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成り行き超兵器の無駄に贅沢な憂鬱  作者: ポンポコ狸
第一章 知る事から始めよう!
6/10

第五話 最悪な状況……

 

 

 

 「……はぁ、やっちゃったよ」


 ミヤビは屋台らしき出店で購入した果物ジュースらしき飲み物を飲みながら、街道から少し離れた岩の上で無駄に晴れ渡っている空を眺めながら黄昏ている。

 ミヤビの服装は、リクルートスーツ姿から街で見かけ旅商人風の薄茶色の地味目な外套を纏った姿に変っていた。


 「あんのクソ親父、人が良さそうな顔して安価で買い叩きやがって……。 旅セット一式買ったら、手持ちが無くなったぞ」


 現地通貨を入れていた空の小袋を逆さに振りながら、ミヤビは木像を買取った家具屋の店主に対して愚痴を漏らす。

 (ああ、クソ。 売値相場を余り理解していないからって、店主の言い値で売ったのは失敗だったな。 煽てられて調子に乗ったのも拙かったな……)

 まぁそれ故、ミヤビが服等を扱う雑貨屋で買えたのは作法衣・外套・足袋・荷袋等の最低限の品々だけである。

 会計時に合計金額を聴いた瞬間、家具屋の親父が高笑いしている姿がミヤビの脳裏に浮かんだ。

 店を出る時、嫌に朗らかな笑みで丁寧に見送ったのは確実に帰ったのを確認したかったのだろう。

 コレが俗に言う、手痛い勉強料と言う物だろうなとミヤビは思うと共に、買取交渉とも言えない交渉に後悔を覚え次は失敗しないと決意を固める。

 因みに、その決意を固めたのが雑貨屋のカウンター前で、店員さんに変な目で見られたのはご愛嬌だろうか?

 そんなコンであった事を思い出しつつ、ミヤビはコレからの事に考えを巡らせる。 

 

 「取り敢えず必要な物は揃ったから、目的の都市に行くか。 ある程度の事はこの街の世間話で推測出来たけど、現地でも情報を集めとかないとな」


 ミヤビは岩から立ち上がり、街道沿いに目的の都市へと歩いて行く。

 その道中、街で得られた情報を元に現在の世情を考査する。

 (五年程前に国交を断ち鎖国していたこの国に、外国から開国するよう要求が武力を背景に現幕府に行われ、今現在その要求を飲んで開国するか国内で二派に分かれて論争が起きる。 当初は鎖国を維持すべきと言う幕府側が有利であったが、反幕府気質であった地方勢力が手を結んだ事を契機に情勢が一転、ついに武力衝突にまで発展すると。 ココまでは殆ど、日本の幕末と同じ流れだな。 でも、ここから史実の流れと差が出てくる。 反乱……いや、維新軍か? まぁ維新軍が首都ヤマトに突入して幕府軍と戦闘したのが2日前で、双方に多大な被害が発生し現在は幕府軍が首都に篭城、維新軍が首都近郊の平野部に陣を張ると。 数的には維新軍の方が多いから篭城するって言うのは分からなく無い戦法けど、護るべき首都で一区画丸ごと犠牲にして維新軍を火責めにするって言うのは如何よ? そんな戦法を使って仮に勝てたとしても、戦後の統治に致命的な傷が残るんだけどなぁ。 目先の敵を倒しても叛乱予備軍を増加させるだけって、理解出来ないのか? ああ、理解出来ないから都市戦なんか起こしてるんだな。 開国するかどうかを論争している経緯を考えれば、無駄に国力を落とす要因でしかない武力衝突は避けるべき何だけどな。 はぁ、戦略視点で物を見れる人間が双方の上層部に居ないって言う事態は如何なんよ?)

 ミヤビは稀に論争されていた、日本の幕末で江戸決戦が行われたらどうなっていたのか?と言う、IFの話が現実に成っている現状に重苦しい溜息しか出なかった。

 

 「……事此処に至ると、何らか大きな外的要因でも無いと双方に妥協出来ないんと違うかコレ?」


 ミヤビは考える、首都の一角を焦土にした幕府にしても、都市戦を行った挙句に民衆を多数巻き込んだ維新軍にしても、引き際もしくは降着点を見誤ったとしか言えないだろうと。

 首都を焼く前ならば、民衆を戦火に巻き込まないと言う建前で幕府軍も降伏出来たかも知れない。

 都市戦をする前ならば、民衆の安全と引き換えにと言う建前で維新軍も条件付の降伏を受け入れられたかも知れない。

 だが、事態は進行した……してしまった。 

 

 「……幕府が無条件降伏しない限り、事によっては維新軍による都市殲滅戦と言う展開も無いか?」


 冷や汗が出る様な寒気を感じるミヤビの脳裏に、最悪の事態想定浮かんだ。

 幕府が面子や意地を優先し降伏しなければ、起こりうる事態でもあった。

 首都の一区画を焼かれ首都も戦場であると言う事が知らしめられている以上、首都を逃げ出さない人間は幕府軍の関係者もしくは支援者と見られる可能性が高いからだ。

 そうなると維新軍としては、首都に居る人間を全て敵であると仮定して対処するしかない。

 何せ幕府軍は、首都であっても敵を倒す為ならば焼き討ちをすると証明してしまっているのだ。

 老若男女関係無く首都に居る人間を見逃し放置すれば最悪、維新軍全てを道連れに首都を焼き尽しかねないと判断される。

 

 「拙いな……再戦までの猶予は一週間有るかどうかって所か?」


 幕府軍が篭城戦を取ると言う事は、再戦日時の選択権は維新軍にあると難しい顔でミヤビは考える。

 そうすると維新軍としても無駄な犠牲は出したくない筈なので、首都に居る戦に無関係な民衆の撤退猶予期間と自軍の再編期間、幕府軍が体勢を立て直すであろう期間を考慮すれば猶予は一週間有れば良い所だ。   

 (双方が妥協案を呑んだ和睦が現状では理想なんだろうけど……無理が有るな。 となると、本拠地陥落間際で風前の灯である幕府にはトットト滅んで貰った方が、この国としての傷は浅いと思うんだけどな……)

 最悪の事態を避けるには、幕府が早期に降伏もしくは滅亡するしかないなとミヤビは結論付けた。 

 

 「……軽く情報収集したら、情勢が安定するまで首都からは離れた方が良いな。 下手に居つくと、どんな展開になっても巻き込まれる」


 ミヤビは首都での行動方針を決め、周囲の人々に怪しまれない程度に歩行速度を上げた。 

 




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