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銀の月  作者: 紅花翁草


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15/30

光の襲来 1

 時は少し戻る。


 なお達と別れたティオは、ハミルと並んで、一直線に、開かれた門の広場を目指した。

 赤茶色の鎧の兵士達、100人程度の部隊が、門から広場を占拠しているのが見えた。

 門から流れ込む風で大きくなびく、黄金の旗。真ん中に太陽が描かれている。

「ハミル。降りるわよ。」

 二人は町の人が居なくなった広場の入り口に降り立つ。そこには、広場から動かない赤茶色の兵士達と対峙する数人の守備兵がいた。


「姫様。」

「状況はどうなっているのですか?」

 ティオは広場の兵士達に注意しながら守備兵に聞いた。

「門を監視をしていた兵達は皆、ルゲルの兵士達に倒されてしまいました。」

 ティオは門の横にある守衛舎に向かって祈りを捧げた。そして広場を占拠している、兵士達に向かって大声で問う。

「この行いは、光の司祭。及び、ルゲルの賢者達の意思だと思ってよろしいのですか?」

 

 ティオの問いに、赤茶の鎧に金色の模様が入った騎士が、兵士達の頭上に浮きあがった。ティオに向かって手をかざす。瞬間、無数の光の弾が襲い来る。

「ティオ様。」

 ハミルはティオの前に立ち、盾をかまえた。

「問題ないわ。」

 ティオは光の魔法壁を出して、全ての攻撃を受け止める。そして、銀色の長い錫杖を取り出し構えた。

「人としての礼を、こちらは示しました。今から私は、民を守る立場として、あなた達を排除します。」

 ティオは錫杖に魔力を込める。鉄琴のような綺麗な音色が奏でられる。

「ティオ様。お止めください。」

 ハミルが剣を構えたまま、ティオの錫杖の前に出る。

「どきなさい。これは命令よ。」 ティオが凛とした声で答える。

 ハミルは背中を向けたまま動かない。

「私は貴方を守る為だけに生きています。貴方の手を汚さないために私は傍に居るのです。だから、聞けません。」

 ルゲルの騎士が、さっきよりも沢山の光の弾を放つ。兵士達がそれを合図にティオ達に向かって走りだしていた。


 光の弾が、瞬時に全て消し飛ぶ。

 詰め寄るルゲルの兵士の目前に、銀色の騎士が5人、降り立つ。

 真ん中の大柄の騎士が大きな両手剣を横一閃に振り、襲い掛かってきた兵士達を後ろに吹き飛ばす。

「待たせたな。お嬢。」 

 振り向いて、ティオに笑みを見せた大柄の男は言葉を続けた。

「ハミルの言葉は、お嬢を慕う全ての民の想いだぞ。この国を守っても、お前が人を殺めたら都民は悲しむぞ。敵はわしらが倒す。その為の『銀の騎士団』。」

 騎士4人が前線に走り出していた。

「イガル伯父様。」 ティオの緊張が少し緩くなった。

「団長!」 ハミルがティオの横に下がる。


 さらに10人ほどの守備兵が駆けつけて20数名の一団が出来ていた。

 イガル騎士団長が号令を発した。

「ルゲルの意図は判らん。だが、今からわしらは人を討つ。迷うなよ。 南都を守るぞ。」

 真上に突き上げた剣を合図に、兵士達が前線に走り出す。

 イガルは、ティオとハミルをその場に留めた。

「お嬢は兵士達に加護をしてやってくれ。わしらの命を守ってくれ。」

「ハミルは引き続き。お嬢の傍で守れ。」

 イガルは大きな手でティオの頭を撫でる。

「光のやつらが何をしようとしているのか判らんが、目的はルミナとお嬢の命と、王の座だろう。だから、たかが100人程度の兵士で終わるはずはない。」

 イガルは戦場を見つめる。

「直に巫女達も駆けつける。それまで、頼んだぞ。ハミル、お前はお嬢を絶対に守るんだ。」

「はい。」 二人は同時に答えた。


 ティオは溜めていた錫杖の魔力を解き放った。

 前線に居る兵士達に淡い光が降り注ぐ。魔力と気力が増え,力がみなぎる。さらに、剣と鎧の強度を高める。

「さぁて。わしも、相手の騎士を討ちにいくかの。」

 イガルは足に魔力を込める、疾風を纏い、浮いている騎士まで一瞬で突撃して、大剣を突き刺し投げ落とした。

 

 ルゲルの兵100人程度に対して、20人ほどの戦力であったが、戦況はティオ達の方が優勢だった。誰一人欠けること無く、ルゲルの兵士の数を減らしていく。


 飛来した3人の銀礼の巫女が、ティオの所に降りてきた。

「ティオ様。お待たせしました。町の人達は、各、役所に避難しています。銀礼の者達で結界を張っていますので、ご安心を。」

 ティオはずっと兵士達に治癒魔法と防御魔法をかけ続けていた。

「そう。安心したわ。ここを早く終わらせて、次に備えましょう。まだ終わらないはずだから。」

 巫女達もそれぞれ戦っている兵士達に支援魔法をかけた。

 半数以上の敵を倒したイガル率いる『銀の騎士団』は、それでも引かないルゲルの兵士達に違和感を抱いていた。

 ティオと巫女達の支援魔法で無傷で制圧出来そうなのに、そこにいる誰もが、不安を募らせていく。

 最後の一人となったルゲルの兵士を倒したイガルは、開かれた門の先を見つめる。

「なぜ、誰も居ない。」

 同じ石畳が続く門の先。大きな壁で隔てられた光の民の領地『北都』は静寂を保っていた。

 イガルは独り、門を越えようとした。

 その時、閉じられた時の、門の位置。壁となるその場所に、黒い霧が薄い板のように大きく広がっていく。

 イガルは死体が横たわる広場から兵士たちを、ティオの立つ場所に退避させた。イガルも大きく跳躍して、ティオの前に着地する。

「魔界の門が開くぞ。これが狙いだったのか!」


 黒い霧が、死体になっているルゲルの兵士を動かし始めた。さらに魔界の門からは、魔獣と呼ばれる色々な獣達がどんどん湧いてきている。

「さぁて、魔物ならお嬢も遠慮は要らん。ここで全部、倒してやろうぞ。」

 ティオは錫杖にこれまで以上の魔力を注ぎ込む。

「はい。」

 掲げた錫杖から2メートルほどの光の玉が広場の真ん中に放物線を描いてゆっくりと飛んでいく。

 ゾンビになった兵士達の頭上で大きく爆発した光の玉は、数にして8割ほどのゾンビを粉々に砕き、浄化した。

 騎士と兵士に巫女達が支援魔法を施す。

 『銀の騎士団』と守備兵達は、残ったゾンビと、湧いてきた魔獣に向かって駆けてく。

「前線の支援魔法をお願いします。私は空の魔獣を倒します。ハミルも一緒にお願い。」

 ティオとハミルは空に飛び上がり、門から飛来する魔獣達を、次々と浄化した。


 ハミルは剣に魔力を込めて斬りつける。神速のごとく、空を駆けめぐり、魔獣を倒していく。

 ティオは魔法の矢で魔獣を撃ち消す。

 地上の敵はイガル達で無事に殲滅できていたが、魔界の門からは、止めどなく魔物が現れてくる。

 ティオは空中に留まり、詠唱を始める。

 ティオの詠唱を聞いたハミルは魔獣の殲滅を中断して、ティオのところに戻る。

「団長!」 

 ハミルが広場で戦っているイガルに声をかける。

 ティオの詠唱を見たイガルは全ての兵達に号令を出す。

「退避! 下がれー!。」

 下がる兵士達を襲う魔物を、騎士達が足止めし、門に向かって押し飛ばす。

 広場から騎士と兵士が退避したのを確認したティオは空高く上昇する。ハミルもついていく。

 空を飛ぶ魔獣達が二人を真下から追う。

 広場の遥か上空に位置するティオが錫杖を振り下ろす。巨大な光が柱となって地上に伸びていく。

 イガル達は眩しさに目を背けた。

 光の柱は追ってきた魔獣、広場にいた魔獣全てが一瞬で消滅している。

「きりがないわね。」

 ティオは黒い霧から次々と現れる魔獣に向かって、魔法で作った銀の矢で殲滅しながら広場に降りていく。

 広場は終わらない戦いを続けている。

「伯父様。」

 魔獣を倒しながらティオとハミルはイガル団長の傍に行く。

「そんな不安そうな顔しなくていいぞ。魔界の門は時期、閉まる。」

 魔獣を一閃で消していく騎士達。ハミルも同様に戦果を重ねていく。


 空から銀のローブを着た神官が魔獣を倒しながらイガルとティオの所に降りてきた。

「ティオ姫様。城にマルザード司祭が兵団を連れて。今、ルミナ様が交戦しています。」

 ティオとイガルは決断する。

「ああ、ここはわしらで大丈夫だ。お嬢はハミルを連れて城へ。」

 ティオは空で戦っているハミルを大声で呼ぶ。錫杖を収めて、ティオは城に向かって飛び始める。ハミルもすぐにティオに追いつく。


 空を飛びながらティオは泉で別れた、なおとエリの事が心配になった。

 泉の神殿が視界に入る。馬車が一台止まっているのが見えた。人影は見えなかったが、神殿の入り口に人が居るのが見えた。

「エリは大丈夫。今はお母様の所に。」

 ティオは小さく自分に言い聞かせる。

 空から町を見渡すと、巫女や神官達が人々を安全な場所に誘導しているのが見える。

 

 ティオは速度を上げて城へと向かった。

 城から戦場の音が聞える。ティオとハミルは城の中庭を見下ろすと騎士同士の争いが見えた。

「お母様!」

 城門の外に母親のルミナ王妃が居るのが見える。


 そして、ティオは自分の目を疑うことしか出来なかった。




 王都『オルトリアス』を南北に分ける壁。その一部の門が、開く少し前、城の一室では、なおのドレスとネックレスを、じっと見つめるルミナ王妃がいた。

 ドアをノックして執事が扉の前で礼をする。

 ルミナは部屋を出て、執事に今日の公務を確認しながら廊下を歩いていく。

 月礼祭の準備と来賓者への配慮と謁見。ルミナは公務室に戻って、書類の処理を始めた。

 執事とメイドも普段通りの対応でルミナの公務を支えている。


 公務室に銀色のローブを着た神官が入ってきた。

「ルミナ様。大変です。北壁の門が開きました。」

 ルミナは深い呼吸を一度し、悠然と立ち上がる。

「そうですか。予期していた事ですが、迅速な対処を皆に願います。」

「予定通り、騎士団から数名現地に向かってもらいます。あと、銀礼の神殿、図書館、競技場などに都民の避難を巫女と神官全ての人員を使って行ってください。」

 神官は一礼をして駆け出で行く。

「あなた達も、城の避難場所に行ってください。」

 執事とメイドを部屋から出してテラスに出る。

 ルミナは、町にいるティオと、なおの事を考えていた。

「どうか、無事でいてね。」


 光に身を包んだルミナは、王妃として、導き守りぬく為の戦具を纏った。

 銀の片手剣と大きな盾、白いローブに銀の篭手と脛当て、額には大きなティアラが輝いていた。

 テラスに出るとそのまま城の上空に浮かび、町の様子を見る。


「ルミナァー。」

 銀の鎧姿の大柄な男性が、少し離れた城の屋根から一直線にルミナのところに飛んでくる。

「お兄様。」

「門へは、わしが行くぞ。4名の騎士を連れていくから、残りの騎士たちはお前が指揮してくれ。」

 そう言って、騎士は部下を連れて門に向かって飛んでいった。

  門が開いている以外は、まだ平穏に見えていたが、町の人達の避難が始まっているのを確認して、ルミナは城正面の中庭に降り立った。

 そこには『銀の騎士団』30名ほどが整列している。

「危惧していた、ルゲルの侵攻が起こりました。彼らの目的は王位継承権と私とティオの処刑だと思います。どのように、この城を攻めるのか判りませんが、都民の安全を最優先にお願いします。」

 6部隊に編成された騎士達は開かれた城門と城の周囲の警備に就いた。

 1部隊はルミナの護衛に残っていた。


 城門の外、大きな広場から続く街道。その向こうから10数台の荷馬車が城に向かっていた。

 広場に次々止まると、布の被った荷台から、赤茶色の鎧を着た男達が降りて、城門に対峙して並ぶ。鎧は金色の縁取りと太陽のような模様が描かれていた。

 総勢50名ほどの騎士隊になっていた。

 一台の馬車が広場中央に止まる。

 全身、黄金の鎧を着た小柄な青年が降り立ち整列している騎士達の前に立つ。

 さらに、馬車から金色の刺繍が施された白いローブを着た老人がゆっくりと青年の隣に歩いてくる。

 老人が深く大きな声で城門に向かって言葉を述べる。

「光の塔、代表者として、ルミナ・エリシア王妃、およびティオ・エリシアの身柄を拘束する。同時に城の所有権と王位継承権を剥奪する。」

 金の鎧を着た青年を先頭に、騎士達が足並み揃えて城へと進軍する。

 城の守備兵が困惑する横を、城の中庭に集合した『銀の騎士団』とルミナが迎える。

「理由の無い、戯言ですね。あなた方の行いは、ただの侵略行為です。今すぐ兵を引きなさい。」

 ルミナは毅然とした声で答えた。


 「サイローズや、ここを制圧しなさい。」

老人が隣の青年に指示をだす。

 「はい。お祖父様。」

剣を抜いた黄金の騎士に合わせて、赤茶の騎士達も一斉に剣を構え、突撃を開始した。

 『銀の騎士団』も応戦に入る。ルミナは騎士達に支援魔法をかけると、空に浮かび上がり、詠唱を行っている、神官職の老人に向かって魔法弾を撃つ。

 サイローズが剣で叩き切り、ルミナに向かって咆える。

「世界の王は、太陽神ゲルの意思を受け継ぐ僕達がなるべきなんだ!」

 サイローズは剣を振りぬき、光の刃をルミナに飛ばした。

「闇を作った神の下僕が、支配する世界じゃないんだ!」

 

 幼さがまだ残る、黄金の騎士をルミナは悲しく見つめた。

「16の少年に過ちを犯させるなんて…」


 騎士達の戦闘は均衡していた。

 ルミナは戦闘の中、悠然とサイローズに語る。

「あなたは、この世界をその目で見ましたか?あなたの正義は、この世界の為にあるのですか?」

 襲い掛かるルゲルの騎士を剣で捌き、魔法で突き飛ばす。

「あなたは、この世界の王になって何をするつもりなのですか?」

 ルミナがサイローズの目前まで近づき、後ろの神官を見る。

「マルザード・エルオ司祭、自己の利益のために、孫を人殺しの道具にするなんて、許すことは出来ません。光の塔を、見て見ぬふりをしてきた私にも、罪はあるのでしょう。」

 剣を地面に突きつけるルミナ。

「この国を背負う者として、私は決断します。」

 中庭全ての地面から光が溢れ出す。眩しさで全ての者の動きが止まった。

「あなた達を拘束します。」

 ルミナが言い終わると、中庭にいるルゲルの者達は、光の錠に囚われて動けなくなっていた。

「くそ、この程度のもの、引き千切ってやる。」

 サイローズが力いっぱい抵抗するが、外すことが出来なかった。

 崩れるように腰を落とす騎士達と同じように、司祭と、その孫も膝を着いた。


 ルミナは北西に闇の力が開くのを感じ取った。

 そこは開かれた壁の門の方角だった。

「マルザード! 貴方は魔族に取り込まれたのですか! なんて事を…」

 マルザードは細く笑みを浮かべて小さく笑っていた。

「取り込まれるだと? はっ! そんなゴミどもと同じに、しないでくれないか。わしが魔族を利用しているんだよ。」

「そんな…」

 サイローズは驚愕と落胆を受け、握っていた剣を落とした。

 城門の外で大きな音がしたのを聞いたルミナは、同時に魔族の気配を感じ、瞬時に門に跳んだ。



 城の外。

 一台の馬車が街道から城前の広場に入ってきた。なおを乗せた馬車だった。

「モカ。もうすぐ城だよ。」

 私は馬車の窓から少し顔を出して異様な雰囲気の広場を見渡した。

 沢山の荷馬車の中に豪華な馬車が一台見えた。

  突然、馬車が傾く。馬の悲鳴と共に馬車が横転した。

「いったぁあ! モカ、大丈夫?」

 とっさに身を屈めて椅子にしがみついたので軽い打撲程度で私は済んでいた。

「はいです。」

 体自体が柔らかいのか、モカは傷一つ無かった。


 私は、上になっている扉から、注意深く見渡し、ゆっくりと這い出た。

 モカも同時に馬車から飛び出して、私達は倒れた馬車から飛び降りた。

 騎手が飛ばされて、倒れているのが見えたので、私は急いで駆けつける。

 うつ伏せに倒れているその場所は赤く染まっていた。

「そんな…」

 すでに息絶えているのが、私にも判った。

 背後に気配を感じて振り向くと灰色の肌をした黒髪の男が立っていた。

「何故、姫が居ない。お前は…」

 男の目線が私の肩の上にいるモカに移った。

「ああ、白の王なのか? なるほど。これは面白い。」

 視線が私に戻って、考え込む仕草をしている。

「お前は姫の居場所を知っているのか? いや、答えるつもりは無いか。」

 私は距離を取ろうと後ずさりをする。

「まあいい。」

 男が瞬時に飛び込み、短剣を胸に向かって突き出した。

 私は、反射的に大きく横に転がり、勢いつけて城へと走った。

 モカも私の側を離れずに飛んでいる。


 背後の男はその場から動かなかった。 


 門から閃光が見えた瞬間、背後で剣の打ち合う音がした。

 振り向くと長い銀色の髪をなびかせた女騎士が男と交戦していた。

「なおさん。そこで、待っていてください。」

 立ち止まり、私は聞き覚えのある声に少し安堵した。

「はい。」

 モカが私の肩に止まって、同じようにルミナさんを見ていた。


 ルミナの体は白く輝きながら力強い剣技で打ち込んでいる。

 灰色の男は短剣と体捌きでかわしていく。

「何を焦っている。」

 男の言葉に耳を貸さずにルミナは剣を振り続ける。

「魔界の門を開けたのは、あなたですか?」

「さぁな。」

 男は後方に飛び、重力波をルミナにぶつけた。

 壁となったその波を、ルミナは魔力を込めた剣で切り壊す。

「面白い。あの娘は使えそうだ。」

 男が不気味に微笑む。

「お前の娘を殺してみようかと思っていたのだが、あれでも良さそうだな。」

 ルミナは光の弾を男に乱射しながら、なおの目前に移動する。

「そんなことは、させません。」

 男の投げる短剣を魔法壁で防いだ。

「もう、終わってるぞ。」

 ルミナは振り向むくと、息も出来なく、言葉を詰まらせた。


 私は声を上げることも出来なかった。

 背中に強い衝撃を感じた時には、私の胸から1本の槍が突き出ているのが見えた。

「るみなさん……」

(ごめんモカ。ごめんね…お祖母ちゃん…ティオ…みんな、ごめんね…)

 痛みはもう感じられなかった。ただ悔しくて、涙が出ていた。

 ルミナさんが倒れる私を抱きしめてくれた。

(あぁ、あったかい…)

 涙でルミナさんの顔も、モカも見る事が出来なかった。

「モカ…ごめんね。」

 モカが頬に擦り寄っているのを感じたので、私は手のひらでそっと撫でてあげた。

「なお、イヤです。僕もっと、なおといたいです。」


「なお! なお! いやぁあー」

 私はルミナさんの涙を肌で感じながら、真っ暗な無音の世界へとおちていった。

(…死にたくないよ…)


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