⑤ HOPE
ファイト!
「ハタさんファイト!ウタさんファイトです!」
「サロコちゃんは元気でいいねえ」
老夫婦のハタとウタがハミルクリニックへ来院した
看護師サロコは相変わらず熱烈な応援で患者を励ましている
昨年11月にハタの背部の粉瘤切開の手術を経過した
同じくしてウタが息切れの診察を受けたが、所見なしだった
共に院長のイルネが担当医師だった
「ハタさん、ウタさん。ゲートボールの方はどうですか?」
「今度3月に大会があるんじゃ。ねえ、かあちゃん」
「ええ、イルネ先生も適度に運動した方が良いっていうからね。練習増やしたんだよ」
「そうですか。いいですね。あれ、チーム名なんでしたっけ?」
「ありがとう」
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ハタ73歳
ウタ74歳
ツエ75歳
ミキ72歳
ハタとウタ
ツエとミキ
2組の夫婦が中心のゲートボールチーム"ありがとう"だった
1チーム5人のゲートボール。
チーム"ありがとう"には不定期参加のメンバーが数人いて、彼等を交代で加えてチームを結成して練習をしたり大会に出場したりしていた
3月の試合に向けてイチジク、オスア、テンの3人が可能な範囲で練習に参加していた
3人はハミルENの老メンバーだ
ハタウタツエミキはハミルENの人間ではない
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「私もやってみようかな、ゲートボール」
「サロコちゃんみたいな若い子がやるにはまだ早いじゃろ」
「そうだよ。テニスでもやったらどうだい」
「テニスですか?私運動苦手なんですよね」
「そうかい。何か程よくやってみるといいけどね。ねえかあちゃん」
「あらそうだ。サロコちゃん、もし良かったら応援に来てくれない。サロコちゃんの、ほら、ファイト!って元気になるじゃない」
「応援ですか」
「それは嬉しいね。サロコちゃんが応援してくれたら百人力じゃ」
「ちょっと考えてみます」
「無理しなくていいよ」
笑顔で返して振り向いて笑顔が萎んだ
プライベートまで人の応援に労力を注いだら私が私の存在に疑心を抱くような気がした
応援する私を応援してくれる誰かはいるだろうか
少し俯いて私のファイトはビジネスファイトなのかと過ぎると同時に口を半分開いて己に声を掛ける
「サロコ採血お願い!」
虚を突かれた看護師長の声に発しようとした言葉を止めきれなかった
「ふあ!」
アユミの指示を受けて準備を始めた
若い男性患者の左腕に駆血帯を巻いて血管を確認する
若々しく皮下脂肪の少ない腕の肘窩 に青い血管を触れて消毒をした
「チクっとしますよ」
「はい」
針を落とすと男の首は右に揺れた
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