第24話:模擬戦
エレンは俺を軽く睨んだ後、フッと鼻で笑った。
「見かけによらず威勢の良い男だな。回答だが……さすがにそれはねえ。俺に勝てば絶対に合格だ。だが、俺に勝つにはBランク以上の実力が必要。少なくとも、お前らガキに負けたことは一度もねえ。そういう余計なことを考える必要がねえことだけ覚えておけばいい」
なるほど。
基準が厳しいとは言っても、絶対に合格できるラインはやはりあるようだ。
「じゃあ、始めるぞ。最初の挑戦者は誰だ?」
エレンは俺を見てくるが、俺はサッと目を逸らした。
最初は避けたい。
他の挑戦者との模擬戦を見てから対策を立てた方が合格の可能性が高まるからだ。
数秒の沈黙が流れ、手が上がった。
「じゃ、じゃあ……僕が!」
先ほどエレンに質問をしていた少年だった。
「お前は……剣士(★4)か」
エレンが資料を見ながら言うと、どよめきが起こった。
「★4⁉ す、すげえ!」
「これなら勝てるんじゃねえか⁉」
「偉そうなこと言っててもCランクだもんな! やっちまえ!」
皆の反応を見るに、どうやら★4の職業は珍しいらしい。
俺はこれまでいまいち★1~★5の違いがわかっていなかったが、この反応だと★4はかなり強い方だと考えて良いのかもしれない。
エレンの★の数は不明だが、彼も剣士らしいので比較にはちょうど良さそうだ。
「よし、いつでもかかってこい。先手は譲ってやる」
「い、行きます!」
★4の少年と、Cランク冒険者エレンとの模擬戦が始まった。
キンッ!
★4の少年が攻撃を仕掛け、剣と剣が衝突する。
ふむ、単純なパワーではどちらも拮抗しているようだ。
「なかなか筋は良いが、まだまだだな――ふん!」
エレンは初撃を受け流すと、一歩下がってから勢いよく地を蹴った。
「この程度の荒い技術で俺に勝てると思うなよ?」
言いながら、一瞬にして少年と入れ替わり、背後を取ることに成功するエレン。
エレンはかなり動体視力が優れているようだ。
おそらく剣士の素質としては少年の方が上だが、エレンは予測に秀でている。
「なっ!」
背後を取られて焦った少年は距離を取ろうとするが、その動きは悪手だ。
既にバレている。
「こ、降参です……」
首筋に剣を突き付けられた少年は、白旗を上げた。
なるほどな。
この一戦を見て、俺はだいたい実力を把握できた。
「う、嘘だろ……」
「こんなの勝てるわけないじゃん……」
「Cランクでこんなに強いって嘘だろ⁉ 俺が知ってるCランクの動きじゃないって!」
周りを見てみると、戦々恐々としていた。
「さて、次の挑戦者は誰だ?」
エレンが次なる相手を募集する。
誰も手が上がらない中、俺はスッと手を挙げた。
「お前は……ん、ガチャテイマー(★なし)? フッ、この程度の職業で俺に生意気な態度を取っていやがったのか」
俺の資料を見て、エレンは失笑したのだった。
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