エゴ
「ありがとう、お嬢ちゃん」
悠哉の父親がお礼を言ってくる。
「ああ、別に良いよ。私は何もしてないし、あいつがゲロっただけだしね」
「なぁ、お嬢ちゃん、あいつはあの男は成仏はできないんだろうか」
「そうだろうね、確証はないけど…あれじゃあ無理だろ。反省する気もないしな。私が神様だったら成仏させるどころか地獄に落とすね」
「息子のしたことは確かに間違ったやり方だった。でもあの男と今日話して確信した。息子の気持ちが。あの男の死は必然だったんだ」
「よかったな、息子の気持ちがわかって。でも人殺しはだめだよ、殺しに必然なんてない」
「ああ、そうだったな。すまなかった。でも私は息子が更正することを信じるよ」
「そう。でもあんたが自殺したのは、息子さんには一生傷になるね、更正できるのかね?」
「それが息子が背負う罪の十字架だ。その上で更正をしてほしい」
「…」
望は黙ったままだ。
「なぁ、おっさん。成仏できそうか?最後に息子の顔でも見ていく?」
「いや、もう充分だ。後は息子を信じるよ、ありがとう。お嬢ちゃん達。君達もいつか成仏できることを祈っているよ」
父親の姿は次第に薄れていき、そして消えていく。
「成仏…したか…」
ふぅとため息をつく。
「由梨ちゃん…由梨ちゃんの本当の目的って」
望がゆっくりと近づいてくる。
「ああ、私が成仏させたかったのはこのおじさんだよ、息子は生きて罪を償って、仁は…成仏できないで苦しめばいい」
「…」
「これが正しいやり方かはわからない。でもあのおじさんは成仏させてやりたかった。そして、仁は苦しめばいいと思った。だからこれは私の完全なエゴだよ、軽蔑しただろ?」
私の手は震えていた。
「そんなことないよ」
望が私の手を握る。
「でもね、由梨ちゃん。1人で背負わないで、私がここにいるんだから」
望が優しく声をかけてくる。
「ごめん」
こうなるともうダメだ。
「謝んないで、私がここにいることを忘れないで」
手を握る力が強くなる。
「ごめん」
私の目に涙が溜まる。
「なぁ、私のしたことは正しかったのかな?」
1度爆発すると涙は止まらない。
「わからない、けど由梨ちゃんはあのおじさんを成仏させてあげられた。それは正しいことだよ。だから泣かないで」
望が私に胸を貸してくる。
私は涙が枯れるまで泣き続けた。
けれど私の涙は地を濡らすことはない…
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