零時発
書きかけのメールの続きへ取りかかるために、涼花はウエストポーチからスマホを掴んでグラスの横へ並べた。発泡している液体の緑は、メロンソーダのそれではない。緑茶の炭酸水割りが、涼花のマイ・ブームだった。
深夜料金発生の四分前に注文した大盛りのフライドポテトが、配膳ロボットによって運ばれてくる。ケチャップの器を先に取ったら「ありがとうございましたワン」と言い始めたので、涼花は慌てて犬型ロボットの頭に設けられた一時停止ボタンを押した。塩をまんべんなくふりかけて、フォークでケチャップへ突っ込んだ二、三本を口へ運ぶ。揚げたてだったらしく、火傷しそうになりながら氷の入ったお冷を流し込んだ。
左手にフォーク、右手で机上のスマホを操作する。メールの宛先は、柚葵。半年前にオンライン対戦のボードゲームコミュニティで知り合った。普段は専用サイトの掲示板やDMでやりとりしているが、先月、鎌倉のオフ会で初対面したときに連絡先を交換したばかりだ。柚葵は、涼花の三歳年下で、結構遠いところに住んでいるらしい。トレーディングカードゲーム好きが転じてボードゲーム好きになったところと、旅好きなところが共通項だとわかり、柚葵も大学生になったら一緒に旅行したいねと意気投合した。
明日は、そんな柚葵が十六歳の誕生日を迎える。日付が変わった瞬間に送信されるように予約をしておこうと思い立ったのは、夕方のことだった。夜風に当たりたくて、ワンピースにウエストポーチの軽装で徒歩八分のファミレスへやってきたのが、午後九時四十五分ごろ。このあたりで二十四時間営業をやっている唯一の飲食店だ。ポテトを食べ終わったところで、食後に提供されるよう注文しておいたソフトクリームを待つ。カラースプレーにコーンフレーク、ちょっとしたパフェのような盛り付けに涼花はシャッターを切る。三枚撮った。
初めて送るメールは、「柚葵さん、お誕生日おめでとう」から始まる。




