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第32話:消し炭

 防御力と攻撃力の性質の違いがあるとはいえ、同じ★5職でも稲本たちはこれほどまでには強くなかった。


 能力は職業だけでなく、レベルや経験、技術がモノを言うのだろう。


 確か、アリアのギルドカードは俺たちと同じ白色だった。


 すなわちFランクの冒険者ということなのだが、なぜ彼女が未だにFランクなのか不思議に感じる。


 まあ、どうでもいいか。


「シーナ、いけそうか?」


「はい!」


 魔法の準備をしていたシーナが、無詠唱で《火球》を放つ。


 勢いよく飛び出した火の球は、減速することなくジャイアント・ベアーの背中に直撃。


 ドオオオオオオオオオオオンッ‼


 アリアを巻き込んでしまっていないか心配になるほどの衝撃だった。


 というか、威力が高すぎて残骸がほとんど残っていない。


「さすがはシーナ……っていうか、素材! 討伐証明になる部分消えてないよな⁉」


 討伐依頼の場合には、精算時に対象の魔物であることを証明する素材を持ち帰る必要がある。


 この素材は魔物を特定できれば良く、牙や爪、角、尻尾などなんでもいい。


 ただし、別の魔物から獲れたことを示すため同じ部位で集める必要がある。


 俺は、慌てて魔物の残骸のもとへ駆け寄った。


「わ、私……やっちゃいました?」


 不安気に尋ねてくるシーナ。


「……かも」


「そんな……」


 燃え残ったのは骨のみだが、そのほとんどが消し飛んでしまっている。


 これでは、たとえ骨の残骸を持ち帰ってもDNA鑑定など特殊な識別方法がないだろうと思われるこの世界では、役立ちそうにない。


 というか、あったとしてもコストの面で難しかったかもしれないが……。


「ま、まあ! また倒せばいいだけだ。良い練習になったと思えば――」


 シーナを励まそうとしている途中だった。


「ん?」


 アリアが俺の横腹をツンツンしていた。


「これ、要る?」


 言いながら、渡してきたのはジャイアント・ベアーの千切れた腕だった。


 これはまさに討伐証明になる。


「こ、これは⁉ え、なんで持ってるんだ⁉」


「消し炭になりそうだったから、一応確保しといた」


 なんと、魔物の気を引いていたアリアが気を利かせて残してくれていたようだった。


「あ、ありがとう……助かるよ」


「アリアさん! ありがとうございます‼」


「……どういたしまして」


 そんなこんなで賑やかにやりつつ、残り二体の魔物をサクっと倒したのだった。


 これにて、依頼内容は完遂。


 後はアーネスに戻ってギルドに報告をするだけである。


 そんなタイミングで、アリアがとある提案をしてきた。


「せっかく来たのにトンボ帰りは勿体ない。もっと歯応えのある敵とも戦うべき」

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