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第13話:白魔術師(★なし)の実力

「ええええええええええええええっ⁉」


 シーナが驚くのも無理はない。


 《火球》を放った本人である俺もめちゃくちゃ驚いているのだから……。


「ど、どういうことですか⁉ 呪文は⁉ しかも威力もすごく上がってますし……!」


 次々と質問をぶつけてくるシーナ。


 俺もまだ全てを理解できているわけではないが、頭の中で整理しながら説明を始めた。


「えーと、多分っていうか、事実として魔法には必ずしも詠唱は必要ないんだ。魔法の適正がある人にとっては呪文がトリガーになってるけど、呪文によるトリガーがなくても、自分で魔力をコントロールすれば発動自体はできる」


 意識すれば、身体中を流れる魔力を感じ取ることができる。


 呪文がフレーズごと……あるいは単語ごとにトリガーになっており、最初の詠唱省略は、魔法発動に必要な一部自力で魔力をコントロールしたことで実現できた。


 二度目の無詠唱は全ての魔力をコントロールしたことで実現できた……ということになる。


「な、なるほど……? し、しかし魔法の威力が変わったのはどういうことですか⁉」


「それは多分……無駄を削ぎ落しただけで、無詠唱魔法が本来の魔法の威力なんだと思う」


「どういうことでしょう?」


「つまり、呪文には実現したい魔法にとって必要のない要素も入ってるんだ。自分で全ての魔力をコントロールすれば、必要な要素だけで魔法を構成できる。無駄なく全ての魔力をエネルギーに変換したから強くなったように見えたんだと思う」

「わかったような……わからないような感じです。こんなの、常識から外れすぎてます!」


 シーナを困惑させてしまったらしい。


 確かに、魔法の発動には呪文が絶対だと思っていれば理解し難いのかもしれない。

 良くも悪くも俺はこの世界の知識がないため、常識から外れた発想が出来てしまった。


「でも、カズヤさんの発見が強くなるための答えなのかも……」


 シーナはそう呟くと、目を瞑った。


 数十秒が過ぎた頃、突然シーナは声を上げた。


「なるほど……身体の中を巡る力の渦……これが魔法の源なのですね……!」


 どうやら、意識することでシーナにも感じ取ることができたらしい。


「《火球》の構成に必要な最低限の要素は……全てをエネルギーに変えるイメージで……」


 シーナはまだ無事な大木の方へ右手を突き出し、魔法の準備を始めた。


「こういうことでしょうか……?」


 詠唱しないまま、シーナの右手から高温の《火球》が放たれる。


 さっきとは比べ物にならないほど力強い魔法だった。


 さっき俺が放った《火球》よりも一回り以上大きく、周りを溶かしそうなくらい熱い。


 まるで太陽のようである。


 《火球》は風を切って大木に向かって一直線で飛んでいく。


 着弾した瞬間、目の前が真っ白になるほどの強烈な光を放った。


 そして、遅れて轟音が耳を劈く。


 ドガアアアアアアアアアアアアアアァァァァンンッッ‼


 大木は一瞬にして燃え尽き、周りも一帯が焼け野原になってしまった。


「ええええええええ⁉ わ、私どうしてこんなに急に⁉ えっ⁉」


 魔法を放ったのはシーナなのだが、彼女自身がめちゃくちゃ驚いていた。


「す、すごいな……」


 俺としても、これしか言葉が出てこなかった。


「《火球》を無詠唱で放てることにも驚きましたが、詠唱がなくなっただけでどうしてこんなに強く……? 私、どうしちゃったのでしょうか……?」


 もはや、シーナは困惑に至っていた。


「……それは、俺にもわからない」


「ですよね。すみません」


 ともかく、これでシーナの実力が十分なことはわかった。


 少なくとも、自分の身を守るには十分。


 マーカスさんも安心して送り出せるだろう。


「さて、一旦村に戻ろ……ん?」


 岐路につこうとしたしたその時、リード村上空が光るとともに、煙が見えた。


「花火……じゃないよな?」


 異世界に花火という文化があるのかどうかはわからないが、真昼間からするようなものでもないだろうし、お世辞にも綺麗とは言えないものだった。


 どちらかと言えば、戦で使う狼煙に近い。


「あ、あれは……村に戻らないと……!」


 煙を見たシーナの顔が強張り、緊張感が漂う。


「どういう状況なんだ?」


「発煙筒です。門を突破されて、村に魔物が侵入した時に危険を知らせるものです!」


「……! なるほど、急ごう」


 村の中には、戦闘能力を持たない村人もたくさんいる。


 もちろんマーカスさんのように戦える人もいるだろうが、万が一のことを考えれば、戦力が大いに越したことはない。


 俺も、一夜とはいえ世話になった人たちがいる村だ。


 それに、シーナにとって大事な村だということは言うまでもない。


 俺たちは急ぎ足で森を下り、村に帰還したのだった。

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