第76話:確認
翌日、午前九時すぎ。
俺たちはエンシェント・ドラゴンの買取代金を受け取るため、冒険者ギルドに来ていた。
本来なら朝イチで出発したかったのだが、さすがに一千万ジュエルは下らないだろうと言われているお金を放棄するほど懐事情に余裕があるわけではない。
ギルドの中は、朝イチで依頼を受けて冒険に出ようとしている冒険者たちで賑わっていた。
「ちょっと忙しそうですね……」
「もう少しだけ待った方が良さそうだな」
朝イチで冒険に出たい冒険者はすぐに手続きを済ませるのでそれほど時間はかからないだろう。
実際、九時半頃に訪れた時にはすっかり平常運転だったしな。
忙しいからといって、ギルドに遠慮する必要はないのだが、大きなお金のやりとりになるため、落ち着いた時間を狙いたい。
「ねえ」
「ん?」
そわそわした様子のアリアが俺の横っ腹を突いてきた。
「アリアのこと、ギルドには説明するの?」
ラッシュの経緯も含め、アリアが魔族と人間のハーフであることを説明するかどうかということだろう。
実際のところ、ギルド側に知られたとしても直ちに敵とみなされることはないだろう。
そもそも、DNA鑑定などの素性を特定する技術がないこの世界では、見た目で魔族と分からなければ信じてもらえるかどうかすらも怪しい。
仮に信じてもらえたとすれば、アリアは人間側に保護されるだろうことは想像できる。
だが、その場合にはアリアが俺たちと一緒に行動することはできなくなるだろう。
——まあ、論外だ。
俺の心境としてはアリアとは離れ離れになりたくない。それに、ギルド側の保護で本当にアリアの安全が確保されるかは怪しい。
というか、そんな簡単なことでアリアの身の安全が確保されるなら、ラッシュはもうとっくにやっていただろう。
今のいままで素性を隠していたということは、そういうことだ。
「話すつもりはないよ。アリアは、俺たちが責任を持って守り抜く」
「当然です! 仲間ですから!」
俺とシーナが宣言する。
「そ、そう。……ほっとした」
アリアは安堵の息を吐いた。
内心アリアとしても俺たちがギルドに話す気がないことは分かっていただろうが、実際に言葉として聞きたかったといったところだろう。
さて、開店と同時に依頼手続きに向かった第一弾の冒険者たちの手続きが終わりそうだな。
もう少しで空いてくるだろう。
と思っていたその時。
「旭川君、おはよう」
「……ん?」
聞き覚えのある声がしたので振り返る。
そこには、片桐や遠藤たち四人がいたのだった。
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