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第70話:自決

 どうやら、ラッシュも俺と同じように《収納魔法》を使えるらしい。


「この鳩には、アリアが死んだ旨を記した手紙を持たせている」


「アリア、死んでないけど」


 不満気なアリアが反論するが、ラッシュは気にすることなく説明を続けた。


「不本意なことは分かっているが、アリアを守るには都合が良いんだ。ミッション中に死んでしまったことにすれば、少しでも時間を稼げる」


 確かに、裏切ったのではなく死んだことになっていれば、アリアが魔族にすぐに命を狙われることはなくなる。


 魔族は俺を追うだろうし、いずれはアリアの生存はバレてしまううとしても、その間に俺が魔族たちと戦える力を身につければ問題ない。


 悪くない作戦だとは思う。


「だけど、魔族たちは僕が一度彼らを裏切ったことを当然知っている。ただでさえ今は人間大陸へのミッション中なんだ。僕の手紙だけで信じるかというと怪しい」


 そう言うと、ラッシュは死霊術を使う。


 幾何学模様の魔法陣から、獰猛な一体の死霊ウルフを召喚した。


「じゃあ、どうすれば信じてもらえるか。答えは、これだ」


「お、おい……! ちょっと待て! 早まるな!」


 ラッシュは死霊ウルフを後ろに配置し、鋭い爪を背中に突きつけさせていた。


 要するに、アリアが死んだという報告だけでは怪しまれる可能性があるため、ラッシュもその後死んだということにすれば信憑性が高まるという結論なのだろう。


「勘違いしないでくれ。あくまでもタイミングの問題なんだ。師匠……レジンさんに迷惑はかけられない。今、僕がここで死ぬのが一番効率的な命の使い方ってだけなのさ」


 いや、何を言ってるんだ……?


 ただでさえ情報過多で混乱中のアリアが見たらどう思うか……その程度のことも考えられないのか?


「じゃあ、アリアを頼んだ……」


 と、自身が召喚した死霊ウルフに背中から胸を貫く一撃を指示するラッシュ。


「クゥ……」


 いや、勝手に死なせるかよ。


 困惑気味の死霊ウルフが攻撃を仕掛けようというタイミングで、俺は火球を放った。


 ラッシュを狙う死霊ウルフを狙う軌道。


 だが——


「なっ!」


 ラッシュは、俺の火球を阻むようにもう一体の死霊ウルフを召喚し、被弾させたのだった。


 衝撃が吸収され、狙った場所に届かない。


 そして、そのまま死霊ウルフの爪がラッシュの心臓を突き破ってしまった。


 ザクッ‼︎


 鮮血が宙を舞い、力を失ったラッシュの身体は崩れ落ちたのだった。


 いや……嘘だろ。


 どうして、こうなる……?


「……クソッ!」


 つい数日前に、クラスメイトたちが白銀の狼に殺された光景がフラッシュバックする。


 経緯は違うにせよ、人が目の前で死ぬ場面というのは、後味が悪すぎる。

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