第21話:的当て試験
確かに、ギルド職員が見せてくれたステータスと比較すると、俺のステータスはかなり低い。
しかし、弱体化したような感覚はないので、俺の本来の実力は《ステータス共有》によって強化された数値の方が正しい……気がする。
「で、でも次の試験を受けることはできるんだよな?」
「一応できますが……わざわざやる必要あります?」
ギルド職員は面倒くさそうな目で俺を見た。
合格の可能性が低いのに無駄な仕事を増やすなとでも言いたげだ。
「頼む! 受けさせてくれ!」
俺は両手を合わせて拝んだ。
「記念受験ということですね。はあ。まあ、いいですよ。じゃあ、ついてきてください」
どうにか試験に進むことができる運びとなった。
急に塩対応になるというのはなかなか堪えるものだな……。
人間不信になってしまいそうだ。
一旦ステータス検査室を出て、誘導されるがまま向かった先は裏庭。
街の中とは思えない自然豊かな景色が広がっていた。
手前には、五体の金属製のカカシが横並びで立っている。
「ここは演習場です。そこにあるカカシを攻撃していただくと、攻撃力が表示されます。やって見せましょうか」
ギルド職員は剣を持ってカカシに近づき、横なぎに一閃。
キンッ!
すると、カカシの上部に数字が表示された。
――――――――――
ダメージ:192
――――――――――
なるほど。
この数字の上下で合否が決まるということか。
「的当て試験の合格点は100点です。攻撃は剣でも魔法でも構いませんが、どちらにせよカズヤさんの攻撃力ではかなり厳しいですね。……まあ、一応やってみましょうか」
「……ハハ」
苦笑いするしかない。
まったく期待されていないようだった。
俺は、《収納魔法》で異空間から剣を取り出す。
「おや? ……なかなか良い剣を持っていらっしゃいますね」
「ん、そうなのか? もらいもので武器にはあまり詳しくないんだが」
「ええ。中級者でも十分に実用に値しますね。まあ、武器によって大幅にステータスを覆せるわけではありませんし、使いこなせなければ猫に小……いえ、なんでもありません」
何かを言いかけて、口ごもるギルド職員。
いや、そこまで言われたらさすがに分かるからな⁉
まあ、あのステータスでは確かにバカにされるのも仕方ないのかもしれない。
あの水晶では測れない俺の力をここで見せるとしよう。
この試験に合格できれば見られ方も変わるはずだ。
よし。
「じゃあ、行きます」
俺は剣を持ってカカシの前に立つ。
「始めてください」
ギルド職員の合図で、俺は剣を横なぎに振った。
ガキイイイイイイイインッ‼
カカシの上部に数字が現れるはずなのだが――
「あ、あれ……? 数字が出てこないぞ? どういうことだ?」
どういうわけか、数字が表示されなかった。
というか、さっきの一閃でカカシが切断されてしまっている。
「もしかして、壊れちゃ――」
「う、嘘でしょ⁉ し、信じられません! このカカシは、オリハルコンで出来た特別性……滅多なことでは壊れないはず……ましてやあのステータスで。あ、ありえません!」
え?
なんか、俺の想定以上に驚かれてしまっていた。
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