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Crazy sexy wild②

『ひ、久しぶり!終業式以来だけど、元気だった?』


『あ!クリス君?久しぶりだね。私は元気だったよ。電話で話すのって初めてだね』


 ひー!緊張するぅ。

 確かに、連絡先は教えてもらったものの恵ちゃんと電話で話すのは初めてだ。


『そ、そうだね。ははは。それでさあ、あの、八月の十日って暇かな?』


『十日って言うと明後日かな?私は何も予定はないけど......急にどうしたの?』


 やった!

 恵ちゃんは暇らしい!


『いや、夏だからさー。海にでも行かないかと思って......』


『海かぁ。うん、いいね!ちょうど夏休みの宿題も終わりそうだし。でも、二人で行くの?』


 早っ!もう宿題終わるのか!

 さ、さすがは委員長。

 しかし二人では嫌なのかな......


『それがさあ。妹の友達と、知り合いのイカれたおっさんも行くんだけど......いいかな?』


 何度考えても意味のわからない組み合わせだ。


『すごくバラエティ豊かだね。うん、おもしろそう!行ってみたいな』


 よおっしゃぁぁぁあああぁぉぁ!


『じゃあ、十日の九時に駅に集合で!楽しみにしてるよ!』


『あはは、クリス君それは私のセリフじゃない?うん、楽しみ!じゃあ、また十日に』


 電話は切れた。

 まだ余韻が残っている。

 恵ちゃん、楽しみ、ってさ。

 俺と海に行くのが、楽しみ、ってさ。

 うっひょーい!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 いつもなら全く楽しくないはずの配達も、スキップをする程テンションの上がった俺にとっては、散歩をしているようだ。

 配達先の繁華街の近くまで来た時のことだった。


「クリス君だっけ?」


 急に呼び止められた。

 振り向くとそこには、あのラムネグループのフライがいた。


「うわ!なんですか?あなたとはもう関係ないはずですが!」


 一歩足を引いて身構える。


「そんなに警戒することはないだろ?僕は君と仲良くなりたいのさ」


「仲良く?なれるわけないでしょ!先輩をあんな姿にした人と!」


 いきなり何を言い出すんだこのオシャレハット男は。


「まあ、落ち着いてくれ。僕はあの一件から、君のことを買ってるんだよ。同業者として、いいお付き合いをしていきたいのさ」


「ど、同業者として、ですか?」


 んー、それは悪くないかもしれない。

 あんなことになったのも、元はと言えば俺やエレナ先輩のせいでもある。

 本当はこの人はいい人なんじゃないのだろうか。


「そう、同業者として薬物に溺れる廃人をいっぱい作ろうよ!ってことさ!ははは」


 前言撤回。

 こいつは悪人だ。

 それにスティーブに似た話し方もイライラする。


「やめときます!僕に関わらないでください。じゃ、失礼します」


 そう言ってフライとの会話を強制終了し、足早に立ち去ろうとした。


「クリス君、はい!」


「まだ何か話があるん......!」


 振り向いた俺の胸元に、ヒョイっと小分けにされた小さな袋を投げられた。

 急なことにアタフタしてその小さな袋を何度か手でバウンドさせたが、どうにか落とさずにすんだ。

 フー。しかし、


「こ、これは......」


「そう、ラムネだよ」


 俺が受け取ったのは、赤いラムネ菓子だった。

 小さい袋の中に小分けにされて、五個入っていた。


「いらないですよ!」


「まあまあそう言わずに貰ってよ。お近づきの印ってことで!ライバルの薬屋がどんなお菓子を売ってるのか気にならないのかい?」


「全く気になりません!むしろこんなの迷惑でしかない!」


「厳しいなー。まあ、試してみたくなったら一粒だけ食べてみるといい。五個渡したけど、絶対に一気に食べてはいけないよ。君の妹さんみたいに、目が覚めなくなるからね。ははは」


「ちょ、なんで妹のことを知ってるんですか!」


 フライは俺の質問に、さあね、とだけ言って歩いて行ってしまった。


 後を追ってラムネ菓子を突き返す気力を失う。

 薬屋の情報網は凄すぎる。

 俺の素性はどこまでバレているのだろうか。

 改めて裏の仕事をしていることを実感した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 八月十日


 午前九時の駅前広場。


 夏休みという事もあってか、すでに待ち合わせと思われる人々で賑わっている。

 こんなに人が多いと待ち人を探すのに苦労するな、と思っていたがそんな心配は無用だった。


「おーい!クリス君遅いじゃないか!一分の遅刻だよ!」


 ド派手な緑色のアロハシャツに黄色いハーフパンツ。

 ビーチサンダルに大きな浮き輪まで装備したドレッド頭のおっさんが手を上げて俺を呼んだ。

 ウケ狙いかと思うほどのデカいサングラスが黒光りしている。


 周りの人達から、クスクスと失笑されてることに気づいていないらしい。

 うわ、知り合いと思われたくない。


「あ、ああ」


 と控えめに手を上げて答えた。

 すると、おっさんの背後からヒョコっと麻美が顔を出した。


「遅いニャ!ボクなんか一時間も前から待ってたのニャ!」


 薄い色のショートパンツと白いアロハシャツをみぞおちのあたりで結び、ヘソを出している。

 大人になったな、麻美よ。

 しかし、こいつもデカいサングラスをしていた。


 流行ってんの?俺が知らないだけ?


「ごめんごめん!ってお前らが早すぎるんだよ!」


「そんなことないのニャ!クリスお兄ちゃんは昔から時間にルーズなんだから」


 麻美はムスッとしている。


「おっと、お二人さんそんな仲なのかい?僕はお邪魔だったかな?」


 サングラスをかけていても、このおっさんがニヤニヤしているのが良くわかった。


「そんなことないですニャ!スティーブさんは久しぶりに日本に帰ってきたんだから、一緒に海を楽しもうですニャ!」


 久しぶりに日本に帰ってきた?

 なんのことだ。


「そう言ってもらえるとありがたいねー。泳ぎがいがあるってものだよ。ねえクリス君!」


 麻美に聞かれないよう、スティーブに小声で話す。


(おいおい、なんだよその設定は!)


(仕方ないだろうクリス君。バイト先のオーナーって言えるわけがないじゃないか。外国から里帰り中の、君の遠い親戚という事にしておいたからヨロシクね)


(ヨロシクね、じゃないよ!そもそもスティーブって名前から怪しいだろ!)


「ちょっと!なにをコソコソ話してるんだニャ!仲間ハズレは良くないニャ!」


「ごめんごめん!コソコソなんてしてないよ!久しぶりにおじさんに会ったから嬉しくてつい!」


「そうさ。クリス君に会うのは二十年ぶりだからね。そりゃ積もる話もあるんだよ」


 おい!設定が崩壊してるぞ!

 二十年前に俺は生まれてないわ!

 このおっさんチョコレート食べてきただろ!


「いやいやこの人は、二十年ぶりぐらいに会ったような懐かしさだね、って言ってるんだよ!ちょっとだけお酒を飲んだみたいで、例えがわかりずらいんだよね。まったくおじさんはオチャメだなー。ははは」


「ふーん、変なの!まあ、いいか!それよりあと一人はまだかニャ?」


 フー。

 今日一日スティーブのフォローをすると思うと、気が滅入るな。

 朝からそんなことを考えながら、はしゃいでいる後輩とおっさんを眺めていた。


「クリス君お待たせ!電車が遅れちゃって。あ!今日はお世話になります。クリス君のクラスメイトで、薬野恵と申します。楽しい海水浴にしましょう!よろしくお願いします!」


 礼儀正しい挨拶と共に、本日の主役(俺にとって)の恵ちゃんが登場した。

 今まで学校でしか会ったことがなかったので、私服を見るのは初めてだ。


 白いノースリーブのワンピースにサンダル。

 大きめの麦わら帽子と、それに合わせたような天然素材のかわいいバッグを両手で持っている。


 か、可愛い......

 天使が舞い降りてきたみたいだ。


 恵ちゃんの周りだけ、なにかフワッとしたオーラのようなものが出ている気がする。

 それにモデルのようなナイスバディが、白いワンピースによって際立っており、よく見ると周りの男子の熱い視線が、恵ちゃんに注がれている。

 少し優越感を感じた。


「ボクは麻美です。よろしくなのニャー!」


「僕はスティーブ。クリス君の遠い親戚で外国から里帰り中なんだよね。君が噂の委員長かい?クリス君はいつもキミの話しかしないんだ。困ったもんだよね。ヨロシクね」


 おいおいおっさん!

 あんたの暴走は止められないよ!

 しかし、恵ちゃんの反応が気になる。


「あなたがセナちゃんのお友達ね。よろしくー。スティーブさんでいいんですよね?遠い所からわざわざご苦労様です。いや、おかえりなさいって言ったほうがいいんですかね?今日は思いっきり楽しみましょう!」


 俺の事には触れないんだ。

 そ、そうだよね。

 一緒に海に行くクラスメイトをおじさんに紹介するのは、自然なことだもんな。

 そう自分に言い聞かせる......


「それじゃ、海に出発ニャー!」


「「おー!」」


 俺を置いて他の三人は駅に向かい歩きだした。


「ちょ、俺を置いていくなよー!待ってくれー!」


 この時の俺は、まだプライベートビーチであんなことが起こるとは思いもしなかった......

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