第39話:リッチな食事
◇
「せっかくですし、今日はここにしましょう」
シーナが案内してくれたのは、ギルドから少し離れた場所にある落ち着いた雰囲気の飲食店。
「ほう。ちょっと高級そうだな」
「今日はたくさん報酬がもらえたので、たまにはいいかなと思いまして」
「それもそうだな」
一般的には冒険者はギルド近くにある冒険者向けの割安食堂を使うことが多いのだが、ここは冒険者以外も利用する店らしい。
店に入っていく人のカラーを見ていると、リッチそうな見た目の人が多かった。
まあ、気のせいかもしれないし、偶然かもしれないが。
「ここは高級店なのに予約を受けていないんです。使いやすくていいですよね」
「へえ。それってこの世界でも珍しいのか?」
「もちろんです。その代わり、早めに行かないと席がなくなってしまいますが……」
今の時間は十七時過ぎ。
店がオープンして数分なので、まだ席が残っているらしい。
今日は早めに依頼を終えられたのも幸運だった。
「では、中に入りましょう!」
店内に入ると、すぐに席に案内された。
料理は全てコースになっているらしく、売り切れ次第終了らしい。
幸い、まだどれでも選び放題なので好みのものに決めるとしよう。
「肉料理と海鮮か……悩むな」
メニュー表には料理の名前が書かれているのだが、写真などという便利なものがないこの世界では見た目から判断するということができない。
「じゃあ、私が肉料理にするのでカズヤさんは海鮮にするというのはどうですか? 少しずつ両方食べればいいと思いますよ!」
「なるほど、いいなそれ」
ということで、コースが決まったので後は料理を待つだけなのだが――
「あれ?」
俺の座席からだと入店してきた客の姿が見えるのだが、見覚えのある客の姿が見えた。
二人組の男女。
店員に案内され、席に向かっていく。
「どうかしましたか?」
「ああ、いや。アリアが店に入ってきたからちょっと驚いただけだ。気にしないでくれ」
「え、アリアさんですか?」
「ああ。もう一人は誰かわからないけど、二人で入ってきてた。友達か何かじゃないか?」
「すごい偶然もあるんですね」
「だな」
まあでも、この店は人気なので早めに入店しないと席が埋まってしまう。
時間が被るのは当然かもしれない。
俺たちの誘いを断ったのは、一緒にいた男と約束があったのだろう。
それならそうと言ってくれれば良かったのだが……まあ、アリアにも隠しておきたいことくらいはあるか。
そんなことを考えているうちに、料理が運ばれてきた。
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