第55話:理由
「え……?」
アリアはキョトンとした様子で固まってしまった。
俺の提案はアリアにとっては意外だったらしい。
一方で、シーナはと言うと——
「それ、いいですね! アリアさん強いですし、味方になったら強力ですよ!」
賛成してくれているようだった。
「二人とも本気で言ってるの……?」
「当然です」
「もちろんだ。戦力としても期待できるし、それに事情を知った以上はアリアを一人にはしておけない。と言っても、アリアが嫌なら無理強いすることはできないが……」
「そ、そう……」
あくまでも、アリアの気持ち次第。
アリアは悩まし気な表情を浮かべた後、結論を出した。
「カズヤとシーナの気持ちは嬉しい。……けど、それは無理」
……⁉︎
まったく断られることを想定していなかったわけではないが、一人になれば殺される状況でこちらを選択するとは正直思わなかった。
「……理由を聞かせてもらえるか?」
「まず、アリアと一緒にいたら、二人も危なくなる」
ん、どういうことだ?
「それはアリアがいてもいなくても変わらなくないか? 俺は元々魔族に狙われてるらしいし」
そもそも、アリアが俺に近づいて来たのは、魔族がキャッチした情報による命令だとさっき説明を受けたばかりだ。
だとすれば、魔族側は俺が死ぬまで追跡を止めないはずだ。
「言葉が足りてなかった。アリアたちは、まだカズヤたちが勇者ってことを魔族に報告してない。異世界の勇者を捜して始末してから報告するつもりだった。だから、今ならまだ……」
「そんなの時間の問題だろ? 神様がやったことを把握できるレベルの調査力があって、俺たちを見つけられないはずがない」
「……それは、そう」
何か、引っかかるな。
アリアは、まだ俺たちに何かを隠している気がする。
パーティへの誘いを断られるのはともかく、納得できる理由が欲しい。
「それに、さっきアリアに声をかけてきたラッシュって男にはもう顔を見られてる。遅かれ早かれ魔族に伝わってしまうはずだ」
「……!」
なぜか、急にビクッと身体を揺らすアリア。
ん、何か今の話で驚くようなことあったっけ……?
「どうした?」
「二つ目の理由。カズヤたちといると、いつかラッシュと戦うことになる。ラッシュは、数少ない私と一緒の存在だから……その時にカズヤたちを裏切らない自信がない」
なるほど、そういうことだったか。
「ラッシュとは同郷なんだっけ?」
「そう。施設で一緒に育てられてきた。だから、多少は思うところもある。うざいけど」
アリアの人間らしい部分をようやく見られた気がする。
魔族と人間のハーフらしいので、『人間らしい』と言ってしまっていいのかわからないが。
でも、理由がこれなら話は早い。
「じゃあ、ラッシュも一緒なら問題は解決ってことだな?」
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