から出したネックレスを、リミナスに見せた。

 大きな淡白く光る丸い宝石を、銀の装飾台が支えている。

「なおの宝印石です。中には『ミレナの加護』が入っています。」

 ルミナは背中からネックレスを付ける。

(お母さん…)

「ナセラもなおの事、気に入りましたか。」

 リミナスは宝印石を触ると早速、『ミレナの加護』を装備した。

 ルミナは、なおのファルトケースを革のベルトから外すと、白い綺麗な布に付け直した。

 それを改めて腰に着ける。

 銀の彫刻と刺繍で出来た、腰巻きリボンみたいな可愛いベルトになっていた。

(すっごい、可愛いんだけど…お母様の好みなのかな?)

 頭の中でリミナスの声が聞えた。

[娘にあげる、最初の贈り物だからでしょう。なおの時に貰えなくて残念ですが、また後で、沢山の感謝の言葉を言ってあげてくださいね。]

 私は(そうする。)とリミナスに応えた。


 リミナスは寝ているモカを抱き上げる。

「なおは、良い出会いをしたのですね。」

 ルミナも笑みを見せる。二人はルミナの自室に向かい、ベットにモカを寝かしつけた。

(モカ、行ってくるね。)


 二人は廊下のバルコニーから外の戦況を眺めた。

 ルミナが中庭を見下ろす。

「魔人化ですか。あれはお母様に任せて大丈夫そうですね。」

 空には沢山の魔獣が飛来している。

 ティオが門に向かっているのが見えた。

 リミナスは視線を町の避難場所になっている、闘技場や競技場に移す。

「結構な数が集まっていますね。今は持ち応えていますが、このままでは結界の魔力も尽きてしまいます。」

「はい、そうですね。私は各施設の魔物を殲滅しながら門をめざします。リミナス様もお気を付けてください。」

 ルミナは飛び立ち、避難施設を守る者達の加勢に向かった。


 リミナスは町を見渡しながら、ゆっくりと城の上空に浮上した。

[なお、魔獣と魔族には魔法が直接効きます。ですが今、中庭にいる魔人は、生きた人間を魔族が変異させたものなので、心臓を破壊してから魔法で浄化しないとならないの。]

 リミナスは大きく深呼吸をすると、弓を射る姿勢になる。

 手に魔法の矢を出現させると目視できる魔獣に向かって次々と撃ちはじめた。

 矢は動く魔獣を追尾し、確実に仕留めて行く。

[すこし魔獣の動きを抑えましょう。]

 長い詠唱をすると、南都の空一面に大きな魔法紋章が出現した。


 淡い光の雨が降りはじめる。

[魔物の力を少し弱める光の粒を、大量に降らせる事で、頑張っている民の助けになるでしょう。]

 言葉通り、各場所で交戦している魔物の動きを鈍らせていった。

(本質は同じなのに、形や数を変える事で色々な魔法になるのね。)

[そうよ。重ねたり、凝縮したりすれば強くなるし、その反対も。]



 

 戦況はリミナスの光の雨によって、討伐速度が上がり、各地の施設の守備状況は好転していった。

 ティオはハミルと魔獣を討伐しながら、泉の近くを飛んでいた。

 結界が張られた神殿の周りにも、沢山の魔獣が集まっている。

「エリ!」

 泉の水が生き物のように、神殿周辺の魔獣達を倒していた。

 神殿の外で魔獣と交戦しているエリオナと護衛の人たちが見える。

「ハミル、すこし寄り道するわ。」

 二人は魔獣を討伐しながらエリオナに合流した。


 神殿の中は市民が避難していた。

 数名の銀礼の巫女と神官が結界を張りながら魔獣を倒している。

「エリ、ありがとう。」

 ティオはエリオナの護衛に付いている騎士達にも感謝の言葉をかけながら、群がる魔獣を倒していった。ハミルも同じように水の騎士に混じって戦っている。

「ティオねぇさま。よかった。ご無事で。」

 疲労が見えるエリオナが精一杯の笑顔を見せていた。

「もう大丈夫よ、エリは休んでてね。」

「はい。」 とエリオナは答えて、その場に座り込んだ。

 ティオは錫杖を構えて沢山の魔法陣を周囲に出す。砲台のように、魔法陣から白銀の光線が撃ち出されている。

 次々と魔獣を撃ち抜くが、減る気配が無いくらい魔獣が溢れていた。

「どうして、こんなに出てくるのよ。もう、魔界の門の出現時間、過ぎてるはずなのに。」

 消えない魔界の門をティオは睨みつけた。

 いつ終わるのかと、不安になるティオの頭上、空一面に魔法紋章が描かれていく。

「お母様? お婆様? リミナス様かしら…」

 降り始めた光の雨が、魔獣の動きを遅くしていく。

「これなら、いけるわ。」

 ティオ達の戦意も上がり、神殿周りの魔獣が減っていった。

 光の雨が降り続ける中、ティオ達は近づく魔獣全てを倒していた。

「エリ、ここを守ってくれてありがとうね。」

 まだ、魔界の門は開いて、魔獣も見えるけど、ティオは勝機を感じてエリオナを抱きしめた。

「私のわがままに、みなさんが協力してくれたおかげです。」

 エリオナは戦闘を終えて、戻ってきた護衛の3人に頭を下げる。

「エリオナ様の笑顔を守る為に、我々は側にいるのですよ。」

 疲労の中、笑顔で答える水の騎士達とエリオナを見たティオは、魔界の門に向けて飛び立った。

「今度は私が守る。」

  ティオはハミルと共に、イガル達が交戦している広場に向かった。 


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