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Crazy sexy wild④

 昼飯は、恵ちゃん特製の弁当だった。

 みんなの分まで作ってきたと言うのだから、それはそれは気の利く委員長だ。

 いや嫁に欲しい。

 結婚して欲しい。


 それにしても、恵ちゃん以外の連中は俺も含め誰一人として昼飯を持って来なかった。

 海の家があるだろうと油断していたのだ。

 プライベートビーチだと聞いていたのに。

 しかし、麻美が持ってこなかったのはなぜだ。

 あいつは海の家がないことぐらい知っていたはずだ!


 こうして、昼飯を食べ終えた俺達は、デザートにスイカ割りをする事になった。


「じゃあまずはクリスお兄ちゃんからなのニャ!」


「俺?いや、こう言うのニガテなんだよなー」


 と言いつつも、久しぶりのスイカ割りにワクワクしていた。

 流木にちょうどいい木の棒があったので、それを手にする。

 目隠しをされて、グルグルと回された。

 もうどこに立っているのかわからない。

 フラフラと進む。


「クリス君、これはチャンスだ!事故をよそおって女の子に抱きつくんだ!」


 声のする方向に向かって走る。

 そして持っていた木の棒を振り回した。


「痛い!ちょっと当たってるよ!クリス君それは僕だ。君のおじさんのスティーブだよ!」


「わかっとるわい!」


「あはは、クリス君失格だよー。次は私かな?」


 恵ちゃんが名乗りを上げた。

 俺と同じで目隠しをしてグルグル回される。


「ほんとにどこにスイカがあるのかわからないんだね。クリス君、教えてくれないかな?」


(恵ちゃん!こっち!こっち向いてちょっとしゃがんでみて!)


 と心の中で思っていたが、口には出すまい。


「そのまままっすぐだニャ!」


 麻美に先を越された。

 チクショウ!


「ここ、かな? いくよー!えいっ!」


 恵ちゃんの振り下ろした棒が、見事にスイカをとらえた。

 二つに割れたスイカからは、ジューシーな果肉が姿を現す。


「割れた、かな? あ!割れてる!やったー!」


 目隠しを外した恵ちゃんは、嬉しそうに俺の手をとってピョンピョン跳ねながら喜んでいた。

 かく言う俺も、目の前で”たゆんたゆん”と揺れる恵ちゃんの胸に歓喜した。


 海サイコー!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 スイカ割りが終わり、それぞれが自由に海で泳ぎ出す。

 スティーブは相変わらず浮き輪で揺れているし、麻美はセナに持って帰る虹色の貝殻を探している。


 俺と恵ちゃんは、腰までの深さの場所で泳ぐ練習をしていた。

 そう、俺は泳げない。

 カナヅチなのだ。


「クリス君、まずは顔を付けるところから始めようか」


「顔かあ。ちょっと怖いんだよな。息もできないし。それに塩水だから目も開けられないよな」


「あはは、クリス君ってけっこう子供みたいなところあるんだね。これをつければ大丈夫だよ」


 恵ちゃんから水中メガネを渡された。


「こ、こうかな。」


「そうそう、鼻もメガネのなかに入れるんだよ」


 ブサイクなんだろうなあ。

 今の俺は。


「私も付けるね」


「え?恵ちゃんも?いやいやそれはダメだよ」


 イメージが!

 恵ちゃんのイメージが!


「そうかな?でも付けないと海の中は見えないし。うん、付けるね」


 イメージは崩れなかった。

 いや、これはこれでアリか?


「じゃあ、せーのっで潜るからね。せーのっ!」


 バシャン!


 思いっきり息を吸い込み、海の中に顔を突っ込んだ。


(うわー!すげー!)


 声には出せないが、感動した。


 海の中は、色彩豊かな小魚でいっぱいだった。

 すごい透明度だ。良く見える。

 岩場の近くだからだろうか。

 俺達に気づいて慌てて岩陰に隠れる小魚の群れも、少しするとまた顔を出し優雅に泳ぎ始める。

 麻美のおじさんが、プライベートビーチとしてここを所有していた理由がわかった気がした。


「プハッ」


 息が苦しくなり、水面から顔を出した。


「クリス君すごいじゃない!けっこう長い時間潜れてたよ」


「いや、ここの魚達に見とれてて水が怖いの忘れてたよ!」


「ホントに海の中ってキレイだね!砂浜じゃないから、濁ってないし」


「うんうん。海の中にもこんなにいろんな色があるなんて思わなかった!」


 俺達はそれから何度も何度も潜り、魚や海底の景色を楽しんだ。


(うわー、セナにも見せてやりたいな)


 トントン、と水の中で肩を叩かれる。

 見ると、恵ちゃんが虹色の貝殻を持って嬉しそうに笑っていた。

 麻美が言ってた貝殻だ。


 水上に顔をだすと、もう空はオレンジ色になっていた。

 恵ちゃんは水中メガネを外して、虹色の貝殻を夕日にかざす。


「......きれい」


 ずっと、その光景を見ていたかった。

 虹色の貝殻は確かにきれいだが、夕日に照らされて濡れた髪をかき上げる恵ちゃんは、もっときれいだったからだ。

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