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Light dance①

 「はる!こっちだよ」

 「もう待ってー早いよー」


月明かりが心地よい。

風もなく、しかし揺れる柔らかい草木。

遠くまで、どこまでも遠くまで続く草原。


ーーーー思わず走り回って、全身に広がるフワフワした、んー、ワクワクする気持ち、違うな、とにかく、言葉では言い表せない『体が浮き上がるような高揚感』を発散する。後ろからは愛しい『はる』が、追いかけてきてくれている。


これが幸せと言うものなのかもしれない。


ペースを緩め振り向く。追いついたはるに、ばっ、と勢いよく抱きつかれ、その勢いで体勢を崩したオレは柔らかい草の上に倒れこんだ。


 「つかまえたっ」


と、うれしそうに笑うはるにドキドキした。

そのままの体勢で、はるはオレに軽くキスをした。


ーーオレたちは草の上に寄り添いながら座った。はるの肌の感覚が優しく伝わる。温かい。はるは、オレの肩に頭を寄せた。はるの髪から、ふんわりとシャンプーのいい香りがした。


 「私たち、これからもこうしていられるよね」


 「あたりまえだろ。心配性だなあ、はるわ」


 「だってー、ゆう君もてるんだもん。心配だよぉ」


 「大丈夫さ。オレははるだけしか見てないよ」


 「あー、言ったからなー。約束して」


 はるは、小指をオレの前にだした。


 「ああ、約束するよ」


 オレははるの小指に自分の小指を絡め、はるのおでこに軽くキスをした。


ーーーーゆっくりとした、しかし気分は高揚した不思議な時間を二人で共有した。ふと気づくと、月明かりはオレたちだけを照らしていた。周りは暗く、まるで寄り添ったオレたちを物語の主人公に仕立てあげたようだった。


地面から無数の小さな光の粒が、まるで月の引力に引っ張られるように登り始める。オレたちも、その月の膨大な力に体を引っ張られる感覚を覚える。しかしそれはとても心地よく、幻想的で子守唄を聞いているようだった。オレたちは二人仲良くその子守唄に身を任せた。









ーーーー『事件現場より、県警本部へ無線の応答を願います。○市のラブホテルにて本日昼頃、宿泊の客がフロントから呼びだしても返事が無いと通報アリ。現場に駆けつけたところ、若い男女二人がベッドの横で地面に座ったまま絶命。死因は二人共、額から上の後頭部だけがまるで中から爆発したかのようになっており、即死。後頭部の大部分の内容物が天井に張り付いていることから、上方向に集中して力が加わったものと思われます。男の方は、萩原優一、22歳、大学生。女は、青井はる20歳、同じく大学生です。部屋の中を走り回って暴れたような痕跡があることから、なんらかのトラブルがあったと思われます。死因から、金銭狙いの殺人、またはケンカの延長線上の突発的なものかと思われましたが、特定が非常に困難であります。ドアは内側からチェーンがかかっており、出入りは不可能。武器も周辺には見当たりません。また死体の顔が二人とも幸せそうに微笑んだまま死後硬直しており、事件の異常性が感じられます。至急、検死と応援を願います』

 

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