第98話:テイム
日本で暮らしていた時は毎日のように新鮮な卵を食らっていた俺だが、目の前で俺の可愛い使い魔であるコッコが産んだ卵だと思うと、どうにも食欲が湧かない。
「雛? 毎日一つずつ産めるから遠慮せず。どーぞ」
「……」
とは言っても、くれるというのに断るのも気が引ける。
そう思いながら、慎重に金の卵を拾った瞬間。
パキパキパキパキ……パキッ!
卵に亀裂が入っていき、割れてしまったのだった。
「え……?」
そして——
《EXスキル『テイム』を獲得しました》
E Xスキル……?
テイム……?
急なことで俺の脳内はクエスチョンマークで支配されてしまう。
俺が動揺していると、コッコが解説を始めた。
「コッコの卵はスキルをゲットできるんだよ!」
「ええ……? じゃあ、コッコの卵があれば、魔法書を読まなくても毎日使える魔法が増えていくってことなのか?」
素朴な疑問をぶつけてみると、コッコは首を傾げた。
「カズヤさん、魔法とスキルは違うんですよ」
困り顔のコッコに代わってシーナが話し始めた。
「え、そうなのか?」
「はい。魔法もスキルも魔力を使うのは同じなのですが、魔法は魔力を使うことで物質やエネルギーを創造したり、変換する技術を指すんです。魔法以外の技術をスキルと呼びます」
「なるほど。じゃあ、攻撃魔法とか以外の便利技術がスキルって感じなのか」
「その通りです」
てっきり同じものだと思っていたので、これは意外だったな。
でも確かに、不思議な力が当たり前の異世界なら区別されていた方が便利なのかもしれない。
「あれ? でも《収納魔法》は魔法なんだよな?」
「異空間へのゲートを開く過程でエネルギーを発生させてこじ開けることになるので、魔法という分類ですね。ただ、結構例外です……」
どうやら、微妙なラインのものもあるらしい。
使用時にはこの二つを厳密に区別する必要は特になさそうだが、要するにコッコは攻撃魔法じゃない便利スキルが得られると言いたかった分けだな。なるほど。
「そういえば、コッコはさっき毎日一つずつ産めるって言ってたよな? じゃあ毎日何かスキルをもらえるってことなのか?」
「う〜ん、部分的にそう。卵にはハズレとか重複もあるから」
確かに、よく考えればそう都合が良いはずもないか。
「じゃあ、初めてでスキルを貰えたのは運が良かったってことか」
「うん! いきなりE Xスキルを引いてびっくりした!」
「もしかしてだけど、卵から出てくるスキルの中には等級があるのか?」
「等級っていうか、E Xスキルとそれ以外の普通のスキル……みたいな? E Xスキルの方が排出確率低くてレアな分、優秀なスキルが多い気がする……かな?」
「なるほど」
まるでゲームみたいだな。
いや、ゲームでは普通ここまで至れり尽くせりじゃないか。
おそらく苦労して手に入れるべきスキルをこんな簡単に手に入れてしまっていいのだろうか?
……まあ、俺の場合は普通なら簡単には習得できない魔法もあっさりと使えるようになってしまうので、今更な気もするが。
それにしても、《テイム》か。
字面的にはその辺にいる敵である魔物を仲間にできそうな気がする。
この後、洞窟を出たら試してみよう。
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異世界最強の全属性ヒーラー 〜ゲームのモブに転生したので、原作知識を駆使して世界最強の回復術師を目指す〜
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