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ドールズ・ミッション  作者: 神田 伊都
第1章 不審死の真相、うさぎの事情
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 レナの家に戻ると、俺たちはローテーブルの上に並べられた。

 パトリシアがレナの紅茶を用意する間——金髪人形が器用にティーポットを傾ける姿は、やはり奇妙に見える——レナはソファに深く腰をうずめ、目を閉じていた。

「どうぞ」

 温かい紅茶が、ほのかに湯気を立てている。

 レナは薄く目を開き、香りを楽しんでから、一口含んだ。ほっと息をつき、なにやらぶつぶつと、独り言をつぶやき始めた。路地裏……受付嬢……本体の場所……。小声すぎて聞き取れない。俺もリリアも首をかしげるしかなかった。

 しばらく物思いにふけっていたレナは、また一口紅茶を飲んで、ティーカップを置いた。

 それから、うさぎのぬいぐるみに視線を向けた。

「リリア。わたしはあなたの本体を探すことに、全力を尽くす。その言葉に嘘はない」

 リリアがおずおずとうなずく。

「だけど、あなたの体を探すには、もう少し情報が足りない。だから、リリア、教えてほしいことがある」

 レナは両ひざに肘をついて、そっと目を細めた。

「わたしはまだ、あなたのことを知らない。リリアナ・キャンベラがどういう人間で、どういう思いを抱えて、どういう日々を生きてきたか、まったく知らない。でも、憶測だけど、あなたの身の上はおおまかに見当がついてる。例えば、あなたの父親が再婚したことも、父親とひどく言い争ったあとだろうということも、なんとなく察している」

 リリアの首が、ゆっくりと下がっていく。細く開いた口が震えている。断頭台に立たされた子どものように、ふたつの赤い目がふらふらと揺れていた。

 レナが続ける。

「でもね、そういう話は、あなたの口から話してもらわないと、意味がないの。わたしがいくら憶測をいったところで、それは真実になり得ない。父親のことも、再婚相手のことも、おそらくそのふたりの間に産まれたアラン・デイジーという赤ん坊のことも、あなたが彼らをどう思っているのかも、わたしは知らない」

 だから教えてほしい、と。

「リリア。あなたの身に、いったい何が起こったの?」


 ——かち、こち、かち、こち。

 時計が何度も針を打つ。


 やがて、リリアが顔を上げた。


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