第88話:霧ばらい
霧のせいで戦いにくいのなら、その原因である霧さえなくなれば問題はなくなる。
アリアによれば通常時の俺たちなら十分に勝てる相手とのことなので、これが最善だろう。
「え、そんなことができるのですか……?」
シーナは俺の提案に驚いているようだった。
さっき悪徳商人の件でハッタリをかけたばかりだからか、少し疑われているような気もする。
「お、驚いたな……。旭川君はいつの間にそんな魔法を……?」
対して片桐たちは俺が嘘や冗談を言っているとは思っていないようで、純粋に驚いていた。
「魔法というわけじゃないんだけど、多分できる」
所詮は霧なんてただの水滴なので、取り除いてしまえば何ということはないはずだ。
言葉で説明するより、やってみた方が早いだろう。
俺は、唯一覚えている攻撃魔法である《火球》を使用。
手の平の上に出現したサッカーボール程度の大きさの火の球を、垂直に上へと発射した。
そして、俺たちの頭上高くに上ったところで爆発。
ドゴオオオオオオオオオオンンッッ‼︎
爆発により爆風が起こり、立っているのがやっとという状況。
『火球』の爆発により起こる風を利用して、文字通り霧を払ったのである。
この世界には風魔法などもあるだろうから、俺のやり方は綺麗な方法ではないかもしれないが、これでも問題はないだろう。
「バッチリだな」
爆風が落ち着いた頃には、俺の狙い通り視界はクリアになっていた。
「さ、さすがはカズヤさんです……!」
「すごい……本当に霧がなくなっちゃった!」
結果に感心するシーナとアリア。
「な、なるほど……そういうことか!」
「よ、よくわかんねえけどすげえ!」
「《火球》だけでここまでできるなんて……物凄い威力ね」
「す、凄すぎるって……!」
それぞれ、片桐、遠藤、高原、山本だ。
科学的に何が起こっているのか理解している片桐たち四人は
いや、遠藤はよくわかっていないようだが……まあ、これはいいか。
なお、手加減せずにもっと規模の大きな『火球』を放てば、そもそも雨雲を吹き飛ばして雨を止ませる……といったことも多分できる。
だが、あまりにも目立つのでソラを使わないのと同様の理由で使うつもりはない。
「さて、さっさと片付けよう」