第33話:抹殺
◇
アリアは、カズヤこそが神による魔族への刺客――すなわち、異世界から召喚された勇者なのだと確信していた。
司祭グレイの指令により、アーネスを警戒していたラッシュとアリア。
抹殺対象を見つけるまでに時間がかかると覚悟していたが、二人はあっさりと見つけられた。
戦う能力を持つ異世界の人間がまず目指すのは冒険者だろうとあたりを付けていたことも大きいが、なによりも冒険者試験で目立った成績を出してくれたため、容易に特定が可能になった。
稲本たちは五人まとまって過去の記録を更新する活躍を見せ、カズヤは合格不可能とされている最終試験をあっさりと突破した。
偶然ということもあり得るが、アリアは既にカズヤの口から確認を取れている。
冗談めかした言い方ではあったが、確かにカズヤは『別の世界から来た』と言っていた。
まさに司祭グレイが占った通りである。
なお、シーナに関しては強さの理由はわからないものの、異世界の勇者とは関係ないとアリアは結論付けている。
その理由は、この世界に馴染んだ容姿と名前である。
どう見ても同郷の者ではなさそうなので、始末の必要はないと判断した。
とにもかくにも抹殺対象を見つけたからには、早急に始末してこの案件を終わらせたい。
――アリアの次の提案は、そんな意図からのものだった。
「せっかく来たのにトンボ帰りは勿体ない。もっと歯応えのある敵とも戦うべき」
アリアは、アーネスへ戻る準備を始めたカズヤたちに告げた。
「歯応えのある敵?」
「アーネス森林は、強い魔物がいるスポットもある。カズヤもシーナも強いから、もっと強い敵と戦った方が成長できる」
アリアがこんな提案をしたのには、切実な理由があった。
目の前でカズヤとシーナの戦いぶりを見ていたアリアは、この付近の雑魚ではどれだけ工夫をしてもカズヤを死に至らしめることはできないと思ったのである。
アリアは、防御力には優れているが、攻撃力は特別優れているわけではない。
相方のラッシュのように、直接攻撃による始末ができないので、魔物を使って間接的に攻撃するしか術がないのだ。
「まあ、確かにシーナのレベル上げにもなるしそれも悪くはないか……」
「そうですね。それに、強い魔物を倒せればお金の面でも助かりますし」
「ん? 依頼を受けてなくてもお金がもらえるのか?」
「魔物の素材は買い取ってもらえるんです。強い魔物ならまとまった金額になるかと」
「なるほど! いいなそれ!」
どうやら、カズヤたちも乗り気になってくれたらしい。
説得の手間が省けて助かったと思いつつ、アリアは気を引き締めた。
「こっち、ついてきて」
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