第77話:供養
「ああ、おはよう」
俺は、反射的に返事をする。
「僕たちは昨日の件でパーティメンバーの死亡報告をしてきたんだ」
ああ……そうだったな。
パーティメンバーが新規加入する際はギルドへ届け出をする義務があるのと同様に、死亡者を出したパーティはその旨をギルドに報告しなければならない。
「それにしても、ちょうど良かった。旭川君に話があるんだ」
「俺に?」
特に思い当たることは何もない。
とりあえず、聞いてみることとしよう。
「僕たちは、転移してすぐに《白銀の狼》と遭遇して、そのままみんなを置いてきた。これまではこの世界を生き抜くことばかり考えていたけど、色々と思うところがあってね……」
「……確かに、そうだったな」
今から振り返ると戦い方を知らず、ステータスも低かった俺たちは、リード村近くの森で《白銀の狼》に襲われてクラスの大半が死んでしまった。
稲本に誘導される形で俺たち五人は生き残ることができたが、今でもみんなのことを思い出すと後ろめたい気持ちになる。
「それで、もう一度あの森に戻ってちゃんと供養したいと思っているんだ。魔物に荒らされて、骨を集めるのすら大変かもしれないけど……。それでみんなで話し合って、旭川君にも声をかけようってことになったんだ」
「……なるほど。確かに、そういうのはちゃんとやっておきたいよな」
俺は結局最後までクラスに馴染めなかったが、クラスメイトたちは悪い奴らではなかった。
そして、後ろめたい気持ちを払拭——とまではいかないとしても、せめてもの罪滅ぼしをしておきたいという気持ちも俺の中にはある。
「シーナ、一旦リード村に戻るとすると、アールスライドまではどのくらい遠回りになる?」
「遠回りにはなりませんよ」
「え?」
「もともと、最短の道は一旦リード村に戻るルートなので……」
「なるほど」
俺は、なるべくアリアが魔族から捕捉されないよう短期間で遠くまで移動しておきたいと考えていた。供養はちゃんとしておきたいとしても、あまりにも時間のロスになるようなら難しいかもしれないと思ったが、それなら問題なさそうだ。
ついでといってはなんだが、リード村に戻るならマーカスさんたちにシーナの元気な姿を見せられるし、改めて挨拶もできる。
「カズヤさん、私は後悔のないようにしておいた方が良いと思いますよ‼︎」
「うん。アリアもそう思う」
シーナとアリアの二人も背中を押してくれている。
それなら、答えは決まったな。
「分かった。ギルドで用事を終えたら、一旦戻って、みんなの骨を集めよう」
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