第44話:秒速クリア
◇
目的地のアーネス樹海に到着した。
依頼内容は、ここにいる魔物十五体の討伐。
討伐対象の十五体の魔物はなんでもいいらしいので、遭遇した魔物を片っ端から倒せばすぐに終えられるだろう。
「じゃあ、早速始めよう」
「ですね!」
見える範囲に見える魔物はせいぜい一~二体。
今回は少し数が多いので、一体ずつ見つけて倒していくのは少し面倒だなと感じていたところ。
「アリア、魔物集めてくる」
アリアがこのような提案をしてくれた。
ありがたい申し出なのだが――
「いや、ここは俺に任せてくれ」
俺は、久しぶりに三体の魔物を呼び出した。
「ソラ、ダイヤ、コッコ。魔物を倒してからここに集めてくれるか?」
「承知しました」
「お任せください」
「行って参ります」
俺の指示を受けた魔物たちは、すぐにそれぞれ別の方向へ散って魔物を探し始めた。
「ふーん、テイマーって便利ね」
アリアが面白くなさそうな表情で呟いた。
「まあな。ある程度の敵なら完全に任せても問題ない。アリアはもっと強い魔物の時に頼む」
ソラたちは次々と周囲にいる魔物を倒していき、倒し終えた魔物を俺たちの近くに連れてきてくれた。
「私、魔物の素材の剥ぎ取りをしますね」
とナイフを取り出すシーナ。
だが、実はこれも必要ないんだよな……。
「いや、このまま持って帰ろう。昨日、買取の明細を見てたんだが素材は素人が剥ぎ取るよりそのまま持ち帰った方が買取値が良いらしいんだ」
「そ、そうなのですか⁉」
「まあ、ちょっと色がつく程度の差だけどな。でも、手間がかからず買取値も上がるならその方がいいだろう」
「それはそうですね」
普通の冒険者は《収納魔法》の容量が小さいので剥ぎ取って一部だけを持ち帰るらしいが、俺の場合は気にせず持ち帰ることができる。
活かさない手はないだろう。
――こうして約十分。
特別試験対象の魔物十五体を倒し、素材を回収することができた。
「お疲れ様。よく頑張ってくれたな」
俺は仕事をしてくれた召喚獣たちを労ってから《収納魔法》に収めた。
何かご褒美でも上げたいけど、美味しい餌とかがいいのかな?
普通に人間用の食べ物をあげていいのなら色々と選択肢はあるが、食の好みなどもあるだろうし……まあ、言葉が通じるわけだし、直接聞けばいいか。
「あっという間に終わってしまいましたね……。これってカズヤさんだけで良かったんじゃ……?」
シーナは少しシュンとしていた。
今回の依頼で特に仕事がなかったことを気にしているのかもしれない。
「依頼はそうだけど、それだけで帰るわけじゃないだろ?」
俺が単独でさっさと依頼を片付けたのには理由がある。
「地図では、アーネス樹海から三十キロ先に渓谷があるんだが、そこに結構強い魔物が集まっているらしい。ソラに運んでもらえばすぐに着くし、今から行こうと思うんだが」
「そ、そういうことだったのですね!」
「ああ。ということでアリア、昨日みたいに――」
と、声をかけようとしたところ。
「必要ない。ここで十分」
「え?」
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