表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
成り行き超兵器の無駄に贅沢な憂鬱  作者: ポンポコ狸
第一章 知る事から始めよう!
4/10

第三話 元ではゼロ……。

 

 

 

  「目指す都市は、ココから北東に100kmって所かな?」


 人気の無い山中に降り立ったミヤビは、月明かりに照らされる薄暗い空を見上げる。

 周回軌道に乗り惑星の周囲を数度回った後、ミヤビは分析の結果を基にし都市をピックアップして、視認される恐れがある日中を避け深夜に降下したのだ。

 

 「けどまさか、日本に似た様な国があるとは思わなかったな」


 ミヤビが降り立った場所は大洋に浮かぶ弧状列島、日本列島の面積を数倍に大きくした様な国だ。

 そしてもう一つ、ミヤビがこの国を効果地点に選んだ理由がある。

 

 「それに、丁度言いと言うべきかどうか迷うけど、内乱中と言うのも潜入するには好都合だしな。 でも都市部で大規模叛乱とか、幕末かよ」


 ミヤビが上空から観測した結果、都市部及びその近郊で大規模な戦いが有った形跡が発見されたのだ。 都市部の一部が破壊されたり焼かれたりと、都市を焼き出された住民が集まる難民キャンプらしき集団も都市近郊に確認できていた。 

 そしてその集団の中に紛れ込めば、比較的怪しまれずに都市部に潜入できるだろうと言う思惑もミヤビにはあった。

 それに加えて、現地の常識や生活習慣などが不明な上で聞き込み等の目立つ行動を行わねば成らないなら、非日常的な状況下に置かれている方がまだ誤魔化しが聞くと言う思惑も有る。

 更に好都合な事に、難民化しているのは元は都市部の人間だであり、世情の情報収集と言う観点では地方よりも最新の情報が仕入れられる可能性があった。


 「早足で歩けば、日の出の前には都市近郊まで行けるだろう」


 ミヤビは地表観測を基に作成した地図を展開。

 凡その到達時間を算出し、視界の光量を調節した後歩き出した。

 山中を抜け、街道らしき踏み固められた土道を北東に向けて歩みながら、ミヤビは今後の方策を思案する。

 (まずは現地の服飾品と貨幣を入手する必要があるな。 この服装だと悪目立ちし過ぎる)

 難民キャンプに潜り込もうとしているのに、ミヤビが身に着けているクリーニングし立てのリクルートスーツモドキでは明らかに浮いてしまう。

 (理想は旅の商人かな? 物を売りに立ち寄った所、巻き込まれたと。 コレなら顔見知りが居ない事も、都市部の常識に疎い事も誤魔化せる……と良いな)

 まぁ、リクルートスーツ姿よりはマシだと思うことにした。

 

 「しかし、金策は当てがあるから良いとして、服はどうやって手に入れるかな……まさか盗む訳にも行かないし」 


 ミヤビは金策に一応の解決策を見出しているのだが、服飾品に関しては良い案が無かった。

 最終手段として盗むと言うのもあるが、現地の治安機構の捜査能力も判明していない段階で、盗みと言うのはかなりのリスクを負う。

 (余計なリスクを負うより、先に地方都市で服を購入して都市部に入るか)

 ミヤビは正攻法が一番無難であると判断し、都市への道すがらにある小さな町で服飾品を買い揃える事にした。


 「と成ると、まずは金策だな。 えっと……あったあった。 コレで良いかな?」


 ミヤビは視線を街道から逸らし、周辺の森を見渡す。

 そして直ぐに必要な物を見つけた。


 「ちょっと芯の部分が生木っぽいけな」


 ミヤビは森の中に倒れていた太い木を吟味する。

 倒れている木は太さが40cm位で、水分が残っているのか中心部はまだ濃い色をしていた。

 (端の方を使えばいけるかな?)

 ミヤビは腰に収めているナイフを右手で取り出し、倒木を目標に一息で数度振り抜いた。


 「……やって見るもんだな、本当に出来たよ」


 ミヤビは目を開いて驚きを顕にする。

 何故なら、目の前有った倒木が規則的に切断され、20cm四方の立方体が幾つか出来上がっていたからだ。

 念の為にセンサーで計測し確認を取っても、寸法誤差は万分の一ミリの単位でも無かった。

 (コレは……今なら集積回路のプリント基板級の超微細加工も、手掘りで行けそうだな)

 ミヤビはナイフを持った手を凝視しながら、感嘆の念を抱く。

 

 「まぁ良い、コレならいけるな。 3Dモデルを構築、切削手順を解析……」


 ミヤビは左手で持ち上げた木材を見ながら、右手のナイフを握り直す。

 そして……。


 「切削準備完了……切削開始!」 


 ミヤビは開始の合図と共に、左手に持っていた立方体を頭上に放り投げる。

 木材が上昇限界地点である目線の高さで止まった瞬間、ミヤビのナイフを持った右手が先程以上の速度で幾度も振り抜かれた。

 月明かりが反射でナイフの刀身が煌き、静かな森の中に小さくとも甲高い切削音が連続して響き渡る。


 「……切削終了」


 ミヤビの口から満足げな響きが込められた呟きが漏れる。

 木材はミヤビの左手に戻る頃には立方体から姿を替え、見事な造詣の竜の置物に姿を変えていた。

 (切削の摩擦熱でうろこの部分が少し焦げてるけど、逆に良い味が出てるな)

 ミヤビは竜の意外になまでの良い出来に、感心した。 


 「コレなら、そこそこの値段で買い取って貰えるかな? ああイヤ、デモ……」


 ミヤビは置物の出来は良いと思ったのだが、モデルにした物は大丈夫なのかなと少し心配になる。 

 何故ならモデルにした竜のデータは、列島の西に位置する大陸中央部にある高峰が連なる山脈に生息していた一番大きな個体を上空からスキャンして得た物だからだ。

 (まさか、伝説の何たらって言う落ちは無いよな?)

 少し不安は残るが、ミヤビは取り敢えず置物をアイテムボックスに収納し次の置物製作に取り掛かる。

 (高めに売る事を考えるなら、木箱に入れて置いた方が良いか)

 木材を接着剤不要の組み木に適した形に加工し、それっぽい箱を作る。

 そして序にとクッション材の代わりに、木材を0.0数ミリの厚さでスライスし完成した箱の中に敷き詰めた。

 (後はさっきの竜を入れて蓋を閉めれば……完成)

 ミヤビは満足気に木箱入り竜の置物を完成しさせた。


 「一応予備に、もう2,3個作っておけば良いかな」


 完成した箱をアイテムボックスに戻し、念の為に安く買い叩かれた時用にとミヤビは用心して別の3Dデータを使って切削を再開した。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ