第37話:札束
◇
アーネスに帰還した俺たちは、冒険者ギルドにて依頼の精算処理と持ち帰った素材の査定をしてもらっていた。
持ち帰った戦利品の買取はギルドにお願いするのがこの世界では常識らしい。
市場で売るより少し割安の査定になってしまうが、相場感に乏しい冒険者にとっては信頼のおけるギルドにお願いする方が安心できるのだとか。
確かに、ギルドとしても冒険者あっての組織なのであまり無茶なことはできないのだろう。
そして気になる金額なのだが——
「百二万ジュエルでの買取でいかがでしょうか!」
「え……?」
俺は、思わず聞き返すような形になってしまった。
ひゃくにまん⁉︎
俺が想像していた約十倍の金額。日本円に直せば、約百二万円である。
「ご納得いただけませんでしたか⁉︎ い、一応ギルドでお付けできる限界まで頑張っているのでですが……!」
あっ、俺の反応で誤解させてしまったらしい。
「そうじゃなくて、思ったより高くてびっくりしたんだ。もちろんその金額でお願いするよ」
「左様でございましたか! 良かったです。ありがとうございます!」
引き渡しが完了すると、速やかに報酬の支払い手続きに入った。
「こちら、依頼報酬の三万ジュエルと、素材買取の百二万ジュエルです。お確かめください」
「ありがとう」
こんな大金、手にしたのは初めてだ。
強盗に襲われないだろうか……? と不安になってしまう。
俺は、受け取った百五万ジュエルをまずは三十五万ジュエルずつの三等分に分けた。
そして、札束をシーナとアリアに手渡す。
「報酬の分配をしておこう」
山分けをするという約束だったので、さっさと分けておくことにした。
全ての手続きが終わってから分配するのが普通だと思うが、金額が金額なのでさっさと済ませておきたかった。
「ひいいいい⁉︎ こ、こんなに……⁉︎」
「……」
大金を目にして驚くシーナと、対照的にまったく動じる事なく無表情のアリア。
アリアはあまりお金に興味がないのか?
いや、もしかするとこのくらいの金額には慣れているだけなのかもしれない。
まあ、そんなことはどうでもいい。
それよりも——
「もしアリアさえ良ければなんだが、またパーティ向けの依頼が出た時には一緒にやってくれないか?」
俺は、この一件で完全に味をしめていた。
冒険者ランクを上げるついでに、毎回この臨時収入はかなり美味しい。
「いいよ」
「よし、じゃあまた今度よろしく頼む!」
もちろん数合わせに集める冒険者はアリアじゃなくても構わないのだが、今日見せてくれたあの防御力は魅力的だ。
今回は俺たちだけでも余裕な敵だったが、今後もっと強い敵を相手にしたときに頼りになる。
「それでは、最後にギルドポイントを加算してお返し――あっ、おめでとうございます! カズヤさん、シーナさん、アリアさん。皆さん冒険者ランクがEに上がったようです!」
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