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限界の向こう側
ひたすら目の前の日課をこなしているうちに限界は意外に不意に訪れる。
何で勉強しなきゃいけないの?
何で勉強しろばかり言うの。
何でゲームばかりしていたらいけないの?
何をしてたらいいの。
今日も心の中では黒い台風が暴れまくっている。
ハルの心は「いらいらする」「むかつく」「うざい」「めんどっ」を全力でリピートし続ける。
僕がやりたいことをやると、母さんの機嫌が悪くなる。
母さんがしてほしいことをすると、僕の機嫌が悪くなる。
堂々巡りなんだ。目一杯やってるのに、これでも。
打っても打ってもボールが飛んでくるみたいだ。
「みんな、あなたのためなのよ!」
母さんの甲高い声に、一瞬くらんで打ちそこなった。
僕は何を打ち続けていたんだ?何を打ちそこなったんだ?
僕に当たったのは、ボールより大きくて重くて黒くて、
体全体が巨大な真っ黒いスライムに飲み込まれていくようだった。