疑惑
「警察署…ここに来るの?」
望は不思議そうに聞いてくる。
「うん。多分だけど、その男の人。棟梁に会いに来るんじゃねぇかなって思ってさ」
私は出来ればここには来たくなかったがそうは言ってられなかった。あのおっさんはまだここで成仏していないのだろうか。
「そんな、上手く行くかな。ん?なんか元気ない?」
「ああ、前にここで事件があって成仏できてないおっさんがいるんだよ。ちょっと思い出しただけ」
「そっか、色々あったのね」
「よし、とりあえず鳶職っぽい風貌の男が現れるのを待とうぜ」
私はさりげなく?話を変えて地べたに座り込む。
「本当に来るのかなぁ…」
望は地べたに座るのに抵抗があるのかガードレールにもたれかかる。
そして、30分が過ぎた頃だ。
「あ、ねぇ。あの人じゃない、ちょっと何寝てるのよ」
「あ、ああ」
やっぱりここにいるのはきついな。いやうたた寝した言い訳じゃねぇぞ。って私は1人で何を考えているんだ。
私は望が指した方を見る。
確かに鳶職っぽい格好をしている男が警察署に向かっていく。
「よしついていこうぜ」
「全く、調子がいいんだから」
私たちは男の後を追って署内に入った。
面会室のようなところに男は通される。
「わーよくドラマでみるガラス張りのやつだね」
「興奮すんなよ」
すると、警察官に連れられた60代くらいの男が現れる。
「棟梁!!」
「おお、紀夫。久しぶりだな」
棟梁と呼ばれた男はとても人を殺すような感じの風貌をしていなかった。
「棟梁なんであんなことを」
紀夫と呼ばれた男はガラスギリギリまで顔を近づける。
「ああ、現場はどうだ?ちゃんと進んでるか?」
「進んでるわけないですよ、俺らは契約打ち切られて何もない状態ですよ、どうして棟梁はあいつを殺したんですか!!」
「俺の跡をついで自分で企業すればいい」
「無理ですよ、答えてください。何であんなことを」
「がんばれ、紀夫」
「棟梁!!理由を教えてくださいよ」
「お前は頑張るんだ、紀夫」
棟梁はそう言い切ると後ろにいた警察官に声をかける。
「面会は終わりでいいです」
「えっ?棟梁、何で。何でだよ」
バンと机を紀夫は叩く。
「では、帰りまで案内します」
紀夫と呼ばれた男は警察官に案内されていく。
「…変だな」
「…変だね」
「会話が噛み合ってない」
「まぁ、警察がいるところで真相は話せないってことなのかしらね?」
「そうだといいけど…何だか訳ありな気がするな。とりあえずこの男の後をついていこう」
「うん、そうだね」
私達は紀夫の後を追って警察署を出ていった。
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