無自覚の罪
「すごい、いつの間に覚えてたの?」
望は私の方を見て目を丸くする。
「いや、この人に伝えるのに名前を覚えてないと意味ないだろ」
私は思わず呆れる。
「な、なんだって…」
仁は明らかに動揺している。
「どうかしたのかよ、兄ちゃん?」
「おれが殺された時、彼は犯行グループにはいなかった…それに彼は俺の親友だ、彼が犯人な訳がない」
「えっ何それ…どう言うこと?」
「じゃあ、そいつが司令塔だったんじゃないの?」
私は腕を頭の上で組ながら言う。
「ちょっと由梨ちゃん」
「可能性の話だよ。それともう一つの可能性は犯行グループに脅されてやってもいない罪を着せられたか…」
「後者に違いない、彼が俺を殺す司令塔なんてあり得ない」
「どうだかね、意外と相手は兄ちゃんのことどう思ってたかわからないぜ、どういう関係なんだよ、犯人とは」
「ちょっと!!」
「ああ、彼は俺と同じ俳優スクールに通っててね、2人でオーディションに応募しては落ちて、帰りにラーメンを食べるんだ。懐かしいな」
「なんだか青春ですね」
「だろう、俺が東京で俳優になった後も1年に1回会ってたんだ」
「それで、その人は今は何やってたんだ?」
「ああ、父親の工場で働いているよ、俳優の夢は諦めてね、俺は会うたんびに諦めるなって言ってきたんだけど、彼はもう俳優は諦めたって言うんだよ」
(なるほどな、今や売れっ子俳優が夢破れた男に毎年会いに来る…これは無自覚に殺意を増長させたってところか…昨日の推理はやっぱり検討違いだったな)
「なぁ、あんた。本当に自覚ないの?」
私は段々イライラして思わず聞いてみる。
「自覚?何のことだい?」
仁はきょとんとする。
「いや、わからないならいいや。帰るぞ望」
「ちょっと!!」
「まってくれ、自覚ってなんなんだ!!」
「もう少し自分の行動を振り返ってみな。そうすればおのずとわかってくるよ」
仁は何か言っていたが、それを無視して私達はいつもの公園に立ち寄ることにした。
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