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普遍的構造部屋(啓示)

「黒瀬さん」と話した後寝てしまって!?

う~ん・・。


どれだけ眠っていたんだろうか、寝ぼけ眼で黒瀬さんに貰った腕時計をみるとまだ十一時。疲れていたのに案外深く眠れていなかったみたいだ。


・・・え!?


目線を時計から部屋に移した時僕は驚愕した。


僕は数時間前に入居したばかり、部屋は三号室の何もない六畳一間・・だったのに物で溢れていたのである。


黒電話、パソコン、トランシーバーにPHSまで無造作に置かれている。何がなんだかわからない、通信機器ばかりだ。夢かと思い自分に正拳突きをして確かめようとしたがやり方がわからなっかので挫折した。


黒瀬さんが新生活応援セールとして用意してくれたのだろうか?いや、流石にそこまで面倒をみてくれることはないだろう、それにこんなに通信機器は要らないし通信する友達のいない僕へは嫌がらせだ、黒瀬さんがそんなことするわけがない。これもクロークの怪奇現象とみるべきか。


確かめるべく僕は三号室を出て五号室、黒瀬さんの部屋に向うと扉の前で赤城さんがドアノブに何やらしている・・・ピッキングだ!


「何やってんですか!」


「やぁ君。黒瀬さんが呼んでも出てこないので、もし倒れていたりしたら一大事と思い救出に向かうところだ」


「ただの留守ですよ。そんなことに託けて部屋を物色する気だったんでしょうこの変態が!」この時赤城氏が恋人ではないことは確定した。


「人聞きが悪いなぁ。そういう君こそ俺に先んじて部屋に忍び込もうとやって来とるじゃないか」


「僕はそんな不埒な人間ではないです。僕は純粋に用があってきたのです」・・まぁ他の住人に聞くこともできたが黒瀬さんの部屋に来たのは会う口実がほしかったのもある。なんて純情なんだ僕は。


「というか赤城さん、あなた黒瀬さんの恋人ではないじゃないですか。本人から聞きましたよ」


「あれは君を試しただけだよ。どれだけ彼女を想っているかね。俺も恋敵がいた方が燃えるというもの、誰かと見比べた上で俺を選んでほしいんだよ」そう言いながらもピッキング作業を続行する赤城氏。こんな人が恋敵なんて・・見て呉れ以外はすべて勝っている気がする。


僕はピッキングを阻止するためしかたなく赤城氏に聞くことにした。「僕の部屋に知らないうちに通信機器が搬入されているんですが赤城さん知りませんか?」


赤城氏は作業をやめこちらを見てニヤリと笑った。「通信機器ねえ・・」と含むものがありそうな物言いだ。それから「ちょっと君の部屋に行ってもいいかい?」と言い少し胸躍らせているようにも見える。本音を言えば微塵も入れたくなかったが仕方ない。僕は頷いて赤城氏を部屋に招いた。


「なるほど」と部屋を見るなり納得したような言葉を発した。


「一人で納得しないで情報を公開してください」と早く知りたくて急かすようなことを言ってしまったのが悪かったのか「俺は公的機関ではないから義務はない」と渋る。


言い方が悪かったか?仕方がない「赤城様、どうかこの愚昧なる僕にお教えくださいませ」と迷える民を演じた。


「仕方がない黒瀬さんのリコーダーで手を打ちましょう。」


「青春願望の権化か、あんたは!」実際やったことのあるやつは見たことない、赤城氏なら吹奏楽器全般やっていそうだけど。


「黒瀬さんのリコーダーなんて持ってないし持ってても渡しません」もし貰えたら大切過ぎて銀行に預けるわ。


「ではそのトランシーバーでいいです」と赤城氏は固定型のトランシーバーを指差した。溢れるほどあるのですぐに了承した。赤城氏はニヤニヤしながら嬉しそうに話し始めた。「直接的には言えないんだけどね、クロークの部屋はそういう構造になっているといった感じかな?」


「全然答えになってないです」黒瀬さんみたいな言い方だ。ぼやかすような言葉に不満そうな顔をしていると赤城氏は情けないと言わんばかりの溜息をついて言った。


「つまりね、理由が絡んでいるんだよ。君がここに来た理由、ここにいる理由を表しているんだ。部屋は住人がくれば必ずそうなって理由を提示して理由を解決しようとする・・・らしい」


「らしいって・・黒瀬さんから聞いた話だからですか?というか解決って?」頭が混乱してきた。


「そう、聞いた話だからね解決を経験したわけじゃないからわからないよ。というか経験してたらもうここにいないしね。簡単に言うと部屋は住人の理由を解決してクロークから追い出そうとするのさ・・いや、追い出すって表現は部屋に失礼かな、部屋は住人のことを想って解決してくれようとしているのかもしれないし」そしてもちろんと付け加えて「そうじゃないかもしれない」と言った。


「・・・つまりこの現象は理由を示すヒントということですか?」自分なりにまとめ上げて赤城氏に提示する。


「そうだよ」と僕の見解を認めてくれた。これが答えのようだ。


「じゃあ部屋に居続けるためには・・・」と僕が話している途中にもかかわらず大きな声で割って入って「無視することだ。」と言った。さっきまでと違い赤城さんが殊勝な態度になったので思わず聞き入る。


「どんな啓示があっても聞いてはだめだ。聞けば理由が解決してしまう恐れがある、どんなことがあっても無視しろ、それがここに居続けるための唯一の手段だ」


僕は思わず息を呑んだ。

次こそ遅くなります。

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