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第15話:進化する魔物

 翌日の早朝。


 早朝……とは言ってもまだ朝日は上っておらず辺りは暗い。


 時刻はまだ四時と、朝なのか夜なのか微妙に判断に困る時間だ。


 慣れない枕故なのか、異世界に転移してまだ精神的な緊張が続いているのかわからないが、こんな時間に目が覚めてしまった。


「……起きるか」


 普段なら二度寝する時間だが、どうも眼が冴えて寝付けない。


 俺は、庭に出て朝の風を浴びてくることにした。


「おや、早いな」


「え、もう起きてたんですか⁉」


 庭に出ると、シーナの父マーカスさんが庭で椅子に腰かけていた。


「いや、眠れなくてな。いつの間にかこんな時間になってしまった」


 マーカスさんに手招きされた俺は、空いていた隣の椅子に座った。


「いつもこんな感じなんですか?」


「普段は朝までぐっすりだ。今日は特別目が冴えてる」


「シーナが心配ですか?」


 昨日の戦いぶりで、シーナはマーカスさんに能力を認められた。


 翌日の今日には村を出て、俺の下で冒険に出ることが決まっている。


 マーカスさんはシーナを溺愛しているようだから、心配や寂しさを抱いているのかもしれない。


「カズヤ君がいれば身の心配は不要だろう。だが、色々と思うこともあってな」


「思うこと……ですか?」


「シーナから冒険に出たい理由は聞いているな?」


「いえ」


「……シーナの奴、師匠に話してなかったのか」


 呆れたように息を吐きつつ、マーカスさんは話を続けた。


「あの子が冒険者を目指す理由の前に、話しておこう。シーナは、私の実子ではないのだ」


「えっ⁉」


 マーカスさんはかなりシーナを溺愛していたようなので、これは予想していなかった。


 思わず声が出てしまう。


「私は我が子と変わらない愛情を注いできたつもりだが……あの子の実の親は、私の弟夫妻なのだ」


「なるほど……」


 まったく血の繋がりがないわけでもない……と。


 雰囲気が似ていた理由はこれか。


「シーナがまだ小さい頃、昨日のように村に魔物が侵入してきたことがあったのだ」

「初めてじゃなかったんですか⁉」


「ああ。この世界ではそれほど珍しいことでもない。それで、シーナは両親と姉の四人で暮らしていたのだが、シーナ以外は残念ながら……な」


 悔しそうに拳を握るマーカスさん。


 マーカスさんとしても実弟を亡くしているわけで、並々ならない思いがありそうだ。


「シーナが頑なに冒険者を目指すのは、そういう理由もあると私は感じている」


 家族を奪われた恨み……か。


 普段の明るく健気なシーナからは想像できなかった。


「カズヤくん。もし、村を離れてからシーナが暗い顔をすることがあったら、少し気にかけてやってくれないか?」


「ええ、もちろんです。俺にできることは何でも……」


「それで十分だ。娘を頼んだよ」


 その後も、朝日が上るまでマーカスさんと俺は話を続けた。


 大半はただの雑談だったが、この世界の理解が深まる時間になった。


 ◇


「では、行ってきます!」


 朝九時。


 朝食を食べた後、俺たちは東門からリード村を出ることとなり、シーナを見送りにマーカスさんたちも来ていた。


「いつでも帰ってくるのよ」


「身体には気を付けるんだぞ」


 育った村から離れることにシーナは少し名残惜しさを感じているようだったが、村を離れて数十分した頃には、気持ちを切り替えたようだ。


「それにしても……便利ですね!」


 シーナは、近くにいる魔物を殲滅する俺の召喚獣たちを見ながらそう呟く。


「安心して歩けるのは良いよな」


 普通は、村を出れば常に魔物を警戒しなければならない。


 しかし、俺の場合には召喚獣が勝手に魔物を探して、魔物を倒して、魔物から魔石を回収してくれるので、ただ道を歩くだけで良い。


 もちろん、召喚獣の見逃しても想定して少し気を張っておく必要があるが、普通の冒険者と比べればかなり楽な旅になっていることは間違いない。


「とは言っても、50キロ歩くのは結構しんどいけどな」


「それは仕方ありませんよ!」


 そんな会話をしながら歩みを進めていると、魔石がかなりの数貯まっていることに気が付いた。


 もう一段階、★を上げられる数が集まっている。


 スキルレベルの上昇による召喚獣の最低レベルの上昇を待ってからの方が魔石の投資効率は良いのだが、まだ俺自身のレベルが上がるまでには大量の経験値が必要。


 それなら、今のうちに召喚獣の★を上げておいたほうが良いかもしれない。


「一旦集まってくれ」


 召喚獣に指示を出すと、すぐに四散していた魔物が俺のもとに戻ってきた。


 俺は魔石をほぼ全て消化し、★5の召喚獣をそれぞれ十体用意する。


 そして、《限界突破》を始めた。


「え?」


 しかし、ここで想定外のことが起こった。


 ★5の次は、★6だとばかり思っていたのだが――


 ――――――――――

 金スライムが進化します

 金ひよこが進化します

 金トカゲが進化します

 ――――――――――


 そんなメッセージが表示されると、召喚獣はまったく違う姿に変貌を遂げた。


 以前よりもかなり大きく、強そうな見た目になっている。


 特に、エンシェント・ドラゴンは俺の何倍も大きさになっている。トカゲの面影はほぼない。


 ――――――――――

 名称:キング・スライム(★1)×1

 特徴:スライムを統べる王。


 名称:エンペラー・チキン(★1)×1

 特徴:幸運を呼ぶ鶏。


 名称:エンシェント・ドラゴン(★1)×1

 特徴:神話時代の神竜。

 ――――――――――


「な、なんだか全然違う姿に……! 逞しくなりましたね!」


 シーナもその変貌にはかなり驚いたようだ。


 ★の数はかなり下がってしまったが、明らかに強くなったことは感覚的に理解できた。


 とはいえ、近くにいる魔物はもともと一撃で倒せる程度の戦力差はあったので、試しに戦わせてもいまいち成長を実感できないかもしれない。


 そんなことを考えていた時だった。


「ご主人様。お名前を頂戴してもよろしいでしょうか」


「え?」


「しゃ、喋りました⁉」


 エンシェント・ドラゴンが人間の言葉で俺に話しかけてきたのだった。

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