16. 離乳食と食材調達 4
怒涛の買い物から約2月が経過した。ソルテスは水っぽいもの以外のものも食べれるようになって、最近は舌で潰せるくらいの固形のものにも挑戦中。下の前歯だけだけど、歯も結構伸びてきたし、ちょっと固めのものを試し始めても良いかも。
あと、菜園を作ったおかげで一定の収穫が見込めるから、それ程買い物にお金がかからなくなった。それに、あることを思いついたっていうのもあるんだけどね。
その思いつきは、無事に形になった。
『お邪魔するぞー』
『あ、はーい』
玄関から聞こえてきた声に、扉を開けに行く。声の主は、喋り方ですぐ分かる。
『アサトさん、いらっしゃい』
扉を開けると、大きな布の袋を2つ両脇に浮かせたアサトさんが片手を上げて立っていた。
『約束のもの、手に入ったぞー』
『やった! ありがとう、アサトさん!』
嬉しくて、思わずアサトさんと素手でハイタッチ。レイス同士なら、『黄泉への誘い手』も効果ないしね。
『さ、入って。今日はちゃんとお菓子あるんだ』
『おー、やったー』
相好を崩して、アサトさんが家の中へと入ってくる。ふふふ、期待しててね。
『これ、先に渡しとくな』
『ありがとう』
アサトさんが浮かせていた袋を僕に渡してくれる。手袋を嵌めなおし、片方の袋の口を軽く開けると、上の方までパンパンに詰まった野菜、果物類。これこれ!
『ドリアードたち、凄く嬉しそうに持ってきてくれたぞー。もらった薬の効きが良かったからっておまけもしてくれたし』
『本当!? じゃあ、もう少し多めにプレゼントするね』
『そりゃ、喜ぶなー』
アサトさんも嬉しいのか、ニッコリと笑ってくれた。
僕が思いついたことっていうのは、アサトさんを介してのドリアードとの取引だ。ドリアード達は住処に植物が繁殖してれば繁殖してるほど力が強くなる。だから自分達でも植物を育てている。でも、ものを食べる必要が無いから、野菜なんかは結構余らせていると以前アサトさんが言ってたんだよね。
そこで、ドリアードの欲しいものと交換で野菜や果物を譲って欲しいという伝言をアサトさんに頼んだんだ。今回は植物の病気に効く薬が欲しいと言われたから、処方してプレゼントした。
ドリアードって、植物を成長させるのは人間よりもずっと上手だけど、病気は治せないらしい。種族の特徴なのかな?
それはともかく、おかげで栄養満点で美味しいドリアードの作物がたくさん手に入った。これで、街に食材買いに行かなくて良いね!
セゼル金貨も両替しなくて良いし、お金にも困らない。
『本当にありがとう』
『気にすんな。俺もシルトの料理楽しみだしー』
『あはは。じゃあ、ご飯も食べてく? 良い食材手に入ったし』
『お願いするぞー』
即答するアサトさんに苦笑して、僕は台所に向かった。今日のおやつはプリン。ソルテスも食べれるように甘さ控えめの小さいものも用意してある。氷で冷やされたそれらの中から普通のを4つ、小さいのを1つ持って戻る。
『はい、アサトさん』
『おー』
席に着いて、ベッドで寝返りの練習をしているソルテスに微妙な視線を向けていたアサトさんは、プリンを見て思いっきり目尻を下げた。そんなアサトさんの前に普通サイズの4つのプリンを置く。
『頂くぞー』
『どうぞ』
嬉しそうにスプーンでプリンを掬い、口に運ぶアサトさんに苦笑して、ソルテス用のプリンを持ったままソルテスのベッドに近寄る。
『ソルテス、プリンだよー』
「だー」
手を伸ばしてきたソルテスを抱き上げ、テーブルに着く。スプーンでプリンを掬い、口元に運ぶと、ソルテスはパクッとプリンを食べた。
『大きくなったなー』
『んー、僕は実感ないんだけどね。毎日見てるから』
『そりゃなー』
「あうー」
もっととねだるソルテスにプリンを食べさせながら、アサトさんとの会話を楽しむ。時折ソルテスを見てアサトさんが微妙な顔をするのがちょっと気になるけど、アサトさんは必要なことなら言ってくるから、僕に関係のないことなんだと思う。
ソルテスは自分のプリンを食べ尽くすと、機嫌の良い声を上げてウトウトし始めた。
「ぷー」
『おじさんくさいなー』
『はは』
苦笑するアサトさんに笑って、ソルテスをベッドに寝かしに行く。確かに、酒場でお酒飲みすぎて寝ちゃうおじさんとやってることは似てるかも。
『アサトさん、食べたいものある?』
『もうご飯にするのかー? まだ陽も沈んでないけど』
アサトさんの指摘に苦笑する。確かに、まだお昼を過ぎたばかりだ。仕込みに時間をかけても、日の入り前にできるから夕食にはちょっと早い。
『ソルテス起きてると、欲しがっちゃうからね』
『納得だぞー』
ソルテスってば色々食べられるものが増えたからか、最近は僕が何かを食べてると絶対欲しがるんだよね。まだ食べれないものもあるからダメって言ってるんだけど、そうすると泣き出すし。おかげで最近は食事もご無沙汰だ。
できれば、ソルテスが寝てるうちに食べちゃいたい。
『何でも良いのかー?』
『食材の在庫によっては作れないものもあるけど、それ以外ならリクエスト聞くよ』
『じゃあ、カツレツ食べたいぞー』
『了解!』
丁度、ソルテスのスープ用に採ってきたワイルドオックスのお肉がたくさんあるし、それにしよう。
その後、アサトさんが嬉しそうに大量のカツレツを食べているところを、たまたま起きてしまったソルテスが見て大泣きした時は参ったなー・・・。
読んでくださり、ありがとうございます。




