【安斉山町事件】
私がこの身体になってから2年を終えようとした頃の話だ。
私はまだ布団の中にいた。
今日はだりぃな。
「ねぇ、おじさん。私って」
望の声がする。
「ああ、やっぱり気づいたか」
伯父の声だ。
「やっぱり、そうだったんだ。でも私は」
「まぁ、どっちにするかは自分で選ぶしかないよ、それとこれは…」
私は寝ぼけながらドアを開ける。
「お、おお、おはよう」
「由梨ちゃん、こんにちは」
「あん?なんだよ、2人して慌てて、なんの話してたんだ」
私はまだ頭が回ってなくてボーッとしている。
「珍しいな、そんなにボケッとしてて」
「ああ、考え事してたら寝るのが遅くなった」
「あ、新聞ならもう私が持ってきたよ」
「ああ、そう。ありがとう」
私は望から新聞を受けとる。
やっと目が覚めてきた。
「うわ。また、やってるじゃんこの町の事件。やべぇな。死者の数」
伯父に散々関わるなと言われている、安斉山町事件の記事だ。
「その町にいったら成仏してない人沢山いそうだね」
望が冗談なのか本気なのかわからない言い方をする。
「やだなぁ」
「そんな呪われた町なんか絶対行かねぇぞ」
伯父が釘を刺してきた。
「私はまだ何も言ってないよ」
私は新聞の記事を読み続ける。
あの父親の息子も殺されたのか…妹はかわいそうだな。
やっぱりこの事件気になるなぁ。
「ねぇ、伯父さぁん」
「なんちゅう声を出してんだ、気持ち悪い」
「姪に向かって気持ち悪いとは失礼だな」
「いや、今のは私もゾワッとしたよ」
「ちっ、それよりこの町に行かせてくれよ、なんか気になるんだよ」
「嫌だよ」
伯父はタバコを咥える。
「隣町でいいからさ、そこからは自分で歩くから、ね、お願い」
私は手を合わせてお願いしてみる。
「…隣町ならいいか…その代わり直ぐに帰るぞ。巻き込まれたくないから」
はぁと深いため息をつきながら言う。
「何をそんなにびびってんだか…」
知ってるんだよ、あんたは東京に行くって言ってこの事件を調べに言ってるのを。
「じゃあ、さっそく行こうぜ」
「仕方ねえな」
「サンキュー伯父さん」
望はソファーに座ったままだ。
「あれ?行かないの?」
「うん、私は留守番してる」
「そう、何…大丈夫か?」
「何にもないよ、大丈夫」
「そっか、じゃあ留守番頼むよ」
「言ってらっしゃい」
私はこの時、この会話が望との最期の会話になるとはまだ知らなかった。
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