第101話:異変
それから一時間ほど歩き、俺たちは無事にリード村の門前に到着した。
「シ、シーナ様⁉︎」
門番の男がシーナを見るなり、声を上げた。
事前に訪れることを伝えていなかったので、この反応も無理はない。
まさか、旅立ってから一週間程度で戻ってくるとは思わないだろうからな……。
「実は、訳あって少しの間戻ってくることになったのです」
「なるほど……そうでしたか! マーカス様もお喜びになられるでしょうね」
「私もこの村は落ち着きます。ところで、何かあったのですか?」
言いながら、シーナは目線を村の外壁に移した。
リード村の外壁は、俺たちが離れてからたったの一週間でボロボロになってしまっていた。
正確には、意図的に壊したかのようにボロボロの部分と綺麗なままの部分がある。
何か、ただならぬことがあったことを示す惨状だった。
「実はですね……」
と、門番が事情を話そうとしたその時だった。
「シーナ……? シーナか⁉︎」
門からシーナの父、マーカスさんが出てきたのだった。
「はい、私です! 実は、訳あって戻ってきたのです」
シーナはこれまでのことをマーカスさんに伝えた。
「なるほど、大変なことがあったのだな。……と、それはとにかく、久しぶりに帰ってきてくれて父さんは嬉しいぞ!」
まるで子供のようにはしゃぐマーカスさん。
たった一週間とはいえ、寂しく感じていたのだろう。
「ところで、村に何かあったのですか?」
シーナが門番に聞いたまま止まっていた質問をマーカスさんに投げた。
すると、マーカスさんはさっきまでのテンションから打って変わり、真面目な表情になった。
「……ああ、実はちょっと魔物の被害があってな。ここに来たのも、その件なんだ」
マーカスさんは門番の方を向き、尋ねた。
「状況はどうだ?」
「今のところは特に動きなしです。引き続き警戒を続けます」
「うむ。魔物は夜の方が活動的になるからな。何かあったらすぐに知らせてくれ」
「はい!」
魔物の被害……か。
一週間前まで外壁が綺麗だったことを考えると、この村にとっては異常事態なのだろう。
「お父様……魔物の被害というのはいったい?」
「その件については後でゆっくり説明する。とりあえず、家に帰ろう」
俺たちは、村の中に招かれ、マーカスさんから詳しい事情を聞くことになった。
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