不器用
「あの人がそう?」
「ああ、そうだな」
お婆さんはこちらに気づいたようだ。
「よお、今日は婆さんの話をちゃんと聞いてくれるやつを連れてきたぜ」
「もう、言い方」
望は私の口の悪さに半ば呆れているようだ。
「こんにちは、おばあさん」
「こんにちは、そちらのお嬢ちゃんもこんにちは」
「ああ、こんにちは」
「おばあさんはここに住んでたの?」
「そうだよ。思い出の場所なんだよ」
「でもおばあさんはなんで成仏できなかったの?」
「なんでだろうねぇ、やっぱりここが忘れられないからだろうねぇ」
「そうなんですね。少し片付けます?」
「いやいや、止めておくれ。全部大事なものなんだよ」
「それで、撤去の邪魔をしてんの?」
私は2人の間に入る。
「おやおや、なんのことかね」
婆さんはとぼけて見せる。
「この土地は息子さんが引き継いだんだろ?
それでこのごみ屋敷を撤去しようとしてるのを邪魔してんだろ?昨日も私が家に入ろうとしたら止めたじゃん」
「…息子は元気かい?」
「いいや、会ってないけど呪われた家だって騒がれてるぜ」
(もう、なにやってんのよ。由梨ちゃん)
「そうかい、息子は元気なんだね。お嬢ちゃんはそれを伝えてくれたんだね」
「違うよ、さっきから言ってるけど息子にも会ってねぇし。ただ、婆さん、このままだとあんた地獄に落ちるよ」
「何を言っておるのかわからんね」
「自分のやってることを思い返してみなよ」
「…何だか疲れてしもうたよ。もう帰りなさい」
「忠告はしたからな」
私と望は婆さんと別れる。
「もう、なんであんな言い方したのよ」
「しかたねぇだろ、何て言えばいいのかわからなかったんだから」
私は頭を抱える。
「なら、言わなければいいのに!!」
「でもさぁ」
「でもじゃありません」
そんなやりとりをしていると、大きなトラックとすれ違った。
「おい、今の」
「うん、もしかして」
私たちは急いで現場に引き返した。
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