婚約破棄の現場を黙ってみていたらある意味とんでもないことになった伯爵令嬢の話
「タラ、君は全くもって伯爵令嬢失格だ!」
公爵令嬢エリザベート様が婚約破棄されたのに、君はただ口を覆って驚いていただけだと聞くぞ!
お付きのメイドと学友達は公爵令嬢の間に入り王太子殿下を睨み付けたと言うではないか?
「全く恥ずかしい限りだ!」
私は王子殿下の公爵令嬢への婚約破棄の現場に居合わせた。
その時は何も出来なかったわ。
今、婚約者のロバーツ様に叱られているわ。
「僕がその現場に居合わせたら王子殿下相手だって意見してやるのに、あ~あ、出世の機会を逃した。君の責任だ」
「申訳ありません」
「今度のパーティーはエスコートしない。1人で屋敷にいなさい」
「はい、そういたします」
きっとこの関係は結婚しても続くのだろう。気鬱になる。
屋敷に戻って私はロバーツ様に言われた通りパーティー当日も屋敷ですごす。
義妹が部屋にやってきたわ。
「お義姉様、パーティーに行かないの?」
「メアリー、ええ、事情があるの」
「なら、メアリーと遊んでくだしゃい」
この子は歳の離れた義妹のメアリー、親が早逝し我が家門が引き取った親戚の子だわ。
「ごめんなさい。今、そんな気持になれないの」
「え~、遊んで、遊んで、遊んで、少しでいいの~」
「分かったわ。少しだけよ」
時々おねだりをする。
手を引かれて庭に行った。
ここはお抱えのドワーフ工房だわ。
メアリーは変わっていて工房に出入りしている。
「これはメアリーお嬢様にタラお嬢様、出撃完了ですよ」
「はいなの~」
出撃?何、男の子のように戦ごっこをするのかしら・・・
「さあ、お嬢様、これに乗って下さい。黒色火薬砲も問題ありません」
「はいなの~、メアリーが操縦士なの~、お姉様は車長役なの~」
「ええ・・・」
黒い鉄の塊の荷馬車のような物があった。
これに乗れば満足するのね。
「お義姉様はこっちなの~」
「はい、はい」
鉄の荷車の上から頭を出す格好になった。
荷車の前には何か短い棒がついているわね。
「パンツアーフォーーーーなの~」
「えっ?」
荷車から振動を感じるわ。
「お嬢様、鉄兜を被って下さい」
ドワーフ親方に鉄兜を乗せられたわ・・・・
「顎紐ヨシ!前方ヨシ!出撃!」
「えっ」
鉄の荷車が動き出した。
「「「お嬢様、いってらっしゃいませ!」」」
門が開き鉄の荷車はガタガタ動く。
「あのメアリー、馬もないのに動いているわ」
「エンジンは魔道炉なの~、ギアは水車の応用なの~」
「言っている意味が分からないわ」
「時速三十五キロで行くの~、馬の巡航速度よりも早いから注意なの~」
「ちょっとちょっと!」
私は速さに目が回りそうになりながら必死にしがみついたわ。
☆☆☆ロバーツ視点
「君、婚約者はどうしたのだ?パーティーに参加しないのか?」
「それがお仕置きで留守番をさせています。全く、冷たい女ですよ」
あの後、王子が失脚した。
タラが公爵令嬢の婚約破棄で黙って見ていたことを友人達に話した。
「それは仕方ないよ。あの時、どちらに転ぶか分からなかった」
「そうよ。あの場で公爵令嬢に従ったのは代々の寄子とレディスメイドたちよ」
「でも、やり方があるはずだ。タラは鈍いし肝が据わっていない」
「そう言うなよ」
「僕だったら例えドラゴンが来たって、堂々としていられるよ・・・・あれ」
何か地面がガタガタゆれている。
門衛の声が聞こえた。
「待避!鉄の地竜が襲撃しております」
「令嬢が人質に取られている!」
えっ、タラ?どういう理屈か分からないが、地竜の背中から半身を出している。
「あれは君の婚約者ではないか?って、逃げるなよ!」
あれは無理だ。どんだけデカいのだ。門衛達が剣で斬りつけているが傷一つ立たない。
「あれ、ロバーツ様!ご婦人方の避難が先です!」
屋敷の中に入ろう・・・だが執事に止められた。
「キャアーー!」
「何ですの?あれは!」
「早くしろよ!」
必死に執事を突き飛ばしドアを開けた・・・その瞬間、ドンと音がした。
☆☆☆タラ視点
「何ですの?これはメアリー、説明しなさい」
「このレバーを引くの~」
「何ですの?」
「これを引いたら遊びは終わりなの~、引いて欲しーの。欲しーの。欲しーの」
また、おねだりが始まったわね。
「仕方ないですわね」
レバーを引いたわ。まるでボウガンのような引き金。
あら、あれはロバーツ様・・・
ドン!と耳をつんざく音がした。
煙が立ちこめる。
黒い球が放物線を描いて・・・・
ロバーツ様に当たったわ。
ボムという音がして、ロバーツ様は倒れた・・・
「黒色火薬三十七ミリ訓練弾なの~、ゴムで出来ているの~」
「一体、貴方は何をしたの?」
「砲塔は動かないから車体で照準を取ったの~」
「意味分からないわ!もう、嫌ですわ!」
私はこの魔道車から降り。
「メアリー!出てきなさい」
「はいなの~」
「遊びはこれでおしまいよ。ごめんなさいをしなさい!」
「はいなの~」
「私ではなく、パーティーの皆様に向かってよ」
「はいなの~、ごめんなしゃいなの~」
私も一緒に頭を下げた。
「メアリーの義姉タラです。この度は不肖な義妹がご迷惑をかけて・・・パーティー代弁償しますわ」
そしたらパチパチ拍手が鳴り響いたわ。
「なるほど、婚約者に耐えかねて魔道車を出動させたわけか・・・」
「素晴らしい。新世代の兵器だ」
「もう、ビックリしましたわ」
「でも、ロバーツ様の物言い腹が立っていましたわ」
「おい、ロバーツ何とか言え。人の事よりも自分のことを・・・おい、話さないぞ。回復術士だ!」
ロバーツ様は耳から血が出ていた。
結局無事だったが、婚約は解消になったわ。
メアリーは両親に謝罪をしたわ。
「ごめんなしゃいなの~」
「ニャア!」
猫も一緒に頭を下げているわね。アザといわ。
まるで、人生を一回経験したようだわ。
それに、熱病に罹患してから変わった物を作り出したと云うわ。
さては前世持ちなのかしら・・・と考えていたら。
「タラ様・・・その戦車欲しいですわ」
「戦車?」
「ええ、戦車と皆は呼んでますわ」
我が家の新しいビジネスになり。
令嬢たちで戦車戦が流行るようになった。
「フフフフ、令嬢だって暴れたいときございますわ」
「エリザベート様」
今はエリザベート様が中心になって令嬢戦車隊が出来上がったわ・・・・
メアリー今度は・・・
「ニャア!」
「次は飛行機なの~」
また、空を飛ぶ魔道機械とかそんな夢想を言っている。
さすがにこれは無理だろうと思う日々だ。
最後までお読み頂き有難うございました。




