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普遍的構造部屋(僕の部屋)

ついにクロークアパートに辿り着いた「僕」と楊貴妃並みの美女「黒瀬さん」。


そこで早速アパートの住人「黄金沢さん」という変人と出会い不安を覚える、そして道中に起こった不可思議な現象を説明してもらうために黒瀬さんの部屋である五号室に入り説明を乞うが・・・。

ピピピと安っぽい音が部屋に響く。見ると、その時計は部屋の隅に転がっている置時計で今なら百円均一でも販売されていそうなほど安っぽい外見をしている。音も見た目も安っぽい、それに少し遠くて見えにくいが針は十二時を指しているようだ。なにもいいとこないじゃないか、僕みたいな時計だ。黒瀬さんがくれたこのお洒落な腕時計よりも僕には似合うんじゃないかと変なマイナス思考が働いた。


「おっと、すみません。急用ができましたので話はまたでよろしいですか?すぐ戻ってきますので。」と淡々と表情を変えずに立ち上がって黒瀬さんが言った。


「きゅ、急用ですか?時計が鳴っただけですけど・・」と僕は言ったが聞こえなかったのかそのまま「先にお部屋に案内しますね、隣の部屋が空いているので使ってください」と微笑んで僕に言う。


「ほんとに住むことになってるんですね・・。行く当てがないので嬉しいんですが・・ほら、敷金礼金とか、契約みたいなのあるんじゃないですか?お金全然ありませんし、それにこういう話は大家さんと話さないと。」と現実的なことを言ってみた。


「今は私が大家みたいなものなのでいいですよ。お金もいりません。」まさかの話だった。というか「みたいなもの」は曖昧過ぎるだろ。また訊きたいことが増えてしまったじゃないか、そう思ったのも察してか「とにかく隣の部屋へ」と僕の手を掴んで座っている僕を引っ張り上げ二人で部屋を出た。扉は閉めたが微かにピピピと聞こえてくる。あれは止めなくていいタイプの時計なのだろうか?


隣の部屋は玄関から見て右側だから奇数の部屋。黒瀬さんの五号室から見ても右側、三号室だ。ものの数歩で到着。


「どうぞ。お入りください。あと他の住人と会ったら交友を深めておいてくださいね、これから一緒に住むのだから。」と繋いだ手を離して言った。少し寂しさと心細さを覚えたが黒瀬さんには用事があるのだ、ここは我慢。


「ではお邪魔いたします」と僕は三号室に入った。部屋は六畳一間でそれだけだった。布団も卓袱台もない、今から住むので当たり前だが・・殺風景過ぎて寂しさを煽られるな、せめてバイトでもして家具はかわなければって自分でも完全に住む方向にシフトしてしまっている・・。だって家賃とかいらなくて隣には黒瀬さんが住んでて言うことないじゃないか。いるのは食費と光熱費くらいかな?それならバイトで何とかなる。そんなことを思案するのに夢中になっていると「では行ってきます」と廊下から黒瀬さんの声がした。

「行ってらっしゃい」と言って振り向いたがもう姿はなかった。廊下まで出て玄関の方をみたが人影はない。


ここの住人は外出が物理的に速いらしい。


僕も住めばそうなれるのだろうか。


・・・廊下に出ていると他の住人に見つかってしまうだろうな、さっき黒瀬さんはああ言っていたが厄介だ。黄金沢さんみたいなのが出てきたら一人では対処できない。そう思って僕は三号室へ戻り扉を閉め部屋の中心あたりで胡坐をかき今後のことに関しての思考に耽りたかったが、流石に疲れた。黒瀬さんに貰った腕時計は六時を指していた、一応携帯電話の時計も見たが同じだったので正確な時間なのであろう。もう眠たい。


しかしそんな睡魔を邪魔するかのように声がした。「こんにちは」




・・くそ、呼んでもないのに早速来やがった。



ついさっき自分の部屋になったばかりの三号室ではあるが、他人を部屋に入れるのは好きではない。しかし黒瀬さんも僕がみんなと仲良くするのを望んでいるようだった。・・本心は違うがしかたない、黒瀬さんがそう望んでいるのなら期待に応えるまで。


覚悟を決めて「どうぞ」と言った。


「やぁ、初めまして。」と言う声が扉側から聞こえればよかったのだが声の主は畳を持ち上げて床下から這い出てきてそう言った。


黒瀬さん、期待に応えられそうにない。


お読みいただきありがとうございます。


次回、この新住人は!?

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