第34話:不発のMPK
アリアは、カズヤたちを連れて森林の奥へ進んだ。
アーネス森林には強い魔物がいるスポットもある――とアリアは説明したが、これはこの森林特有の現象ではない。
自然界には魔力の強い場所と弱い場所がある。
魔物は魔力を栄養として吸収するため、強い魔力の場所に生息する魔物は強くなりやすく、弱い魔力の場所に生息する魔物は弱くなりやすい。
という理屈で、魔力が強い場所なら比例して強い魔物と遭遇できるのだ。
森林の奥に濃い魔力が流れるエリアがあることを発見したアリアは、二人をその場所に誘導しているということである。
移動すること約十五分。
「ついた。ここ」
到着した場所は、木々が拓けた見通しの良い場所。
先ほどカズヤたちが倒したジャイアント・ベアーの約二~三倍の大きさを持つ魔物たちがうようよしている。
「同じ森の中でこんな魔物がいるのか……!」
「す、すごいですね……。慎重に戦いましょう!」
二人は初めてこの光景を見たらしく、驚いていた。
「じゃあ、魔物集めてくる」
「集めてくる……? まさか――」
カズヤが話し終える前に、アリアは一人で魔物犇めくスポットに飛び込んだ。
『威嚇』。
周囲にいる魔物を挑発し、自分自身に注意を引く。
三十体を超える魔物たちが一斉にアリアに注目する。
そのタイミングで、カズヤたちが追いついてきた。
「最初くらいはもうちょっと慎重にしてくれよな」
「そうですよ! 一気に襲い掛かってきたら……」
そんな懸念を示す二人を無視して、アリアは仕上げに入る。
『威嚇解除』
これは、『威嚇』と反対の作用を持つスキルである。
周囲の自分に注目する魔物からターゲットを外す効果がある。
大量の魔物を引き連れた状態でこれをすれば、自ずとカズヤたち二人が狙われることになる。
「ちょ……これまとめて相手するのかよ⁉」
「う、嘘ですよね⁉」
二人を反応を見て、自分の仕事は終わったと確信したアリア。
だが、次の瞬間には信じられない光景が目に飛び込んできた。
「え?」
次々と襲い掛かってくる魔物をサクサクと倒していくカズヤとシーナ。
更には、カズヤの召喚獣三体も次々と魔物を処理していく。
すべての魔物を一撃で倒すほどの余裕のある華麗な戦いぶりである。
二人が相手にしている魔物は、先ほど戦っていた雑魚と比べて数倍……あるいは、十倍程度の強さを持つ魔物たちばかり。
一体や二体ならまだしも、これだけの数を相手にまったく動じない事態をアリアは想定できていなかった。
そして、十数秒後。
大量にいた魔物は一匹も残っていなかった。
「う、嘘……⁉」
もはや、思考がぐちゃぐちゃ。
混乱するアリアに、カズヤが声を掛けてくる。
「ナイスだったぞ」
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