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第29話:受注制限

 ◇


 何事もなく朝を迎え、俺たちは冒険者ギルドへとやってきた。


 今日からようやく依頼を受けられる。


 ということで、早速掲示板に貼られている依頼書を物色していたのだが――


「う~ん、どれも安いな……」


「そうですね……。Fランクだと簡単な依頼しか受けられないので仕方ないですが……」


 冒険者はランクごとに受けられる依頼が決まっているのだが、新人であるFランク向けの依頼はどれも簡単なものばかり。


 依頼内容が簡単なので、報酬も当然安かった。


 例えば、街の中での簡単な配達や清掃、上位冒険者の雑用などばかり。


 報酬はほとんどが自給九百ジュエル程度。


 ざっくりとした感覚だが、一ジュエル=一円くらいの相場観なので、自給九百円くらいの雑用しかないといった感じだ。


「地道にコツコツ依頼をこなせばランクは上がるので、それまでの辛抱です……! そ、それまでは野宿でもなんでもして耐えましょう……!」


 冒険者になればすぐにお金を稼げると思っていたので、悪い意味で期待を裏切られてしまった。


 シーナは貧乏生活を受け入れる姿勢だが、俺だけならともかく、俺の甲斐性がないばかりにシーナにまで野宿させたくはない。


 何か、割の良い依頼はないかと探していたところ――


「ん、これは……」


「どうかしましたか?」


「これを見てくれ。結構良くないか?」


 俺が見つけたのは、魔物の討伐依頼だった。


 アーネスから北に向かった場所にあるアーネス森林で、ジャイアント・ベアーを三体倒してくれという内容である。


 報酬はなんと三万ジュエル。


 Fランクの中では、群を抜いて報酬が良い。


「討伐依頼もあったのですね! ジャイアント・ベアーならカズヤさんも私も問題なく倒せるでしょうし問題な……あっ、問題ありました」


「え?」


「ここを見てください」


 シーナは依頼書の隅に書かれた注意事項を指差した。


「この依頼は、受注制限がかかっているんです」


「受注制限?」


「依頼を受けるためには、ランク以外に満たさなきゃいけない条件があるということです。この依頼の場合は……三人以上のパーティでの受注が必須ということになっていますね……」


「俺とシーナだけじゃダメってことか……なんだよそれ」


 せっかく良い依頼を見つけたと思ったのに、受けられないとは。


 また振り出しに……いや、待てよ?


「でも、逆に言えば誰か一人誘えば受けられるってことだよな?」


「それはそうですが……」


「魔物自体は俺とシーナで倒せる。だから、数合わせに誰でもいいから一人誘えばいい。報酬は均等に分ける約束なら見つけられたりするんじゃないか?」


「……! 確かに、この依頼は報酬も良いですし、ランクアップに必要なギルドポイントの数も多いです。良い案かもしれませんね!」


「よし、そうと決まれば早速――」


 と、近くにいる冒険者たちに片っ端から声を掛けようと依頼書を剥がしたその時だった。


「困ってるなら、パーティ組んであげてもいいよ?」


 背後から、幼い女の子の声が聞こえてきた。

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