20. ハイハイは危険 4
家に帰ってくると、アサトさんが大泣きするソルテスを必死であやしていた。
『ど、どうしたの?』
『おかえりー。待ってたぞー』
思いっきり安堵した顔を向けてくるアサトさんに戸惑っていると、腕の中にソルテスを放り込まれる。
『うぇ!?』
『たのむぞー』
「ああああぁぁぁあああああ!」
『あーはいはい、泣かないよー、ソルテス。大丈夫だよー』
腕の中でびーびー泣いているソルテスをあやしつつ、アサトさんに説明を視線で求める。
『起きてしばらくは良かったんだけど、ベッドの柵にぶつかって泣いてるから、様子見に行ったら、大泣きされたんだー』
どれ位泣いていたのか分からないが、かなりの時間相手してたんだろう。アサトさんがヘロヘロしている。
『ごめんね、遅くなって』
『大丈夫だぞー』
ソルテスに聞こえないように念話を交わしつつ、ソルテスをあやす。それ程時間が経たないうちに、ソルテスは泣きつかれたのか眠ってしまった。
「ぶぅぅ・・・」
『ふー、ようやく泣き止んだぞ。シルト、凄いなー』
アサトさんの言葉に苦笑して、ソルテスをベッドに戻そうとする。・・・あれ? 離れない。引き離そうとして、ローブをがっしりと掴まれているのに気づく。どうやら、離れたくないみたいだ。
『あちゃー・・・』
『・・・仕方ないね』
ソルテスを抱いたまま、テーブルに着く。アサトさんも向かいの席に座った。
『迷惑かけちゃってごめんね。普段はこんなに泣かないんだけど』
『気にするなー。最初は大人しく寝てたからな。多分俺が怖かったんだろー』
気を遣って言ってくれるアサトさんに、申し訳なくなる。特に、隠そうとして隠しきれていない、疲れきった様子を見せるアサトさんを見てると余計に。
『今日は無理かもしれないけど、今度何かご馳走するね』
何せ、ソルテスがしっかりとローブを握ってるものだから、両手が塞がっている。料理どころか、お茶入れるのもできない。
アサトさんは気にした様子もなく、ヘラリと笑ってくれた。
『ありがとー。楽しみにしてる』
本当に、ごめんね。
翌日、お昼寝中のソルテスをベッドに残して、僕は自分の部屋を片付けていた。本当は昨日の夜のうちに済ましてしまいたかったんだけど、ソルテスが結局放してくれなくて、ずっと抱っこしてたから小さなものの移動しかできなかったんだよね。
自分の部屋にある机やベッドを、魔術を用いて一時的に別の空間にしまう。時空を操る術は魔術にしかないから、使えるようになって凄く色々な作業が楽になった。生前に使えたら、もっと楽だったのにな。
部屋からものを一掃すると、魔術で倉庫からあるものを転送した。
『うん・・・使えそうだね』
出してきたのは、大きな継ぎ接ぎの色鮮やかなベッドカバー。1000年以上前に知り合いからパッチワークを習って作ったもので、使う機会がないから倉庫に放り込んでいたんだよね。風化して傷んでるといったことはないから、使えそうだ。
念のため、魔術を用いて熱湯で洗浄して乾燥し、床に敷く。カバーは意外に大きくて、部屋の半分以上を覆うことができた。
後は、柵だな。この間風呂桶作った余りが作業小屋にあったはず。
木材を魔術で部屋に運び込み、組み立てる。魔術は大気中にある魔力を使う術だから、部屋の中だと一度に使える魔力の量に制限がある。代わりに際限なく使えるし、魔法と違って呪文要らないから、急ぎの作業は魔術で全部仕上げてしまう。
完成した木の柵でカバーの周りを囲む。ソルテスがぶつかっても良いように、床にカバーごと柵を打ちつけた。よし、完成! 見た目はイマイチだけど、これで広いところで遊べるね。
部屋の空いている場所にベッドと机を配置しなおす。・・・ちょっと狭いけど、使えないことはないかな。
部屋の様子に満足し、僕はソルテスのおもちゃをいくつか柵の内側に置く。
あ、時間あるから、お昼寝用に簡易ベビーベッドも作ろう。ソルテスが起きたときが楽しみだな。
その後、お昼寝から覚めたソルテスは、自分の部屋ができて大喜びしたけど、はしゃぎ過ぎて家の壁や柵にぶつかるのは一緒だった。・・・ぶつかる回数が減っただけでも、まあ良いことにしよう。
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