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第26話:合格

 ◇


 冒険者ギルド屋内にて。


「合格おめでとうございます!」


「あ、ありがとう……」


 かなりハイテンションになって自分事のように喜んでくれるギルド職員から、冒険者の身分証明証である白色のギルドカードを受け取った。


 冒険者にはランクというものがあり、ビギナーは一律Fランクから始まるらしい。


 そして、白色のギルドカードはFランクを指すようだ。


 なお、ギルドカードには、名前や職業などの個人情報も記載されている。


「カズヤさんならもしかすると……と期待していたのですが、本当に合格してしまうとは……正直驚きました。快挙ですよ!」


 ギルド職員は親指を立てて俺を褒めちぎってくれる。


 褒めてくれるのは良いのだが、周りの冒険者の目線を感じて少し気恥ずかしい。


 まあ、結局あの試験での合格者は俺一人だったので、確かに難しかったのだろう。


「えっと……冒険者試験って私が知らない間に難化してしまったのですか……?」


 シーナがギルド職員に尋ねた。


 そういえば、シーナは冒険者試験は簡単に突破できると言ってたっけ。


「今もそれほど難易度は変わっていないのですが、今回の試験官のエレンさんだけは特殊で……あの方がこれまでに出した合格者は……ゼロです」


「ええええええ⁉ じゃ、じゃあめちゃくちゃすごいじゃないですか⁉」


「そうです! カズヤさんは凄いんです! それも完膚なきまでに倒しての完全勝利で合格を勝ち取ったわけですから、前代未聞の次元じゃないのです」


「す、すごい……カズヤさん、さすがです‼」


 シーナが目をキラキラさせて俺を見てくれている。


 褒めてくれるのは素直に嬉しいのだが、完全にステータスが優っていたから勝てたに過ぎないし、このステータスは努力で手に入れたわけでもない。


 俺は果たしてこれだけ褒められるほど凄いことをしたのか? と、少し複雑な感情だった。


「でも、どうして試験官の方はこれまで合格者を出さなかったのですか? 他の試験官なら合格にする人を不合格にするなんて……悪口を言いたくはないですが、少し意地悪に感じます」


「まあ……エレンさんも悪い方ではないんです。ギルドとしては問題を認識しつつも継続してお願いしていたのは少し事情もありまして……」


「事情ですか?」


「はい。エレンさんは、冒険者になられてすぐに同郷の友人たちとパーティを組まれたのですが、魔物との戦いで友人を亡くされてしまって……。『俺は半端者は冒険者にしない』と口癖のようにおっしゃっています」


 なるほどな。


 なんとなく、理由がわかってきた。


「エレンが落としても、他の試験官なら合格させるから問題はない……。つまり、戦いに出る前の戒めというか……負けても良い戦いで一度敗北を経験させるのが目的だった……ってことか」


「おっしゃるとおりです。実際、エレンさんの試験を経験した冒険者の死亡率が低いこともあって、一定の合理性はあるのだと思います」


 俺はそんな想いを無視して強行突破してしまったわけだ。


 結果は俺の勝ちだったが、その想いはしっかり胸に刻んでおくとしよう。


「あっ、それでご依頼についての説明を。依頼を受注する際は、入って左手にある掲示板から受注したい依頼書を剥がして受付にお持ちください。清算の際の手続きは、都度説明いたします。ギルドからの依頼は明日から受注可能になります。それでは、冒険者としての活躍をアーネス冒険者ギルド一同、期待しております!」

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― 新着の感想 ―
誤字が多い
[一言] 素行不良って訳じゃなくて、わざわざ自分の体験を一回体験させてからって事なんだね。 合理性はあってる訳だし、一度の敗北で心折られる人は、冒険者としては向かないって振るいもかけているわけですね…
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