第41話:会議
◇
カズヤとシーナが夕食を楽しむ一方で、少し離れた席でアリアとラッシュは食事を兼ねてお互いに進捗報告を行っていた。
二人の表情は真面目そのもので、食事を楽しもうという雰囲気ではなかった。
「俺の方はターゲットと接触して、今日で実力を把握できた。明日で確実に仕留める。アリアの方はどうだ?」
今日、ラッシュは稲本たちと依頼を一件こなした。
アリアのように、今日のうちに始末するというのも選択肢にはあったが、特に期限が定まっているミッションではないため、一日遅らせることにしたのだ。
実力差が大きいたことはギルド試験を受ける五人を見ているだけでも分かっていたが、数が多いこともあり万が一に備えて個々の特性の理解をするため慎重な立ち回りに徹していた。
自分の状況を伝えた後、アリアの様子がいつもと僅かに異なることにラッシュは気づいた。
「ん、どうした? 何かあったのか?」
「別に……問題ない」
落ち込んだ様子で何も話さないアリアを怪訝に感じるラッシュ。
「その感じだと万事上手くいってるわけじゃないだろ。話してみろ」
「……わかった」
ラッシュに問い詰められ、アリアはしぶしぶ今日の出来事を話し始めた。
「なるほど。思いの外強くて始末に失敗したということか」
「違う。まだ様子見。失敗したわけじゃない……」
「はいはい。そういうことにしといてやるよ」
ラッシュは、アリアが負けず嫌いでプライドが高いことをよく知っている。
ここで言い争っても仕方がないので、苦し紛れの言い訳はサラっと聞き流したのだった。
「一人でなんとかなりそうなのか? なんなら俺が――」
「いい。一人でやれる」
「そうか。まあ、困ったことがあったら相談しろよ」
「人の心配よりまずは目の前のことに集中するべき」
「……まあ、それはそうだな。お節介だったな」
アリアは強気な態度を取っているが、実のところ、できることは多くない。
攻撃力の問題で、基本的にはラッシュのように自分自身で積極的に攻撃しても有効な攻撃を与えられないことが明らかだからだ。
だが、アリアもまったく何の策もなくラッシュを頼らないというわけではない。
アリアには、カズヤたちにまだ隠している奥の手が一つだけある。
今日の戦いでカズヤたちの実力は十分に把握できた。
ミスなくやれれば、何事もなく終えられるはずだという確信があった。
「明日、確実に殺る」
「……まあ、無理はするなよ」
アリアのただならぬ雰囲気を感じ取ったラッシュだったが、今はこのように声をかけておくことしかできなかった。
こうして定例報告を終えた二人は、残っていた料理を食べてから店を出たのだった。
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