14
レナの家に戻ると、俺たちはローテーブルの上に並べられた。
パトリシアがレナの紅茶を用意する間——金髪人形が器用にティーポットを傾ける姿は、やはり奇妙に見える——レナはソファに深く腰をうずめ、目を閉じていた。
「どうぞ」
温かい紅茶が、ほのかに湯気を立てている。
レナは薄く目を開き、香りを楽しんでから、一口含んだ。ほっと息をつき、なにやらぶつぶつと、独り言をつぶやき始めた。路地裏……受付嬢……本体の場所……。小声すぎて聞き取れない。俺もリリアも首をかしげるしかなかった。
しばらく物思いにふけっていたレナは、また一口紅茶を飲んで、ティーカップを置いた。
それから、うさぎのぬいぐるみに視線を向けた。
「リリア。わたしはあなたの本体を探すことに、全力を尽くす。その言葉に嘘はない」
リリアがおずおずとうなずく。
「だけど、あなたの体を探すには、もう少し情報が足りない。だから、リリア、教えてほしいことがある」
レナは両ひざに肘をついて、そっと目を細めた。
「わたしはまだ、あなたのことを知らない。リリアナ・キャンベラがどういう人間で、どういう思いを抱えて、どういう日々を生きてきたか、まったく知らない。でも、憶測だけど、あなたの身の上はおおまかに見当がついてる。例えば、あなたの父親が再婚したことも、父親とひどく言い争ったあとだろうということも、なんとなく察している」
リリアの首が、ゆっくりと下がっていく。細く開いた口が震えている。断頭台に立たされた子どものように、ふたつの赤い目がふらふらと揺れていた。
レナが続ける。
「でもね、そういう話は、あなたの口から話してもらわないと、意味がないの。わたしがいくら憶測をいったところで、それは真実になり得ない。父親のことも、再婚相手のことも、おそらくそのふたりの間に産まれたアラン・デイジーという赤ん坊のことも、あなたが彼らをどう思っているのかも、わたしは知らない」
だから教えてほしい、と。
「リリア。あなたの身に、いったい何が起こったの?」
——かち、こち、かち、こち。
時計が何度も針を打つ。
やがて、リリアが顔を上げた。




