第104話:封印
「確かに、気になります!」
俺が疑問をぶつけると、シーナも同調した。
この村で生まれ育ったシーナですらも詳しく知らないようだ。
「立ち入り禁止になった理由……か。なにぶん古い話で、私もあまり詳しくは知らない。父から伝え聞いた話になるのだが……」
マーカスさんはそう言いながら、話し始めた。
「太古の昔、神々の怒りにより村に危機を襲ったらしくてな。地震だったり雷だったり、洪水だったり、魔物の大量発生ということだが、詳しくは分かっていない」
神……と言うと、この世界に来る前に会った男の顔を思い出す。
優男にしか見えなかったが、怒るとロクでもないことをするタイプだったのか。
……いや、よく考えると、突然ホームルーム中に俺たちを呼び出して返さないんだから、怒らなくてもヤバいタイプではあるか。
「あの祠は、その怒りを鎮めるために造られたと聞いている。まあ、神々の怒りが人間が作った祠程度で鎮まるのかというところで眉唾にも感じるがな」
まあ、確かに。
神はそんなものを作ってもらって嬉しかったのだろうか。
人間が祠を作って宥めたら満足して怒りが鎮まったと想像すると神様も可愛いというか、なかなかシュールな気がする。
「それで、人間が祠に立ち入ると、鎮まっていた神の怒りが再燃するのだということらしい。あくまで言い伝えだが、先祖代々守ってきた習慣だからな。これまで不思議にも感じなかった」
「なるほど。……ありがとうございます」
わざわざ聞いておいてなんだが、あまり意味のある情報ではなかったな。
胸中で肩を落としたところ——
「それ多分、封印」
アリアが何やら呟いた。
「ん、どういうことだ?」
「魔大陸では、人間大陸で消失した記録も残ってる。太古の人間は、自然発生したダンジョンに手を焼いた時、祠を作ってダンジョンをそのまま封印してたんだって。多分それが壊れただけ」
「え、じゃあ……神々の怒りっていうのは?」
「ダンジョンのことだと思う。多分、封印を解かないように子供に教えた嘘」
なるほど……。
ようやく繋がってきた気がする。
要するに、過去に視線発生して封印されていたダンジョンが今になって壊れてしまい、問題を起こしたということか。
「しかし、他に封印されたダンジョンなど聞いたことがないが……」
マーカスさんが呟く。
「人間も投げ出したわけじゃなくて、一時的に凍結しただけだったはず。ほとんどのダンジョンは太古の昔に攻略されてたから、この村のは何かが原因で忘れられてただけ……だと思う」
「ふむ……」
まあ、昔のことすぎて、ここで考えてもわからないことだらけだな。
ともかく、原因が分かれば話は早い。
「じゃあ、そのダンジョンを攻略すれば問題は解決するってことだよな?」
「多分そう」
よし、じゃあ決まりだ。
俺は、シーナとアリアの方を向いた。
「俺たちでダンジョンに行こう」
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異世界最強の全属性ヒーラー 〜ゲームのモブに転生したので、原作知識を駆使して世界最強の回復術師を目指す〜
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