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第57話:負担割合

 ◇


 その頃、ラッシュ率いる稲本たち一行は、アーネス平原を目指して順調に足を進めていた。


「ふう〜〜〜、ようやく到着だ!」


「……まだ中間地点だけどね」


 事前に共有していた休憩地に着いた途端に座り込む遠藤に、高原が冷静なツッコミを入れる。


「つっても、ここまでずっと上りが続いてたんだぜ? ここから平坦になるって考えりゃほぼゴールみたいなもんだろ」


 アーネスからアーネス平原までの道のりは二十キロほど。それほど遠くはない。


 しかし、現在の十キロ地点まではやや強めの勾配を登り続けなければならなかったため疲労はなかなかのものだった。


「まあ、遠藤君の実質論はともかく、少し休んだらすぐに出よう。今日は午後からの出発だったから、さっさと行って戻らないと日が暮れる」


 片桐は素っ気ない反応を返すと、稲本のもとへ。


「先生、もう少し荷物の配分どうにかなりませんか?」


「ん、何か問題があったか?」


 白々しい反応の稲本に苛立ちを感じつつも、片桐は言葉を続けた。


「遠藤君の負担が大きすぎます」


「そうか? 俺は適正だと思うが」


 稲本は高原と山川の方を指差した。


「女は非力だから男がカバーせにゃならんだろ? ん、それともお前が片桐の代わりをやりたいってことか?」


「そ、そういうことを言いたいわけではなく……」


 遠藤の負担は、稲本の約二倍。


 ちなみに、片桐も割合としては稲本の一・五倍ほどの荷物を分担している。


 ただ、これは片桐が大きく負担しているわけではなく、稲本の負担を遠藤が肩代わりしているために起こってしまっていた。


「てめえ、俺がサボってるとか言うわけねーよな? 確かに俺は荷物が軽い! だがな、これは狩場に着いた時に俺が最高の状態で戦えるようにするためのアイデアだ!」


「し、しかし……」


「俺はこのパーティでラッシュの次に強い! 強い者が体力を温存するのは当たり前のことだろうが!」


「……」


 このパーティのリーダーは稲本であり、冒険者ギルドのルールでパーティメンバーは、パーティリーダーの指示に従うのが規則になっている。


 もともとの関係性としても教師と生徒の間柄であったため、おかしいと思いつつも誰も強く反論することはできなかった。


「片桐、気にするな。俺は体力が有り余ってる。こういうところで貢献させてくれ」


 そう言いながら、遠藤は片桐の肩をポンと叩いた。


「……」


「じゃ、そろそろ出ようぜ」


 遠藤が荷物を背負ったその時だった。


 ラッシュは五人の進路に立ち塞がり、稲本たちを静止する。


「いや、もう目的地まで行く必要はないよ」


「ん? それどういうことだ?」


 遠藤が尋ねると、ラッシュは不敵な笑みを浮かべた。


「なぜなら……君たちにはここで死んでもらうからだ」


 ラッシュは言いながら、大きなウルフを五体同時に召喚する。


 ――以前、実力を示すために稲本たちに見せた冒険者ギルドの演習場と同じ構図である。


 しかし、今回の標的は訓練用のカカシではなく、生身の稲本たち。


「えっ……な、何してるんだ……? じょ、冗談だよな……? 俺たち何もしてないだろ……?」


 稲本が震えた声で尋ねるが、ラッシュが冗談と認めることはなかった。

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