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スイーツ(笑)

作者: 水星虫

今日の私はとってもチョコレート、どのくらいチョコレートかっていうと頭のてっぺんのそのまたてっぺんの髪の毛の先から足のつま先の爪までカカオ百パーセントってくらいカカオ。いつもとは一味違う、いつもの私はホワイトチョコレートレベルだからカカオマスが足りなくてそれはやっぱり偽物かなって思うわけですよ。


大好きな(しょう)君に一番のチョコレートを渡すにはどうしたらいいかなって考えて、考えて、考えていたらチョコレートになった私はたぶん世界で一番幸せ。翔君っていうのは同じ高校のクラスメイトで二年生なのにサッカー部のエースで次期部長候補。さわやかできらきらしていて友達も多くて、そんな彼の笑顔を見るたびにもう胸の中のバターが溶けてどうにかなっちゃいそうですよね、へへへ。


翔君の名字は佐藤っていうんだけど、今の私は砂糖まみれのチョコレートだから相性いいよねサトウだけに。彼に私の全部を飲み込んでもらって彼の口と食道と胃と小腸と大腸を独占して彼の毛細血管とかリンパ管とかそういうのひっくるめて私まみれにして、一生彼の中で生きていくのもいい。

でも、彼を私の中に閉じ込めてチョコレート漬けにして外側を全部コーティングしてあげて飾るのも捨てがたい。


あ、でもでも一緒に寝るのはまだ早いよね。きちんと段階を踏んで四回くらいデートしてからでなきゃ。一回目は水族館でイルカショーとアシカショーを見て、二回目は遊園地をまわって最後は観覧車でしめるの。三回目に公園で手をつないでベンチでたくさんおしゃべりをして、四回目でいよいよ彼の家に突入。


子供はまだ早いけどいつかは絶対欲しいって言うか、私と翔君の愛の結晶だし一人目はココアって名前で二人目はカカオって名前がいいかなチョコレート的に。そんな身体で子供ができるのって聞かれるかもしれないけどテンパリングされてバルトまみれだからモーマンタイ。溶けやすいから将来住む家はロシアとか北欧とか寒い地域にして、そしたらほら翔君のことをしつこく追い回してるストーカー共ともおさらばできるし一石二鳥だよね。


翔君がみんなにやさしくて誰にでもそよ風みたいな笑顔を振りまくから、好かれてると思い込んでるあばずれどもが集まってきてコンダラでひきつぶしたくなっちゃったけどもう安心。今日やっと私は翔君に食べてもらってそして結ばれるんだ。





「お、さすが翔の机だな。見てみろよーチョコ大量だぜ」


「うらやましいっす、先輩一個くらいつまみぐいしても大丈夫っすよね?おれ今年もゼロなんす。」


「何個か()っていってもばれねぇよ、とりあえずこれから開けるか」


ばりっとハカい音が鳴る。


いたいいたいいたいいたい、翔君のためにきれいに飾ったラッピングが汚らしい手でびりびりと破られていく。やめてやめてやめてやめて、そんなに無理やり破らないで。男たちはごつごつした手で私の包装をはいでいく、文字通り手も足も出ない私。


やっと結ばれるところだったのに。素敵な記念日になるはずだったのに、なんでこうなるの?

そんな私の気持ちを余所に男はざらついた舌で私を蹂躙していく。




「うまそうじゃん、いただきまーす」


ばきんと割れる音とともに私の世界は暗転した。


―ごめんね翔君、私汚されちゃった。






どのくらいたっただろう、私はそのあと体育から戻ってきた翔君に助けられた。


翔君が、他の男の唾液まみれになった私を食べてくれた時は油がでちゃうくらいうれしくて死んじゃうかと思った。やっぱり翔君は私の王子様だ。


―いつも笑ってくれてありがとう

―いつも優しくしてくれてありがとう


翔君、わたしは翔君とずっと一緒に生きていくよ。








以前知り合いから、「バレンタイン企画ならチョコレートを主人公にやってみてよ、普通のいちゃらぶのやつじゃなくてさ」と無茶ぶりをされて出来あがったのがこちらです。


チョコレートっていったらスイーツだよなぁという陳腐な発想と携帯小説って昔あったよねって懐かしさから書いてみました。



最後まで読んだあなたはとっても不運。つぎからはもっと普通のバレンタインものが書きたい(笑)

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― 新着の感想 ―
[良い点]  一途な思い、素敵です。 [一言]  佐藤と砂糖をかけるのはうまいと思いました。
2016/02/09 19:10 退会済み
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