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プロローグ
男がいた。
一人の男がいた。
年の頃は青年期くらいに見える。
男がいた。
男は漕いでいる。
舟を漕いでいる。
人一人が乗れるであろう大きさの舟を漕いでいる。
大きな大きな湖であろうか。
男はそこで一人舟を漕いでいる。
何の為に舟を漕いでいるのであろうか。
何が男に舟を漕がせるのだろうか。
ただ、ひたすらに男は舟を漕いでいる。
男は何処へ行こうとしているのだろうか。
男は舟を漕いでいる。
大きな大きな湖の中心で、男は舟を漕いでいる。
一心不乱といえるくらいに、ただ、男は舟を漕いでいる。
大きな大きな湖に男が一人。
男は一心不乱に舟を漕いでる。
まるで、何かに憑かれているかのようである。
憑かれている?
男は呪われているのだろうか?
男は舟を漕いでいる。
それは、もう業とも言えるものではないだろうか。
男は何を背負っているのだろうか。
男の表情からは何も読み取れない。
その表情は、そう、何かの面を被っているようだから。
表情の無い何も読み取れない面のような顔の男。
男は。