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Crazy sexy wild⑨

『うーん、おかしいね。合法物だから、もうとっくの昔に効果が切れてるものと思ってたけど。意外と掘り出し物だったのかな。ははは』


『いやいや、笑えないよ!あの麻美の俺への執着は異常すぎる。頼むから、どうすればいいのか教えてくれよ』


 恵ちゃんの家から帰った俺は、スティーブに電話をかけていた。麻美を元に戻す方法を聞くためだ。


『それはもう言ったじゃないか。簡単なことさ。ラムネを食べさせるか、効果が切れるのを待つかだよ』


『本当にそれ以外にはないのかよ!このままじゃ麻美は......』


 今まで築いてきた物を失うことになる。

 たかが、俺への愛情を持ってしまったばっかりに。


『わかったよ。そこまで言うなら調べてあげてもいいよ。麻美ちゃんには、海の時にお世話になったからね』


『本当か!さすがはスティーブだ!』


『ただ......』


『ただ、なんだよ!』


『期待しないでくれ。本当にあのゼリーは、例のガムやラムネほど強いお菓子ではないんだ。合法だからね。まあ合法と言ってもまだ法律で禁止されていないだけで、じきに規制はかかるはずだけどね。それでも、あのゼリーの効果は君が思ってるほど強くない』


『わかったよ。とりあえず探してみてくれ』


 スティーブは、OKと言って電話を切った。

 あのゼリーの効果は弱いだって?ウソだ!絶対にウソだ!麻美と恵ちゃんのケンカを見ればわかる。麻美はケンカをしたとしても、決して手をだすような子じゃない。


 やはりゼリーの効果としか思えない。


 麻美があのゼリーを食べてから、もう二十時間は経ってる。いまだに効果が続いているという事は、相当な薬物だったという事だ。スティーブはやたらと合法だから弱いってことにこだわってるけど、法律で規制されてない分まだ本当の強さはわからないはずだ


 絶対にそうだ。


 ベッドに寝転びながらさっき起こったばかりの出来事を思い出す。女の子二人が俺を奪い合う。麻美がゼリーを食べていなければ、夢のような光景だったと思う。いや、恵ちゃんはゼリーを食べてないのに、なんであんなに麻美に突っかかったんだろう。


 もしかして......


 いやいや、それはないでしょ。中学生の俺なら、一生関わる事はなかったであろう美少女が、こんなシスコン売人小僧なんて好きになるはずがない。でも、けっこう仲がいい方だとは思うんだけどな。まさか、な。


『ピンポーン』


 俺の妄想を止めるように、インターホンがなった。


「誰だよ。ったく、いいところだったのに」


 渋々、玄関へ向かう。

 誰だろう。もうすぐ夜の八時だってのに。


 俺はチェーンをかけたままカギを開けた。

 ......っと、ドアを開ける前にのぞき窓からインターホンを鳴らした人物を見る。


「あ、麻美」


 思わず声を出してしまった。

 ドアを挟んだ外には、恵ちゃんの顔を力一杯平手打ちした麻美が笑顔で立っていたのだ。


 チェーンを外さずに、ドアを開ける。


「クリスお兄ちゃん。麻美だニャ。早く開けてニャ」


 さっきの事などまるでなにもなかったかのように元気な声で麻美はそう言った。


 なにか嫌な予感がする。


「開けない。今までどこに行ってたんだよ。ケンカするのは悪い事じゃないとは思うけど、あんなことで手を出すのは間違ってるだろ。恵ちゃんに謝ってこいよ」


 ちょっとキツいことを言ってしまっただろうか。

 手を出しのはゼリーのせいであって、麻美の意思ではないのだろうし。


「まだ......」


 麻美はなにか呟いた。

 声が小さくて聞こえない。


「なんだよ。なにか言いたいことがあるのか?恵ちゃんに謝らないんだったら、ドアは開けないしお前とも遊ばないぞ。三人で仲良くすればいいじゃないか」


「まだあの女の子こと言ってるのっ?クリスお兄ちゃんはボクのものなんだから!あんな女は関係ない!」


 麻美は涙を流しながら凄い気迫で叫び始めた。


「おいおい、隣の人も帰ってきてるだろうし。あんまり叫ぶなよ。話は聞いてあげるから」


「やだやだやだやだ!私がクリスお兄ちゃんのたった一人の彼女になるんだから!絶対に諦めないし、そもそももうクリスお兄ちゃんはボクと付き合うしかないんだよ!」


「なんでだよ。どう考えればそうなるんだよ。落ち着いてくれ、麻美」


「落ち着いてって?無理に決まってるじゃない!ボクのクリスお兄ちゃんがあんなクソババアに騙されてるのを見てられないよ!それにね。ボクとクリスお兄ちゃんが一生一緒に居られる方法を思いついたの」


 一生一緒に居られる方法?

 急に涙も止まり、微笑む麻美。


 次の瞬間。


 シュっと言う音と共に、玄関のドアノブを持っていた俺の右手に激痛が走った。


「痛って!何すんだよ!クソ!」


 麻美は俺の手に千枚通しを突き立てた。

 ちょうど手のひらを貫通して取っての部分で止まっている。

 痛みに耐えられず握っていたドアノブを離す。

 引っ込めた俺の手には、まだ千枚通しが突き刺ささったままだ。


「......ぅあ。クソ!」


 一思いに千枚通しを抜こうと心みるが、一センチ抜くたびに激痛が俺を襲う。


「キャハハハハハハハハハハハ」


 ドアの外から麻美の笑い声が聞こえた。


「一緒に死のうよ。ねえ、いいでしょ、クリスお兄ちゃん。そうすれば、一生二人だけで邪魔されることはないよ!キャハハハハハハハハ」


 狂気を感じた。麻美の俺に対する愛情が、なにかおかしな形になってきている。一緒に死ぬだって?笑いながら話す内容じゃないだろ!


 麻美の笑い声がだんだん遠くなっていく。


 俺はその声に鳥肌を立てながら、必死に恐怖を抑えたーー






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