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Interlude

 最初に虚無がいた。

 その他には何もなかった。

 虚無が退屈のあまりあくびをすると、光と闇が生まれた。

 虚無がそのまま眠ってしまうと、夢が産まれた。

 光は風と土と水と火を産み、闇は夜を産んだのち、それぞれ眠りについた。

 これまでの神々は双性の独り神にて、創世九柱と言う。

 風は空と雲を、土は大地と木々を、水は海と川を、そして火は太陽と雷を産んだ。

 また、風は初めの鳥を、土は初めの獣を、水は初めの魚を、火は初めの虫を創った。

 その後、風と土と水と火は眠りに就いた。

 初め鳥と獣と魚と虫は、夜の闇を恐れた。

 夜は彼らのために、月と星々を産んだ。そして後に眠りに就いた。

 空と雲、大地と木々、海と川、太陽と雷は、初めの鳥と獣と魚と虫とその子孫たちが彼らから糧を得ることを許した後、創世の神々を慕って浅い眠りについた。

 これまでの神々は単性の独り神にて、養世十柱と呼ばれる。

 初めの鳥と獣と魚と虫は、互いに交わり沢山の鳥や獣や魚や虫、そしてその他の多くの生き物を産んだが、神々の不在を寂しがった。

 彼らを憫れんだ月が言った。

 神々の夢とお前達の夢に月影の橋を掛けましょう。

 けれど月よ、私たちには月影の橋を見つけるすべがありません。

 彼らは嘆いた。

 彼らを哀しんだ星々が言った。

 お前達の強い祈りがあれば、星影がお前達を導くでしょう。

 そのため、全ての生き物は、月と星々の出る夜に夢の中で神々と会うことができるようになった。

 けれど、尾のない獣だけは、それでは満足しなかった。

 尾のない獣は、空を飛び、地を駆け、水を泳ぐ、美しい獣だった。

 尾のない獣は、神々に願った。

 神様の似姿を、どうぞ我々に授けてくださいと。

 創世の神々は深い眠りにあって、尾のない獣の祈りは届かなかった。

 養世の神々は、自分の似姿を嫌って承知しなかった。

 しかし、夢だけはこう言った。

 虚無が眠る間だけ、神の似姿を存在させることができるでしょう、と。けれどもそれと引き替えに、お前は天高く飛ぶことも大地を素早く駆けることも水に深く潜ることもできなくなるでしょう。優雅な翼も、雄々しいたてがみも、煌めく鱗も失うでしょう。

 それでも、尾のない獣は願うことをやめなかった。

 夢は、尾のない獣の願いを聞き入れた。

 こうして創られたのが、最初の人間である。






――――――――――『アヌハーン聖典』ミハイア版「創世記」より



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