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第45話:エンシェント・ドラゴン

 ◇


 アリアがわざわざこの場所にカズヤたちを連れてきたのは、ギルドが用意している特別試験の中でここが最も条件が良かったからだった。


 レジンはラッシュやアリアと同じく魔族側の立場を取る人間と魔族のハーフであり、その繋がりで事前に推薦書を渡されていた。


 だが、アリアも保有枚数は一枚しかなく、そう何度も使える手ではない。


 今日のこのタイミングで仕掛けなければ誘導した意味がない。


 アリアとしては、不自然な挙動に見られたとしても、ここから移動するわけにはいかなかった。


「この辺の魔物じゃいくら倒し続けても微妙だと思うんだが……」


 カズヤが困惑した様子で意見してくる。


「私もそう思います。第一、さっきカズヤさんが魔物を倒してしまったので、もうこの辺に魔物はいないですし」


 シーナもカズヤに同調した。


 確かに、経験値的にも採れる素材の価値的にもここで狩りを続けるよりも、カズヤが言うように強い魔物がいる場所に移動した方が良い。


 アリアもそんなことはわかっている。


 だが、あくまでもアリアの目的は魔族の脅威になり得るカズヤの抹殺。


 その上では、カズヤたちの意見は都合が悪かった。


「渓谷の方に行っても、ここよりちょっと強いだけ。ここにいれば、もっと強い魔物と戦える」


 アリアはこのように言った後、両手を重ねて祈るような姿勢になった。


「出ておいで……」


 空を黒い雲が多いはじめ、黒雲からはビリビリと雷が落ち始めた。


「な、なんだ……⁉」


「急に天気が悪く……こ、困りましたね」


 カズヤとシーナの間に動揺が走る。


 アリアが使ったのは、『威嚇』――昨日、カズヤたちを陥れるために使ったスキルであり、周囲の魔物の注意を引く効果がある。


 このスキルは、特定の魔物だけの注意を引くこともできる。


 効果範囲が限定されたスキルだが、魔力を多めに消費することで範囲を広げることができ、アリアの魔力量であれば、隣のアーネス山の頂上にまで届かせることができる。


 そして、『威嚇』によりアリアがアーネス山から連れてきたのは――


「そ、空にドラゴン⁉ こ、これってシーナが言ってた……」


「た、多分そうです……! そ、そんなまさか……」


 アリアは、もはや普通の手段ではカズヤを倒せないと悟っていた。


 だから、確実に仕留められるよう、手間をかけてここに誘導してきたのだ。


 あの山に棲むエンシェント・ドラゴンはA級冒険者でも討伐が難しいと言われる伝説の魔物。


 非常に知能が高く、狡猾な動きで確実に狙ったターゲットを倒しに来る。


「これで終わりね」


 アリアは小さく呟き、成功を確信したのだった。

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